特定技能「介護」|人気の理由は?その他の在留資格との比較
特定技能「介護」が人気の理由とは?必要なスキル・介護の受け入れ分野における現状・特定技能「介護」とその他の在留資格の差について比較・介護技能評価試験・介護日本語評価試験について・人気の理由を解説します。
新たな在留資格として新設された「特定技能」。
その中でも特に介護が人気であることをご存じでしょうか?
新在留資格「特定技能」は就労を目的とした在留資格の1つであり、介護分野についても人手不足を解消する方法として2019年に導入されました。
特定技能「介護」に必要な資格やスキル、その他の在留資格との差について、そして介護分野の現状についてご紹介します。
目次
特定技能「介護」とは?
特定技能「介護」は、介護分野の人材不足解消のための手段として外国人の就労を目的とした在留資格です。
在留資格とは、外国人が入国してから在留して行うことのできる活動等を認めるための資格です。日本にいる外国人は必ず何らかの「在留資格」を必要とし、「在留資格」のない者は強制退去処分などになってしまいます。
現在、特定技能制度は14業種に適用されており、どれも人材不足が深刻化している業種となります。
日本は少子高齢化が加速し、長期的な見通しとして40年後には現在よりも労働人口が4割減少するという予測がされています。
日本人だけでは日本を動かしていくことが難しくなっていくのです。
特に介護分野においては現時点でも人材不足が深刻化しているので、今後介護を必要とする人が増加していくこともわかっているので、現時点での早急な人材確保も必要ということになります。
特定技能「介護」は介護職分野での就労が可能となるわけですが、介護職における在留資格は全部で4種類あります。
- ● 在留資格「介護」
- ●EPA
- ● 技能実習「介護」
- ●特定技能「介護」
介護分野では「技能実習」が2017年11月から許可されておりますが、国際貢献と途上国への技能移転を目的とした「技能実習」とは異なり、人材不足対策として現場の即戦力となる人材確保が可能なのが特定技能「介護」なのです。
特定技能「介護」は1年・6ヶ月または4ヶ月の更新を行いながら通算で5年まで日本で働くことが可能になります。
必要な資格やスキルなどは?
特定技能「介護」で在留資格を取得して就業を行う場合にどのような資格やスキルが必要になるのでしょうか?
外国人が特定技能「介護」の資格をえるためには、介護業務に関する「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」および「日本語試験」の合格が必要になります。
「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」は公益財団法人社会福祉振興試験センターで試験を行っており、郵送での申し込みが必要です。
試験内容については以下の通りです。
《介護技能評価試験・介護日本語評価試験について》
介護技能評価試験 | 介護日本語評価試験 | |
---|---|---|
問題数・試験時間・ 試験科目 | 全45問 60分 (学科試験:40問) ・介護の基本(10問) ・こころとからだのしくみ(6問) ・コミュニケーション技術(4問) ・生活支援技術(20問) (実技試験:5問) ・判断等試験等の形式による実技試験課題を出題 ►出題基準 | 全15問 30分 ・介護のことば(5問) ・介護の会話・声かけ(5問) ・介護の文書(5問) |
実施方法 | コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式 | |
サンプル問題 | ►介護技能評価試験 | ►介護日本語評価試験 |
受験手数料 | 1,000円程度 | 1,000円程度 |
試験結果の通知 | 試験終了後、試験会場のコンピュータ画面上で試験結果を表示。 試験実施後5営業日以内を目途に、専用ウェブサイトにおいて、 受験者が受験者名、試験名、試験日、顔写真、総合スコア、 合否などの情報をスコアレポートとして取得可能。 ※合格基準:問題の総得点の60%以上 |
出典:厚生労働省 介護分野における特定技能外国人の受け入れについて
「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」はどちらも筆記試験となり実技試験などはありません。
また、「介護技能評価試験」「介護日本語評価試験」以外に日本語試験は「日本語能力試験(N4以上)」または「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することが必要です。
※介護分野の技能実習3年を良好に終了している場合や、介護福祉士養成施設を修了している場合にはこれら3つの試験が免除されます。
特定技能「介護」とその他の在留資格の差について【比較】
特定技能「介護」 | 在留資格「介護」 | EPA | 技能実習「介護」 | |
---|---|---|---|---|
目的 | 就労 | 就労 | 資格取得 | 実習 |
管理機関 | 登録支援機関
特定技能所属機関(受け入れ企業) | 受け入れ先企業 | 送り出し企業 受け入れ先企業 | 事業協同組合 商工会議所などの非営利団体 |
在留期間 | 最長5年 | 無制限 | 介護福祉士候補最高4年 (合格後は無制限) | 最長5年 |
日本語能力 | N4以上 | N2以上 | N5以上 | N4以上 |
受け入れ制限 | 常勤介護職員の人数を超えないこと | 制限なし | 原則1か国2名以上5名以下 | 常勤介護職員の人数に応じて |
講習 | 来日前8時間 来日後3時間 | 来日前原則6ヶ月 来日後原則6ヶ月(実務研修450時間以上) | 来日前原則6ヶ月 来日後原則6ヶ月(実務研修450時間以上) | 来日前原則1ヶ月以上 来日後原則1ヶ月以上 |
特定技能「介護」とその他の在留資格の差はどのようなものがあるのでしょうか?
