特定技能外国人の雇用契約書|概要とポイントを徹底解説
「特定技能雇用契約書」とは、特定技能外国人を日本の企業で受け入れる場合に行う契約です。外国人との契約ですので外国人が読んで理解できる契約書が基本となります。この記事では「特定技能雇用契約書」では何をどのような基準で定める必要があるのか説明しています。
目次
「特定技能雇用契約書」とは?
「特定技能雇用契約書」は、特定技能外国人を日本の企業で受け入れる場合に行う契約です。日本人従業員との雇用契約とは異なり、外国人の場合は、外国人に合わせた内容の契約となると考えると良いでしょう。また、外国人との契約ですから、外国人が読んで理解できる契約書が基本となります。「特定技能雇用契約書」は、雇用後のトラブルや悪質な仲介者の介入を回避するための対策として、不法な雇用契約を妨げるために行われます。
契約内容にはいくつかポイントがありますので、留意点として説明して行きましょう。
「特定技能契約書」で交わされる内容
特定技能外国人を雇用する際に、労働条件や待遇、報酬などが法的に定められた基準になっているか、また外国人だからという差別的な内容でないことと、帰国時のサポートなどについて必要な項目を記載する必要があります。
<採用方法1>在留資格「特定技能」を取得する方法は3つ
外国人が特定技能の在留資格を取得する方法は以下の3種類です。
①試験受験型
14の産業分野の職種から、技能試験と日本語能力試験を受けて合格することにより、特定技能の在留資格が取得できます。
②技能実習移行型
技能実習3年経験者は、同じ職種において在留資格を特定技能に資格変更することができます。
③技能実習他職種受験型
技能実習3年経験者が他の職種で特定技能の資格を得るには、日本語能力試験は免除され、望む職種の技能試験を受けて合格することにより、特定技能の在留資格を取得することができます。
<採用方法2>特定技能外国人の居住地
特定技能外国人の居住場所も2種類あります。
①日本在住の特定技能資格を持つ外国人を採用する方法
②外国から招く方法
◆従事する業務について
「特定技能契約書」の内容には、外国人の在留資格が雇用条件に合った産業分野であることと、外国人が従事する業務が、外国人の知識と技術に即した仕事であること、この2点が確認しておくポイントです。
企業が雇用した外国人は、雇用後にはすぐに業務に対応できる人材であることが必要です。これらのことを踏まえて、書面に記載する際には、特定技能の14産業分野の職種であることと業務内容については、なるべく詳しく明確に記した方が在留資格認定証明書交付申請をする時に審査が通りやすくなります。
◆労働時間について
時間に厳しいと言われている日本人が、仕事上の時間については、けじめ良く割り切らない傾向があります。これは外国人にとっては理解できないことの一つであり、時間に関しては、契約に明確に記しておく必要があります。
就業時間、時間外労働、休憩時間、休日や祝日などについては数字で明確に締結しておくこと、そして曖昧な時間に関しては、外国人にわかりやすく説明と明示あると良いでしょう。
また、特定技能外国人はフルタイムでの雇用となり、アルバイトやパートタイマーではありません。企業での就業規定となる所要労働時間での雇用となります。
◆賃金支払いについて
外国人の賃金は、最低賃金法を遵守し、かつ日本人労働者と同等以上の給与を支払う義務があります。
同じ業種で同じスキルの日本人と外国人は、同額の賃金となります。もし同じ条件の従業員が職場にいなかった場合には、比較できる日本人従業員を基準に、賃金設定について外国人が納得できる説明があると良いでしょう。
労働条件の中でも、労働時間と賃金に関する契約内容の理解不足からトラブルが発生しているケースがよくありますので、給与がどのように計算されて決められているのかは、はっきりと明示しておくことが重要です。
外国人であるからと言う理由で,報酬、教育訓練の実施,福利厚生施設やその他の待遇が差別的になることは認められていません。
また、外国人の賃金を支払うために日本人従業員の賃金を減額するようなことも認められていません。
◆差別的待遇の禁止について
国籍に関係なく勤務態度とその生産性を評価されることが求められています。外国人だからという差別から過酷な労働条件で雇用することは認められていません。報酬や労働時間、待遇などすべて日本人従業員と同じに雇用契約に記す必要があります。
◆一時帰国に必要な有給休暇について
外国人にも日本人と同等に、有給休暇の取得が必要です。例えば、母国へ一時帰国する場合には、有給休暇を使って休暇を取れるようにしましょう。外国人から帰国の相談があった場合には、業務状況を踏まえて有給休暇が取れるように、また既に有給休暇を取り終えていた場合には追加分として帰国できるような配慮があると良いでしょう。
労働基準法39条では、雇用契約締結後6ヵ月経過し、労働日数の8割以上就労した労働者は有給休暇を取得できることとなっています。特定技能外国人にも労働基準法が適用されます。
雇用する企業では、外国人が帰国しなければならない事情などを日頃からのコミュニケーションで把握しておくと良いでしょう。
◆帰国の旅費の負担について
外国人が母国へ帰国する場合は、原則として旅費は本人の負担となります。ただし、本人が旅費を払えない場合には、雇用している企業が負担する必要があります、また、帰国する時、日本を出国するまでは企業側がサポートすることが必要です。
外国人へ支払う報酬から月々控除するなどして、この帰国費用を確保しておくことは認められていませんので、ご注意ください。
◆生活と健康のサポートについて
外国人を雇用する企業側では、職場での管理以外に、外国人の生活状況や健康状態、メンタルヘルスに関しても、常に管理する側として配慮が必要です。
外国での仕事と生活からストレスが溜まらないように、定期的な話し合いや健康診断なども行うことが大切です。
健康診断に関しては、労働安全衛生法により、事業者が労働者の健康診断を管理する旨が記されていますので、外国人に対しても同様に毎年1回の健康診断は欠かさないように気をつけましょう。
◆派遣先について
外国人を派遣労働者として雇用する場合には、派遣先と派遣期間を明示する必要があります。現在、特定技能外国人を派遣で雇用できる産業分野は、「農業分野」と「漁業分野」のみとなり、それ以外の派遣雇用は認められていません。
◆保証金や違約金の禁止について
「特定技能雇用契約」においては保証金や違約金についての契約は認められていません。
在留資格・技能実習での失踪問題の要因となった、仲介業者が多額の保証金を外国人から徴収したり違約金契約を交わした経緯から、特定技能制度では、トラブル回避のために、保証金と違約金の制約を設けています。
外国人が保証金や違約金のために縛られるような労働環境を作らないための防止策となっています。
さいごに
以上の留意点をポイントに「特定技能雇用契約書」を締結する際には、外国人のわかる言語ではっきりと理解できたことを確認してから契約を進めましょう。
また、契約前には、特定技能制度に関する概要については一通り熟知し、また雇用する外国人の国や習慣などについての理解もあると良いでしょう。
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