特定技能「自動車整備業」|外国人を雇用するには?条件や注意点について
特定技能「自動車整備業」で外国人を雇用する方法、在留資格1号・2号の違い、特定技能外国人が活躍できる分野と種類、求められる人材基準(日本語能力技能水準)、受け入れ機関(自動車整備工場)に求められるもの等を解説します。
近年、日本企業は深刻な人材不足に陥っています。そんな中、人材不足の解決策として特定技能外国人の受け入れに注目が高まっており、その受け入れ人数は年々上昇しています。
様々な分野で活躍を始めている特定技能外国人。そこで、今回はいくつかある分野の中でも「自動車整備業」における特定技能外国人の雇用について解説していきます。
目次
特定技能外国人が活躍できる分野と種類
特定技能外国人の就労が認められている業種とは?
介護や漁業など人手不足が深刻な12分野14業種に限り、在留資格「特定技能」による外国人の就労が認められており、それらの業種を「特定産業分野」といいます。
介護、ビルクリーニング、製造3分野(素材系産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)、建設、
造船・船用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁行、飲食料品製造業、外食業
以上12分野14業種が特定技能が認められている特定産業分野です。
特定産業分野における在留資格は、「特定技能1号」「特定技能2号」が創設されています。現在、特定技能2号は「建設」、「造船・船用工業」の2分野のみ受け入れ可となっています。
在留資格の種類と違い
在留資格には「特定技能第1号」、「特定技能第2号」の2種類があり、以下のような違いがあります。
特定技能第1号:不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に属する相当程度の知識又は
経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
特定技能第2号:同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの残留資格
特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事
(引用:法務省ホームページ)
要するに、1号に比べ2号の方がより熟練した技能が必要ということです。技能を考慮し、在留期間や家族の帯同等、条件としては優遇されたものとなっています。
しかし、特定技能第2号は「建設」、「造船・船用工業」の2つの業種のみとされています。また、現在日本には特定技能2号外国人の在留はありません。
自動車整備業における人手不足状況
自動車整備業における従業員数は、ここ数年横ばいで推移しています。しかし、自動車整備要員の有効求人倍率は上昇しており、人手不足は顕在化しています。
整備工場に対するアンケートでは、約半数の整備工場が人手不足を感じている現状です。
以前は若者の興味と言えば自動車でした。特にほとんどの男性が自動車の所有にあこがれ、収入を得たらまず自動車を購入することが当たり前の時代がありましたが、現代は様変わりしてしまいました。趣味の多様化により自動車が若者の興味の対象から外れてしまい、同時に自動車整備業についても興味を持たない若者が増えてしまいました。
自動車の人気が陰り、少子化や職業選択の多様化も相まって、自動車整備士を目指す若者が減少しており、自動車整備要員の平均年齢は上昇傾向にあります。平成30年度には45,3歳となっています。
次項では、上記のような深刻な人手不足の状況の改善に向け開始された特定技能制度において、
外国人、企業それぞれにおける採用のために求められるものを説明していきます。
採用において特定技能外国人に求められるもの
求められる人材基準
特定技能制度は、深刻化する人手不足に対応するために開始された制度であるため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となることが必要とされます。
自動車整備業においては以下の人材基準が設けられています。
Ⅰ:技能水準(試験区分)
「自動車整備分野特定技能評価試験」又は「自動車整備士技能検定試験3級」
Ⅱ:日本語能力水準
「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」
Ⅰ:技能水準
「自動車整備分野特定技能評価試験」と「自動車整備士技能検定試験3級」は道路運送車両法に基づく同水準程度の試験です。「日常点検整備」、「定期点検整備」及び「分解整備」の実施に必要な能力の測るものとなっています。
合格により、タイヤの空気圧、灯火装置の点灯・点滅、ハンドルの操作具合及びホイールナットの緩み等の点検整備に加え、エンジン、ブレーキ等の重要部品を取り外して行う点検整備・改造を適切に行うことができることが確認できるとされています。
よって、試験合格により自動車整備業において、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有する者ということが証明されます。
ちなみに、「自動車整備職種、自動車整備作業」の技能実習2号以上を良好に修了した場合、業務を行う上で必要とされる専門性・技能を有し即戦力となれる程度の知識、経験を有するとされ、技能試験は免除されます。
