特定技能の業種追加|コンビニ・トラック・廃棄物処理業界

特定技能の「業種追加」について、最新の追加の検討があるコンビニ・トラック・廃棄物処理の業種の追加のメリット、現状などを解説します。

特定技能の業種追加|コンビニ・トラック・廃棄物処理業界

目次

  1. 特定技能制度に追加が検討されている業種
  2. 特定技能へ「コンビニ」の業種追加の検討
    1. 業種追加のメリット
      1. 雇用時間
      2. 徹底されたマニュアル化
      3. セルフレジなど無人システムの導入
    2. 業種追加が保留された理由
      1. 運用の難易度が高く、雇用コストがかかる
      2. 雇用条件が外国人の希望に合致するか
      3. 自民党の事情
  3. 特定技能へ「トラック運転や配達荷物の仕分け」の業種追加の検討
    1. 業種追加のメリット
      1. 長距離ドライバーとしての雇用
      2. 長時間運転の解消
    2. 業種追加が保留された理由
      1. 運送サービスのレベル
      2. 交通ルールの難しさと危険性
      3. 業界の団結力不足
  4. 特定技能へ「廃棄物処理業界」の業種追加の検討
    1. 業種追加のメリット
      1. 深刻な人材不足の解消
    2. 業種追加が保留された理由
      1. 安全性
      2. 言語の問題
  5. まとめ

1.特定技能制度に追加が検討されている業種

外国人材を受け入れる「特定技能制度」には現在12分野14業種が設定されており、人材不足の緩和に向けて外国人の雇用を進めています。
その中で、今後の深刻な人材不足になると予想され、新たに追加を検討している職種があります。
それは、「コンビニ」、「トラック運転や配達荷物の仕分け」、「産業廃棄物処理」の3業種です。
以下では、この3業種の特定技能制度への業種追加検討に関して述べます。

2.特定技能へ「コンビニ」の業種追加の検討

コンビニの特定技能制度への追加検討は、2013年から続いています。
日本全国のコンビニでは、慢性的な人手不足により、留学生など外国人の雇用がなければ厳しい状況が続いています。
実際に従業員不足により、深夜営業を無くすなど、営業時間の変更を余儀なくされている店舗もありますが、コンビニの店舗数は毎年増加傾向にあり、人手不足は年々深刻化しています。
日本人の従業員不足を解消するためにも、コンビニの特定技能への追加による外国人雇用の実現が望まれます。
以下はこれから「コンビニ」が特定技能へ追加されるメリットと、保留された理由となります。

2-1 業種追加のメリット

  1. 雇用時間
  2. 徹底されたマニュアル化
  3. セルフレジなど無人システムの導入

雇用時間

現在でもコンビニでは多くの外国人が雇用されていますが、その外国人の多くは留学生のアルバイトです。
留学生は「資格外活動」としてアルバイトが可能となっていますが、週に28時間以内の就労時間制限があります。
経済的な負担を感じている留学生であっても、この規制によって長時間働くことができないのが現状です。
また、学生であるためシフトの調整が難しいのが雇用の難点として挙げられます。
特定技能制度への業種追加認められれば、就労時間制限もなくなるため、より効率的に外国人の雇用が可能になります。

徹底されたマニュアル化

コンビニなど大手チェーンでは徹底した業務マニュアルがあることがほとんどです。
ローソンは、来日予定の外国人留学生を対象とした海外研修施設を、ベトナムと韓国に設けています。
そこで店内での業務を学んだ留学生は、来日後に即戦力として働くことができます。
また、指導時に使うルールブックやマニュアルも、英語、中国語、韓国語、ベトナム語、ネパール語で作成されています。
コンビニでこなす必要のある業務は1200種類以上と言われていますが、徹底されたマニュアル化によってこれらは解消されています。

セルフレジなど無人システムの導入

都内を中心に、商品を購入する際に客が自らバーコードをかざして決済が可能な「セルフレジ」の導入が進んでいます。
現在は全店舗で導入されているわけではないですが、コロナウイルス感染症の流行により、現金での支払いによる接触が懸念され、キャッシュレス決済が急速に普及したことも大きな理由です。
セルフレジの導入によってレジでの接客頻度が格段に減少するため、 高度な日本語レベルのない外国人でも、より安心して働ける環境になっていくことが予想されます。

