特定技能外国人の住居基準 ルールと最新事例は?
特定技能外国人を雇用するにあたって、準備する住居の基準が細かく指定されています。規定を破れば企業にとっても大きなリスクになるので、しっかりと理解しておきましょう。この記事では、「住居」に関する支援の義務化・最新事例まで解説します。
日本企業の約半数が人手不足に陥っている状況にあるという発表もあり、人材不足は社会問題となっています。そんな問題の解決に向け、2019年より「特定技能」という制度が開始され、特に人手不足が深刻な業種において、外国人の就労が認められるようになりました。現在、特定技能の在留資格を取得した外国人を雇う企業が増加しています。
特定技能外国人を雇用するにあたって、外国人採用ならではのいくつかの決まりがあります。今回はそんないくつかある決まりのうち、住居基準と最新事例を解説していきます。
目次
まずはじめに、特定技能外国人には「第1号」と「第2号」の2つの在留資格があります。
特定技能第1号とは、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する 業務に従事する外国人向け在留資格のことで、14業種に認められています。
特定技能第2号とは、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向け在留資格のことで、現時点での対象業種は、建設業と造船・舶用工業のみです。
第2号は第1号より優遇される点が多いですが、特定の職業しかなることが出来ず、高度試験の合格も必要となり、第1号よりかなりハードルが高くなっています。
今回は特定技能1号外国人の住居基準について説明します。
「住居」に関する支援の義務化
住居探し、賃貸契約の援助
住居確保支援の1つ目として、住居探し、賃貸契約の援助があります。
賃貸物件に関する情報提供、不動産仲介事業者を紹介など、住居探し、賃貸契約の援助を行う
必要があります。
また、当該外国人が希望すれば住居探しにつきそい、住居探しの補助を行います。さらに賃貸
契約の際に連帯保証人が必要な場合があります。
もし連帯保証人がいない場合、以下2つのいずれかの支援が求められます。
① 連帯保証人を受け入れ機関などが引き受ける
② 利用可能な賃貸料金の債務保証業者を調達し、緊急連絡先を受け入れ機関にする
受け入れ機関による住居の確保
支援の2つ目として、住居提供が挙げられます。
採用した時点で、当該外国人の状況が日本在住ではない、日本に住居がない場合、受け入れ機関による住居の準備・確保が必要となってきます。そのため、事前に物件を探し、受け入れ機関側自ら賃貸人として賃貸契約を行い住居として提供します。提供の際にこの住居でいいのか、受け入れ機関と当該外国人の双方で確認が必要です。
社宅などを住居として提供
支援の3つ目として挙げられるのは、提供する物件として受け入れ機関が所有する社宅等を利用するというものです。
もし、所有する物件がある場合、それらを住居として提供するのも一つの方法といえます。この場合も2)と同様に、提供の際に受け入れる特定技能外国人へ物件の良し悪しを確認する必要があります。
これら3つのうちのいずれかを行うことが義務化されていますが、どの場合でも特定技能外国人の希望に沿った支援が求められます。上記3つの支援については,受入れ後に当該外国人が転居する場合にも 行うことが求められます。
上記の義務以外にも留意しておくべき大事な点があるため、本項では上記の義務以外の重要注意事項や、実際に住居提供となった際に気になるだろう点について述べていきます。
用意する住居における注意点や留意事項
上記の義務以外にも留意しておくべき大事な点があるため、本項では上記の義務以外の重要注意事項や、実際に住居提供となった際に気になるだろう点について述べていきます。
準備する住居において必要な住居面積
法務省より、住居面積は1人あたり7.5m2以上の確保は必ずしないといけないとされています。7.5m2とは、おおよそ4畳半以上に匹敵します。
住居広さ7.5m2以上 = 住居(居室)面積 ÷ 居住人数
複数で住むことも可能ですが、複数人で同居したとしても住居(居室)全体の面積を居住人数で除した面積が7.5m2以上でないといけません。
運用要領にて「居室」とは以下のように示されています。
(引用:1号特定技能外国人支援に関する運用要領)
ただし、例外もあります。それは元々働いていた技能実習生から特定技能外国人として再度雇用したときに元々住んでいた社宅や寮を住居として利用する場合です。(4.5m2以上の住居面積が必須)。
別の住居に引っ越しを希望する場合は、先程述べたような支援(1人あたり7.5m2以上の住居面積)が必要となります。
敷金・礼金等の支払いは受け入れ機関がするべき!?