Ⅱ:日本語能力水準
「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」は基本的な日本語能力水準を判定するために実施される試験です。
合格により、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有すると認められることから、特定技能制度での受け入れに必要となる程度の日本語能力水準であると評価されます。
職種・作業の種類にかかわらず、第2号技能実習を良好に修了した場合は、 技能実習生としての3年間の日本での生活により、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力水準を有する者であると考えられ、試験が免除されます。
以上より、受け入れパターンとしては技能試験、日本語能力試験を両方合格する場合と、第2号技能実習を修了する場合の2パターンあると言えます。
業務内容
1号特定技能外国人が従事する業務は、自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備です。
【自動車の分解整備】
エンジン、ブレーキ、ギアボックスなど以下の重要部品を取り外して行う整備又は改造
(上図:国土交通省ホームページより引用)
あわせて、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務においても問題ないこととなっています。関連業務の例として、整備内容の説明や関連部品の販売、清掃等が挙げられます。
受け入れ機関(自動車整備工場)に求められるもの
受け入れ機関の義務
受け入れ機関(受け入れ企業。所属機関ともいう)の義務としていくつか定められていることがあります。
ア 特定技能所属機関は、国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」(以下「協議会」という。)の構成員になること。
→受け入れ機関は協議会の構成員であることが必須です。自身の事業場を管轄する地方運輸局等まで届け出を行う必要があります。
イ 特定技能所属機関は、協議会に対し必要な協力を行うこと。
→協議会と相互の連絡を図り、連携の緊密化を図る必要があります。また、 特定技能所所属機関は、以下の事項等について必要な協力を行わなければなりません。
① 1号特定技能外国人の受入れに係る状況の全体的な把握
② 問題発生時の対応
③ 法令遵守の啓発
④ 特定技能所属機関の倒産等の際の1号特定技能外国人に対する転職支援、 帰国担保
⑤ 就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析
ウ 特定技能所属機関は、国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと。
→質問への回答、報告書の提出、聴取への出頭、実地調査の受け入れその他必要な協力を行う必要があります。
エ 特定技能所属機関は、道路運送車両法(昭和 26 年法律第 185 号)第 78 条第1項に基づく、地方運輸局長の認証を受けた事業場であること。
→自動車の点検整備の不備は最悪の場合、事故等に至る恐れがあり、適切な整備を行うには一定の設備及び従業員が必要であること、自動車整備事業者は従業員が10人未満の中小零細事業者が大半を占め、それらが全国に広く分布していること等の特性を踏まえ、自動車整備工場による適正な外国人の受け入れを維持するにも、認証の取得が必要とされます。
オ 特定技能所属機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、以下の全ての条件を満たす登録支援機関に委託すること。
① 上記ア、イ及びウの条件を満たすこと。
② 自動車整備士1級若しくは2級の資格を有する者又は自動車整備士の養成
施設において5年以上の指導に係る実務の経験を有する者を置くこと。
受け入れ時の留意点
Ⅰ:受入れ見込数と在留期間
自動車整備業における制度開始時(2019年4月)より向こう5年間の受入れ見込数は、最大 7,000 人です。
在留期間は5年となっています。
しかし、2019年度から2021年度での自動車整備分野特定技能評価試験の合格者数は合計469人となっています。
試験実施国も日本、フィリピンの2か国のみとなっているため、開催国の少なさも影響しているのかもしれません。
Ⅱ:正社員として雇用
特定外国人を雇用する場合は、正社員として雇用しなければなりません。パートやアルバイト、派遣などで雇用することはできない点に注意が必要です。また、給料や福利厚生、待遇なども同じ機関で働いている日本人と同等の扱いをしなければなりません。
さいごに
人材不足の打開策として打ち出された制度、「特定技能制度」。特に深刻な人手不足として特定技能外国人の採用が認められている12分野14業種のうち、自動車整備業について解説していきました。
自動車整備業における特定技能外国人の受け入れはまだ発展途上と言えます。特定技能制度の利用にはいくつかの義務や決まりがありますが、それらを実行できれば人手不足問題解決の一打となる画期的な制度であると思います。人手がおらず悩んでいる事業主の方はぜひ検討してみてはどうでしょうか。
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