特定技能に林業分野が追加決定

特定技能に林業分野が追加決定

目次

  1. 特特定技能に林業分野が追加決定!
    1. 特定技能の現状
    2. 林業の現状
    3. 確定した制度内容
    4. 企業に求められる要件
    5. 外国人に求められる要件
  2. まとめ

特定技能に林業分野が追加決定!

林業従事者の減少が続く中、林業の現場で欠かせない育林や素材生産などの作業を担う即戦力として、外国人労働者の導入を図る政策が発表されました。この政策は、若手技術者の確保や高齢化問題の解消に繋がり、林業の存続・発展に大きな期待が寄せられています。
これらを踏まえ、本記事では特定技能に林業分野が追加決定された詳細について解説していきます。

1. 特定技能の現状

令和6年3月29日、政府は人材不足が深刻な特定産業分野において、相当程度の知識や経験が必要な技能を持つ外国人労働者の受け入れを目的とした「特定技能1号」に自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野を追加しました。これにより、受け入れ分野は合計16分野となります。
さらに、令和6年度からの5年間で最大82万人の外国人労働者を受け入れることを閣議決定し、林業では1,000人の受け入れを見込んでいます。

特定技能1号の在留期間は最長5年ですが、在留期間の上限がない特定技能2号は、林業には適用されていません。しかし、現在検討中とのことですので、今後の進展に期待したいところです。

2. 林業の現状

日本の森林の約4割を占める人工林が、資源として利用可能な段階に達しています。これに伴い、国産材原木の安定供給への期待が高まり、木材供給量の増加に向けた取り組みが進められています。また、花粉を飛散させるスギやヒノキ林を花粉の少ない森林へ変えていく花粉症発生源対策にも注力しています。

未来に向けた取り組みと革新

通年雇用化や月給制の導入、社会保険加入の促進、さらには各種施策による賃上げの推進など、処遇改善の取り組みが進められています。また、新規就業者の確保や育成、キャリアアップ対策に関しても、国が支援する「緑の雇用」事業を通じて多角的に取り組んでいます。これにより、若者、女性、高齢者、外国人といった多様な国内外の人材確保にも繋がっていくでしょう。

一方で、林業を取り巻く環境には、ウッドショックや気候変動といった大きな変化が生じています。これらの変化に対応し、持続可能な林業を維持するためには、デジタル化や新技術の導入にとどまらず、業界全体の変革を促すDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要です。具体的には、スマート林業の推進により、森林資源情報の可視化や新たな作業システムの導入が進められています。これにより、生産性の向上や安全性の改善、さらにはサプライチェーンの最適化によって木材の付加価値が向上するなど、様々な面での変革が期待されます。これらの取り組みを通じて、より働きやすい環境が整備され、持続可能な林業の発展が見込まれるでしょう。

労働災害

林業における労働災害は、関係者の不断の努力や災害防止活動の取り組みによって、長期的には減少しています。しかし、依然として発生率は他産業に比べて非常に高く、令和5年の死傷年千人率では、全産業平均の2.4%に対し、林業は22.8%と約10倍にも及びます。 この深刻な状況を受け、令和3年6月に閣議決定された方針では、今後10年間で死傷年千人率を半減させることが目標とされています。この取り組みにより、労働安全対策が一層強化され、林業従事者の育成・確保に資する労働環境の改善が期待されます。

人材不足の現状

林業従事者数

平成22年の51,200人から令和2年には43,710人と、この10 年間で約14%の減少が見られます。

新規就業者数

平成15年度に開始された「緑の雇用」事業によって、新規就業者数は、事業開始前の年間約2,000人から、事業開始後には年間約3,200人に増加しました。なお、令和5年度までに約24,000人がこの事業を活用して新たに就業しています。

有効求人倍率

令和4年度の有効求人倍率は約2.35倍と、全産業平均の1.27倍と比べて約2倍に達しています。

35歳未満の若年者率

全産業で若年者率が減少傾向にある中、林業では平成2年以降、増加傾向が続き、令和2年には17%に達しています。若年層の割合や平均年齢の若返り傾向は維持されていますが、それにもかかわらず、求人に対する求職者数は依然として半数にも満たず、人手不足が続いています。

65歳以上の高齢化率

令和2年の高齢化率は25%と、全産業平均の15%と比べて約1.7倍に達しています。特に山村地域では、全国平均の28.0%に対し、山村地域では40.6%に達しており、非常に高い水準となっています。

人手不足の見通し

令和12年度の木材供給量目標は4,200万㎥ですが、これを令和10年度時点に換算すると4,120万㎥となります。現在の生産性を基に推計すると、同年度には約5万8,000人の就業者が必要とされ、約2万人程度の人手不足が見込まれます。

3. 確定した制度内容

従事する業務

特定技能1号外国人が従事する業務は、「育林、素材生産、林業種苗育成等」となっています。これに加えて、関連する業務区分の付随業務も認められており、以下のような作業も含まれます。 例)林内で行う林産物の製造・加工、冬季の除雪作業 など このように幅広い業務に携わることができるため、現場での柔軟な対応が求められる状況にも、大いに貢献できるでしょう。

雇用形態

直接雇用に限る

4. 企業に求められる要件

特定技能外国人を受け入れるためには、以下の要件を満たす必要があります。
【要件】

  • 特定技能所属機関は、農林水産省が設置する協議会(林業特定技能協議会)に加入すること
  • 特定技能所属機関は、協議会で決定された措置を実施すること
  • 特定技能所属機関は、協議会に必要な協力を行うこと
  • 特定技能所属機関は、農林水産省またはその関係者が行う調査などに必要な協力を行うこと
  • 特定技能所属機関は、登録支援機関に委託する際は、農林水産省および協議会に必要な協力を行う機関に委託すること
※協議会の設置や加入方法に関する詳細は現在検討中です。詳細が決まり次第、林野庁のホームページでお知らせがあります。

5. 外国人に求められる要件

特定技能外国人を受け入れるためには、以下の要件を満たす必要があります。

【要件】
◆技能水準
林業に従事する特定技能外国人は、育林、素材生産、安全衛生等に関する基本的な知識を有し、各種作業において安全確保を図りつつ、一定の時間内に正しい手順で的確に遂行できるレベルであること、日本語で指示された作業内容を聴き取り、理解できること。

◆日本語能力試験

  • 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)
  • 日本語教育の参照枠(A2相当以上のレベルと認められるもの)
※林業分野に関する技能実習2号を良好に修了した者については、必要な技能水準および日本語能力水準を満たしているものとして取り扱います。

【試験概要】

試験言語 日本語(ひらがなやカタカナ、またはふりがなを付けた漢字)
実施主体 農林水産省が選定した機関
実施方法 コンピューター、ベースド、テスティング(CBT)方式、またはペーパーテスト方式および実技試験
※技能評価試験の詳細は現在検討中です。詳細が決まり次第、林野庁のホームページでお知らせがあります。

まとめ

日本は世界有数の森林国として、その豊かな資源を未来に引き継ぐため、新技術の導入やデジタル化、DXの推進を通じて、林業はまさに変革の時代を迎えています。しかし、若い世代の参入が進む一方、深刻な人手不足という大きな課題は依然として残されています。
特定技能に林業分野が追加されたことで、即戦力となる外国人労働者の受け入れが、今後の林業発展における重要な鍵となるでしょう。ただし、この制度にはまだ多くの未確定な部分があり、詳細な検討が求められています。
今後も動向を注視しながら、労働環境の整備や改善、新規就業者の確保・育成、そして定着を進め、持続可能な林業の発展、さらには我が国の経済・社会基盤の維持に貢献することを期待しています。

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