特定技能に鉄道分野が追加決定

特定技能に鉄道分野が追加決定

目次

  1. 特定技能に鉄道分野が追加決定!
    1. 特定技能の現状
    2. 木材産業の現状
    3. 確定した制度内容
    4. 企業に求められる要件
    5. 外国人に求められる要件
  2. まとめ

特定技能に鉄道分野が追加決定!

鉄道業界が直面する深刻な人手不足に対応するため、輸送の安全確保を前提に、専門性に十分配慮した外国人労働者の導入を進める政策が発表されました。この政策は、少子化による若年層の採用難や高齢化による大量退職といった課題の解決に繋がり、経済社会活動や国民生活を支える基盤である鉄道業界の維持・発展に大きく貢献するでしょう。これらを踏まえ、本記事では特定技能に鉄道分野が追加決定された詳細について解説していきます。


1. 特定技能の現状

令和6年3月29日、政府は深刻な人材不足に直面している特定の産業分野において、相当程度の知識や経験が必要な技能を有する外国人労働者の受け入れを目的とした「特定技能1号」に自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野を追加しました。これにより、受け入れ分野は合計16分野となります。さらに、令和6年度からの5年間で最大82万人の外国人労働者を受け入れることを閣議決定し、鉄道分野では3,800人の受け入れを見込んでいます。

特定技能1号の在留期間は最長5年ですが、在留期間の上限がない特定技能2号は、鉄道分野には適用されていません。しかし、省令等の改正が予定されているため、今後の進展に期待したいところです。


2. 鉄道業界の現状

未来に向けた取り組み

鉄道業界では、新技術の導入や研修施設の整備により、鉄道施設や車両の保守・点検業務、運転業務、人材育成の効率化・省力化が図られています。また、人材確保に向けては、賃金の引き上げや手当の充実、出産祝い金や扶養手当の増額、契約社員から正社員への登用を推進し、新規雇用の増加と若年層の離職防止に努めています。さらに、ジョブリターン制度や中途採用、高齢者の活用に加え、女性の職種配置の多様化や宿泊施設の整備、女性職員比率の目標設定などを通じて、女性の就労促進にも力を入れています。

人材不足の現状

鉄道事業者の職員数の推移

平成1年の277,092人から令和3年には191,136人と、この32年間で約31%の減少が見られます。

鉄道事業者の現業部門の職員数

平成27年から令和2年の5年間で、軌道整備は1,090人(-7.8%)、電気設備整備は239人(-2.1%)、車両製造・車両整備は1,019人(-6.1%)、運輸係員は3,918人(-3.9%)の減少が見られます。

有効求人倍率

令和4年度の有効求人倍率は3.59倍と、全産業平均の1.19倍と比べて約3倍に達しています。

人手不足の見通し

新型コロナウイルス感染症の影響で令和2年度に大きく減少した輸送人員(旅客の延べ人数)は、令和5年度には約9割程度まで回復し、月によってはそれ以前の利用者数(実際に利用した人数)を上回ることもあります。今後も鉄道需要やそれに伴う施設の保守作業の継続・拡大が見込まれる中、5年後の令和10年度には15万1,600人の就業者が必要とされ、約1万8,400人の人手不足が生じると推計されています。