敷金・礼金などの支払いにおいては、受け入れ機関が必ずしも行わないといけないという義務はありません。よって、基本的には特定技能外国人に支払ってもらう方向でいいと思います。
受け入れ機関による任意の全額負担、割合負担は問題にはなりません。
ただし注意点があり、以下に示します。
なお、家賃債務保証業者を利用した場合は、保証料は受け入れ機関が負担する必要があります。(引用:1号特定技能外国人支援に関する運用要領)
住居における留意事項
①日本人と同等の扱いを行わなければならない
日本人労働者と外国人労働者の扱いに差が出来ないようにする、というのも留意する点となります。例えば、日本人労働者に提供している物件がある場合、特定技能外国人に対してもそれと同等の居室の広さの提供が必要です。
②又貸しや社宅を利用した賃貸による利益を得てはいけない
受け入れ機関が外国人に対し賃貸契約した住居や社宅を、又貸しや賃貸として利用し経済的利益を上げるような行為をはしてはいけません。
法務省より、特定技能外国人から徴する費用についての注意点が述べられており、以下の通りとなっています。
借上げに要する費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料等を含まない)を入居する特定技能外国人の人数で除した額以内の額
・自己所有物件の場合
実際に建設・改築等に要した費用、物件の耐用年数、入居する特定技能外国人の人数等を勘案して算出した合理的な額
(引用:1号特定技能外国人支援に関する運用要領)
難しい表現で記載されていますが、簡単に言うと、「特定技能外国人向けの社宅提供で儲けてはならない」ということです。
出入国在留管理庁ホームページには外国人を受け入れる際の注意点やQ&A等の記載があります。目を通してみるのもいいかもしれません。
住居確保後に必ず忘れてはいけないこと
それは、住居地に関する届け出の提出を忘れてはいけないことです。住居が確保できたら、必ず所在地の自治体に住所の届け出を出す必要があります!!期間は、住居が決まった90日以内となっています!!
万が一、90日以上を過ぎてそのまま放置してしまうと、在留資格が取り消し扱いの対象となったり、受け入れ機関に対しても不正行為があるとみなされてしまい、特定技能外国人を雇うことができなくなります。
日本人では「注意不足」で済むかもしれませんが、外国人の場合ではそういうわけにはいかないようです。細心の注意を払って、必ず90日以内に自治体に住所の届け出を出すようにしましょう。
特定技能外国人の住居【最新事例】
令和元年に「1号特定技能外国人支援に関する運用要領―1号特定技能外国人支援計画の基準についてー」が一部改正されました。住居においても改正点があり、以下のとおりです。
(引用:法務省ホームページより)
つまり、同居する場合においても居住面積1人あたり7.5m2の確保は必須ということです。2人でルームシェアする場合は15m2以上の居住面積の確保が必要となります。
さいごに
人材不足が深刻な社会問題となっている現代において、外国人雇用は問題の打開策となる改革的な制度と言えます。実際に、外国人を雇用する企業も徐々に増えきており、コロナ化にてやや低迷傾向ではありますが今後も増加することが予想されます。とはいえ、「特定技能」制度自体がまだ新しい制度といえ、聞きなれないことや注意点等を知らない方も多いと思います。
企業として、雇用する外国人が安心して在住できるようなサポートは必要不可欠です。住居においても必要なサポートの一つとなってきます。ぜひ今回解説したことを活かしていただければと思います。
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