特定技能「介護」
メリット:在留期間が長いこと、および他の在留資格に比べて、就労上の制約が比較的少なく管理がしやすいこと
デメリット:登録支援団体への管理費用が発生してしまう(自社内製化ができない場合)
在留資格「介護」
メリット:介護福祉士養成学校を卒業していて、基礎があるために長期的な人材・即戦力として可能・日本語能力が高い・介護に関する知識が豊富
デメリット:母数が少ないため採用がすること自体が著しく難しい
在留資格「介護」は、介護福祉士養成学校を卒業後に「介護福祉士」の国家試験に受かることで得られる在留資格になります。
永続的な在留が可能な人材となりますが、国家試験を受けるための高い日本語能力と費用が必要となるため、取得できる外国人が著しく少ないのがデメリットです。
EPA(経済連携協定)
メリット: 日本語力が優れている
デメリット:日本全体での受け入れ数が限られている・研修期間が長い・受入れコストが著しく高い
EPA(経済連携協定)はフィリピン・ベトナム・インドネシアの3か国に限定されている制度で、国家資格「介護福祉士」の取得が目的の制度です。
期間内に介護福祉士の資格を取得できない場合には帰国をしなくてはいけないという条件ですが資格を取得すれば「介護職」として永続的に日本で就労をすることが可能です。
技能実習「介護」
メリット:浸透している制度のため採用することが比較的容易である。
デメリット:何も知らない状態から教育するので、ある程度の業務習得までに時間がかかる。技能実習計画に基づき外国人技能実習機構に定期的に書類を提出し、監査を受ける必要があり、月額コストがかかる。
技能実習制度は、日本で開発された技術を発展途上国の経済成長を図るための人材育成に利用し、協力することを目的として制定された在留資格で。日本に最長5年在留することができます。
介護に関する在留資格の中で一番採用しやすいですが、知識や経験のない状態から育成する必要があり、入国までに通常約1年程度時間がかかってしまいます。
特定技能「介護」が人気とされる理由とは?
利点の多い特定技能「介護」が人気とされる理由は何でしょうか?
特定技能「介護」のメリットは在留期間が長いこと、および他の在留資格に比べて、就労上の制約が比較的少なく、管理がしやすいことにあります。
EPAや在留資格「介護」に比べて資格取得にかかる工数や時間、コストなどの負担が少なく、従事できる業務も幅広いことが利点となり人気となっています。
但し、特定技能「介護」は前述の通り3つの試験に合格しなければならないため、技能実習「介護」に比べてハードルが高く、特に海外では技能実習のほうが特定技能よりも人気があります。
現時点では、特定技能「介護」の人材を採用する場合は、試験3つに合格した国内在住外国人または、技能実習3年修了者を採用することが一般的です。
介護分野においての現状は?
超高齢化社会である日本において、介護問題は重要な問題であり人材不足が課題となっています。
介護サービスの利用者が年々増加しているにも関わらず、介護事業所における人手不足感は強まっており、国としても人材確保が急務となってきています。
介護業界は国内人材の確保を進めるために色々な取り組みをおこなってきましたが、それでも人材を確保することが困難な状況です。
特に、団塊の世代が75歳になる2025年には介護人材が約38万人不足するという試算も出ており、対策は急務です。
そこで、日本政府は人手不足解消のための人材確保の手段の1つとして特定技能「介護」を制定し、外国人労働者の力を借りることで介護分野の人材不足解消に取り組んでいるのです。
しかし、特定技能「介護」は特定技能14分野の中で一番受け入れが進んでいる分野ですが、まだまだ受け入れ人数などは少なく、活用されているとはいえません。
向こう5年間で最大6万人の特定技能外国人の受け入れを想定していますが、まだまだ普及は進んでいません。
特定技能「介護」は、受け入れ側である企業にとっては難しく感じられる制度かもしれません。しかし、制度を十分に理解した上で適切な申請や外国人のサポートをおこない、必要な人材を受け入れられるようにしましょう。
まとめ
特定技能「介護」についてのご紹介をしました。
人手不足が深刻な介護分野では、特定技能「介護」に対する期待が高まっています。
しかし、特定技能「介護」での外国人の雇用においては、受け入れる企業側が守るべき条件等やサポートなどが細かく決められていますので、企業側の受け入れ体制の整備が必要になります。
登録支援機関に依頼するなどして、しっかりと受け入れ体制を整えた上で、計画的に雇用することをおすすめいたします。
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