特定技能に木材産業分野が追加決定 !
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特定技能に木材産業分野が追加決定 !
深刻な人手不足が続く木材産業に、木材加工などの作業を担う即戦力となる外国人労働者の導入を図る政策が発表されました。この政策は、若手技術者の確保や高齢化問題の解消に繋がり、木材産業の基盤維持と持続的な発展への大きな希望として注目を集めています。これらを踏まえ、本記事では特定技能に木材産業分野が追加決定された詳細について解説してきます。
1. 特定技能の現状
令和6年3月29日、政府は人材不足が深刻な特定産業分野において、相当程度の知識や経験が必要な技能を持つ外国人労働者の受け入れを目的とした「特定技能1号」に自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野を追加しました。これにより、受け入れ分野は合計16分野となります。さらに、令和6年度からの5年間で最大82万人の外国人労働者を受け入れることを閣議決定し、木材産業では5,000人の受け入れを見込んでいます。
特定技能1号の在留期間は最長5年ですが、在留期間の上限がない特定技能2号は、木材産業には適用されていません。しかし、現在検討中とのことですので、今後の進展に期待したいところです。
2. 木材産業の現状
木材産業の未来を支える大規模化の現状
近年、木材産業では製材工場や合板工場の大規模化・集約化が進んでいます。これまで大規模工場がなかった地域でも、国の支援を活用し、新たな大規模工場の建設が進むとともに、地元の製材工場との連携が強化されています。この10年間で、年間原木消費量が5万㎥以上の製材工場が全国で21箇所新設され、工場あたりの原木消費量は約1.6倍に増加しました。一方で、木材産業は、社会経済の向上とカーボンニュートラルを実現する「グリーン成長」を目指しています。令和12年には木材供給量の目標を4,200万㎥と設定し、その達成に向け、今後も大規模化を推進しつつ、生産性向上に注力していく方針です。
労働者の安全と働きやすい環境整備の現状
労働者の安全確保や労働負荷の軽減が進められ、女性や高齢者にとって働きやすい環境が整いつつあります。しかし、木材産業では他の業種に比べて労働災害の発生率が依然として高く、安心して働ける安全な職場環境の整備が一層の課題となっています。これを受け、業界団体は外部有識者による安全診断や普及・啓発に努め、国は作業安全規範の策定・普及、ウェビナーの開催、VR映像を用いた研修資材の提供に取り組んでいます。
人材不足の現状
【木製品製造業(家具を除く)の就業者数】
木製品製造業の就業者数は、平成22年の12万3,000人から令和2年には10万3,000人と、この10年間で約16%の減少が見られます。
【35歳未満の就業者割合】
令和2年の35歳未満の就業者割合は、全産業で22.8%に対し、木材・木製品製造業(家具を除く)では17.6%にとどまっています。
【人手不足の見通し】
令和12年の木材供給目標4,200万㎥に対し、令和10年度の予測供給量は4,120万㎥であるため、同年度には13万6,000人の就業者が必要とされています。その結果、約5万7,000人の人手不足が予測されています。
3. 確定した制度内容
従事する業務
特定技能1号外国人が従事する業務は、「製材業、合板製造業等に係る木材の加工等」となっています。これに加えて、関連する業務区分の付随業務も認められており、以下のような作業も含まれます。
例)原材料の運搬、受け入れ、検査にかかわる作業や清掃 など
このように幅広い業務に携わることができるため、現場での柔軟な対応が求められる状況にも、大いに貢献できるでしょう。
雇用形態
直接雇用に限る
4. 企業に求められる要件
特定技能外国人を受け入れるためには、以下の要件を満たす必要があります。
要件
・特定技能所属機関は、農林水産省が設置する協議会(木材産業特定技能協議会)に加入すること ・特定技能所属機関は、協議会で決定された措置を実施すること ・特定技能所属機関は、協議会に必要な協力を行うこと ・特定技能所属機関は、農林水産省またはその関係者が行う調査などに必要な協力を行うこと・特定技能所属機関は、登録支援機関に委託する際は、農林水産省および協議会に必要な協力を行う機関に委託すること ※協議会の設置や加入方法に関する詳細は現在検討中です。詳細が決まり次第、林野庁のホームページでお知らせがあります。
5. 外国人に求められる要件
特定技能外国人が日本で働くためには、以下の要件を満たす必要があります。
要件
技能水準 | 木材産業に従事する特定技能外国人は、木材加工や安全衛生等に関する基本的な知識を有し、各種作業において安全確保を図りつつ、一定の時間内に正しい手順で的確に遂行できるレベルであること。 |
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特定技能試験 | 木材産業特定技能1号測定試験 |
日本語能力試験 |
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試験の概要
試験言語 | 日本語(ひらがなやカタカナ、またはふりがなを付けた漢字) |
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実施主体 | 農林水産省が選定した機関 |
実施方法 | コンピューター、ベースド、テスティング(CBT)方式、またはペーパーテスト方式 |
※技能評価試験の詳細は現在検討中です。詳細が決まり次第、林野庁のホームページでお知らせがあります。
まとめ
木材需要が拡大する一方で、深刻な人手不足が続いており、さらに将来を担う若手の就業者数も他産業に比べて少ない状況です。
現在、木材産業分野における特定技能制度には多くの未確定な部分があり、受け入れ開始に向けた詳細な検討が進められています。今後、省令の改正とともに明確なガイドラインの発表が予想されますが、この発表を受けて、多くの企業が人材獲得に向けて積極的に動き出すでしょう。そのため、労働基準法に基づく雇用の適切な実施はもちろん、安全な労働環境の整備や労働条件の見直し、フォローアップ体制の構築、さらには言語教育や文化的理解を深める研修の充実といった受け入れ体制の早期整備が一層重要です。
引き続き今後の動向に注目しつつ、木材産業の基盤維持と持続的な発展を心から期待しています。
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