2-2 業種追加が保留された理由

  1. 運用の難易度が高く、雇用コストがかかる
  2. 雇用条件が外国人の希望に合致するか
  3. 自民党の事情

運用の難易度が高く、雇用コストがかかる

特定技能外国人を雇用するには、支援計画、各国大使館への申請、在留資格変更許可などの申請が必要となります。
しかし、コンビニエンスストアチェーンにおいては、フランチャイズ加盟店(フランチャイジー)の中小・零細企業または個人事業主が店舗の経営をしていることが多く、特定技能制度の理解と法令遵守、申請等が困難であることが予想され、一般的に特定技能外国人の登録支援機関に委託する必要があると考えられます。
また、特定技能に関して頻繁に事務処理が必要になる場合、専門で事務を行う人材の雇用や、事務作業の委託を考えなければなりません。
そのため、時給の支払い以外で発生する雇用コストが増加する可能性が高くなり、超えるべき課題が多くあると考えられています。

雇用条件が外国人の希望に合致するか

日本では長期化する景気低迷により、時給が上がりにくい状況にあります。
また、言語や業務の研修制度が充実していても、日本語は言語として覚えることが高度であるけれども、日本以外では使うことがないので、他国での雇用の条件が良ければ、日本が選ばれないという現状もあります。
今まで外国人留学生のアルバイト(資格外活動)に頼ってきたコンビニエンスストアが、一定の資格取得難易度がある特定技能外国人を雇用するとなると、正社員雇用になります。果たして特定技能の資格を苦労して取得した外国人にとって、魅力的な雇用条件を提供できるか、疑問が残ります。
特に、首都圏、大阪圏、名古屋圏以外の地域においては、待遇が都会に比べて著しく悪いので、実際に地方のコンビニエンスストアが特定技能外国人を雇えるかどうかは疑問が残ります。

自民党の事情

本来は特定技能制度開始の2年後、2021年4月から特定技能制度の見直しに取りかかる予定でした。
しかし、新型コロナウイルスの影響で1年先延ばしにされてしまいました。
理由は、菅政権の支持率の低下です。
菅政権のコロナ対策に国民の批判が集まり、菅政権は支持率が低迷。特に外国人の入国に関する水際対策の失敗について国民の批判が多いことから、政府自民党は外国人の入国に関する新しいコメントがとても出しづらい状況に陥っています。
今、特定技能制度の改革や業種追加について話題にすると、また国民の批判を浴びる可能性があるので、今は静観を決め込んでいる状態と言えます。
一方、1年先送りされた特定技能制度の今後の見直しの中で、1番可能性が高いのはコンビニの業種追加です。
新型コロナウイルスの影響で見直しが1年延ばされてしまいましたが、2022年からの見直しの中でコンビニは相当早い段階で業種追加になっていくと思われます。

3.特定技能へ「トラック運転や配達荷物の仕分け」の業種追加の検討

全日本トラック協会は2020年6月11日、トラック運転や配達荷物の仕分け業務について「技能実習2号移行対象職種」に追加するよう、自由民主党の外国人労働者等特別委員会へ要望しました。
2019年からのコロナウイルス感染症によるステイホームやリモートワークによってEコマースサイトの利用が日常化し、今後もさらに運送業の雇用需要は高まると予想されます。
「トラック運転や配達荷物の仕分け」業務の特定技能への追加によって、運送業の人手不足は解消されますが、「コンビニ」「廃棄物処理業界」と同じく、現在も協議中となっています。
以下はこれから「トラック運転や配達荷物の仕分け」が特定技能へ追加されるメリットと、保留された理由となります。

3-1 業種追加のメリット

  1. 長距離ドライバーとしての雇用
  2. 長時間運転の解消

長距離ドライバーとしての雇用

トラックの運転は特にドライバーの高齢化による雇用の難しさが問題としてあります。
ドライバーが高齢になると、長距離運転が体力的に厳しくなるからです。
特定技能外国人を長距離ドライバーとして雇用することで人材不足の解消に繋がります。

長時間運転の解消

現状、長距離ドライバーの雇用が不足しているため、一人当たりの走行距離が長くなってしまうということも問題です。
適度な休憩が義務付けたれていたとしても、長時間運転になると注意不十分による交通事故の危険性が高まります。
雇用の増加によって、長距離運転の解消にも繋がります。