3. 追加された職種

鉄道分野には、軌道整備電気設備整備車両整備車両製造運輸係員の5つの職種があります。

軌道整備:
軌道検測作業、レール交換作業、バラスト交換作業、まくらぎ交換作業等

電気設備整備:
ケーブル・管路、信号機、転てつ機、軌道回路等の電気設備設置、点検作業等

車両整備:
鉄道車両のメンテナンス作業等

車両製造:
鉄道車両、車両部品の製造等

運輸係員:
運転士、車掌、駅構内のポイント操作を行う駅係員等

※日本人が通常行う関連業務に付随的に従事することは問題ありません。

雇用形態

直接雇用(正社員・フルタイム)に限る

企業に求められる要件

特定技能外国人の受け入れには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 鉄道事業法に基づく鉄道事業者、軌道法に基づく軌道経営者、その他鉄道・軌道事業に関連する施設や車両の整備、車両の製造に係る事業者であること
  2. 特定技能所属機関は、国土交通省が設置する協議会(鉄道分野特定技能協議会)に加入すること
  3. 特定技能所属機関は、協議会に必要な協力を行うこと
  4. 特定技能所属機関は、国土交通省またはその関係者が行う調査などに必要な協力を行うこと
  5. 特定技能所属機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する際は、上記2、3、4に必要な協力を行う機関に委託すること
外国人に求められる要件

日本の鉄道業界で特定技能外国人として働くには、各区分における鉄道分野特定技能1号評価試験に合格、一定レベル以上の日本語能力を持つことが要件です。特に運転士を含む運輸係員は、運輸指令とのコミュニケーションや異常時の避難誘導などの緊急対応が求められるため、他の分野よりも厳しい日本語能力試験N3以上のレベルに加え、日本語による技能評価試験により専門用語や異常時対応についても確認されます。

区分 特定技能試験 日本語能力試験
軌道整備 鉄道分野特定技能1号評価試験
(軌道整備)
◾日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)
◾日本語教育の参照枠(A2相当以上のレベルと認められるもの)
電気設備整備 鉄道分野特定技能1号評価試験
(電気設備整備)
車両整備 鉄道分野特定技能1号評価試験
(車両整備)
車両製造 鉄道分野特定技能1号評価試験
(車両製造)
技能検定3級(機械加工・仕上げ・電子機器組立て・電気機器組立て・塗装)
運輸係員 鉄道分野特定技能1号評価試験
(運輸係員)
◾日本語能力試験(N3以上)
◾日本語教育の参照枠(B1相当以上のレベルと認められるもの)

以下の区分は、技能実習2号からの移行が可能です。

業務区分 職種 作業
軌道整備 鉄道施設保守整備 軌道保守整備
車両整備 鉄道車両整備 走行装置検修・解ぎ装
空気装置検修・解ぎ装
車両製造 機械加工 普通旋盤
フライス盤
数値制御旋盤
マシニングセンタ
金属プレス加工 金属プレス
鉄工 構造物鉄工
仕上げ 治工具仕上げ
金型仕上げ
機械組立仕上げ
電子機器組立て 電子機器組立て
電気機器組立て 回転電機組立て
変圧器組立て
配電盤・制御盤組立て
開閉制御器具組立て
回転電機巻線製
塗装 金属塗装
噴霧塗装
手溶接
半自動溶接
※技能実習2号を良好に修了した者は、対応する特定技能試験および日本語能力試験が免除されます。
※職種や作業の種類にかかわらず、第2号技能実習を良好に修了した者は、日本語能力試験が免除されます(運輸係員を除く)。

まとめ

コロナ禍で減少した輸送人員は徐々に回復傾向にありますが、今後、テレワークの普及や人口減少に伴い、鉄道利用者のさらなる減少が懸念されています。
また、高齢化が進む一方で、若手社員の離職率も上昇しており、その一因には、夜間勤務を含む長時間のシフト制や労働条件への不満が挙げられます。こうした状況下で、鉄道業界に特定技能制度が導入されたことは、国内での若手人材確保が難しい中、鉄道業界の持続的な発展に向けた大きな希望となっています。
しかし、外国人労働者を雇用する際には、言語や文化の違いに起因するコミュニケーションの課題や労働環境の整備、さらには適切な支援体制の構築が不可欠です。これらの課題に対処するためには、一時的な手間やコストが伴うことは避けられず、容易ではありません。
それでも、多様な人材が安心して働ける環境を整えることこそ、安全で安定的な輸送を確保し、鉄道業界の未来を切り開く鍵となるでしょう。

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