3-2 業種追加が保留された理由

  1. 運送サービスのレベル
  2. 交通ルールの難しさと危険性
  3. 業界の団結力不足

運送サービスのレベル

日本に暮らしていると感じにくいことですが、日本の運送サービスのレベルは世界でも高い水準にあります。
海外では運輸中に商品の箱が破損したり、違うものを届けてしまったり、指定時間内に届けられないということが日常的に起きます。
日本で同じことが起きると、顧客の不満に繋がり、運送業者全体の信頼度が低下してしまうことになりかねません。
そのため、特定技能外国人にとっては日本の厳しい水準に適応しづらいのではないかということも保留された理由の一つになります。

交通ルールの難しさと危険性

日本の交通ルールは諸外国に比べてとても複雑で厳しくなっています。
特にトラックの運転に関しては、ひとたび交通事故が発生すると、重大事故になりやすく、日本政府もかなり厳しい交通ルールを敷いています。
また、自動車普通免許の取得でさえ外国人には難しいのに、さらに高度な大型免許が外国人に取得できるか、という問題もあります。
外国人にとって日本の複雑な交通ルールを理解し、かつ免許を取得するのは難しいと思われること、また重大事故を防ぐ必要もあり、トラック運転に関する特定技能制度の導入には、かなり時間がかかると思われます。

業界の団結力不足

元来、技能実習制度も特定技能制度も、制度を導入したいと考える業界が一致団結し、試験制度を創設したり制度設計をして、長い期間労力をかけて政府と交渉し、制度導入を勝ち取る手順を踏む必要があります。
しかし、トラック業界は複数の団体が乱立し、業界の足並みが揃わない傾向にあります。
また、昨今運賃相場の値上げにやっと成功した運輸業界では、外国人の就労許可を得ると荷主からの値下げ要求の題材になってしまうという懸念の声があり、業界の意見が必ずしも一致していないことも、特定技能制度導入の壁となっています。
特にコロナ不況による運賃相場の値下げ要求が出ている中、運輸業界としても特定技能制度導入に二の足を踏んでいるという事情もあります。

4.特定技能へ「廃棄物処理業界」の業種追加の検討

最後に、「廃棄物処理業界」の特定技能制度への業種追加について述べます。
「廃棄物処理業界」の業種追加の理由は、「コンビニ」、「トラック運転や配達荷物の仕分け」と同じく深刻な人手不足の解消です。
しかし、「廃棄物処理業界」は他の2業種よりも問題点が多く、なかなか実現までには辿り着けずにいます。
以下はこれから「廃棄物処理業界」が特定技能へ追加されるメリットと、保留された理由となります。

4-1 業種追加のメリット

深刻な人材不足の解消

「廃棄物処理業界」は以前より人手不足が慢性化しています。
日本人にとっても危険であるというイメージの強い業種のため、給料面が良くても選ばれにくいということも人手不足の原因となります。
しかし、日本の経済や生活にとって産業廃棄物処理はなくてはならない業種です。
そのため、特定技能外国人の雇用で、人手不足が解消されることは業界にとってかなりの利点となります。

4-2 業種追加が保留された理由

  1. 安全性
  2. 言語の問題

安全性

廃棄物処理業務は、爆発性、毒性、感染性、その他にも健康被害を生ずる可能性のある業種であるため、危険の伴う業種です。
原発事故などの労働災害から、外国人にとってもマイナスのイメージがあるということも現状です。

言語の問題

上記で述べたように危険性の高い業種であるため、安全に作業するための確実なコミュニケーションスキルが必要となります。
日本語スキルが高い特定技能外国人だとしても、マニュアルにないその場の指示で、微妙な受け取り方の齟齬が生じてしまうだけでも事故の危険性が高まります。
そのため、即戦力として雇用できる外国人が少ないということも問題です。

5.まとめ

「コンビニ」、「トラック運転や配達荷物の仕分け」、「産業廃棄物処理」の特定技能への業種追加には、現状では様々な問題があり、個別に詳しく解説いたしました。
今後、各業界の問題改善が進み、特定技能追加への動きが前向きに進められることを期待したいと思います。

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