特定技能「介護」|外国人を介護業界で採用するには?

特定技能「介護」で外国人を採用する方法を詳しくご説明いたします。さらに介護業界における現状・特定技能ビザでの受け入れ方法について解説します。

特定技能「介護」|外国人を介護業界で採用するには?

目次

  1. 介護業界の人手不足
  2. 慢性的な人手不足解消の対策
  3. 今までの介護分野での外国人の受け入れ方法と問題点
  4. 特定技能「介護」
  5. 特定技能介護外国人の受け入れ要件
    1. 特定技能介護が受け入れられる対象施設
    2. 雇用形態は直接雇用のみ
    3. 給料は日本人の同等以上
    4. 業務内容は身体介護と支援業務がメイン
    5. 受け入れ人数の上限と期間
  6. 特定技能「介護」の在留資格取得の要件
  7. 特定技能介護の外国人の受け入れの注意点
    1. 特定技能外国人への就労・生活支援が必要
    2. 特定技能介護の協議会の加入
  8. 特定技能1号外国人を雇用する場合の費用相場は?
  9. 介護業界で外国人を雇用するためのまとめ

介護業界の人手不足

世界でも最先端の超高齢化社会の日本を生きる私たちです。多くの人々が介護の問題に直面します。高齢のご両親が、最愛の配偶者が、やがて自分自身が…。立場や状況はそれぞれ違いますが、介護という厳しい現実と向き合わねばならぬ日が必ずやってきます。
そんな中、介護業界ではサービスが続けられない事業所や、ベッドが空いているにもかかわらず長年の入居待ちを出してしまう施設が、珍しくありません。これは、すべて介護士の不足に起因するものです。
2021年7月に厚生労働省が公表した介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数によると、2025年度には約32万人、2040年度には約69万人を追加で確保する必要があるとされました。2019年の厚生労働省老健局の報告によると、2018年の介護関係の有効求人倍率は3.95で、年々上昇し続けています。公共財団法人介護労働安定センターの調査によると、7割近くの介護施設が慢性的に介護士の不足を感じており、そのうち実に9割が「採用が困難である」と答えています。
この人手不足の原因には、労働条件の悪さなどがあり、処遇を改善することも大切です。しかし、実はもっとも根本的な問題は、少子高齢化が進んでいることです。日本は介護だけではなく、様々な業種において、労働人口の減少という言う問題に直面しているのです。
働き手である15歳から64歳までの生産年齢の人口は、1995年の8,717万人をピークに、2013年には7,883万人、2030年には6,773万人に減少すると予測されています。このような中で、介護業界は、他の業種と人材獲得競争を繰り広げねばならない厳しい状況です。

慢性的な人手不足解消の対策

日本人人材の確保がますます難しくなる今後の状況を考えると、現実的な対策として、外国人労働者の活用以外に解決の手立てはないのではないでしょうか。実際、急速なグローバル化に伴って、外国人を受け入れる動きは介護業界にも拡大しています。
日本とインドネシア、フィリピン及びベトナムとの間で締結されたEPA(経済連携協定)に基づくインドネシア人・フィリピン人・ベトナム人看護師・介護福祉士候補者の受入れが開始しました。インドネシアからの受入れは平成20年度、フィリピンからの受入れは平成21年度、ベトナムからの受入れは平成26年度からそれぞれ行っております。
さらに平成29年から、技能実習に介護も加わると、一気に外国人人材を活用する施設が増えました。現在、外国人人材の受け入れを検討中の事業者も多いと耳にします。
では、いったい受け入れ側は、事前にどのような準備が必要なのでしょうか。介護の場合は、製造業などと違い、人を相手にする仕事です。安全な介護技術はもちろん、様々な性格の方に対応できる柔軟さ、ホスピタリティ、人間力が問われる仕事です。それは、一朝一夕にできるものではなく、育成やチームワークを通して培っていくしかないとか思われます。それには、現在現場で活躍している日本人スタッフの深い理解と、協力が何より大切です。そのような体制作りができてから、外国人人材を迎えることが望まれます。
介護業界は、海外に進出する企業のようにグローバルな視点にたち、人材育成と、国際交流に努めていかねばならないのではないでしょうか。

今までの介護分野での外国人の受け入れ方法と問題点

介護分野ではこれまでに「EPA」、在留資格「介護」、「技能実習」という3つの在留資格に基づいて外国の人材の受け入れを行ってきました。従来の制度の問題点を考えてみました。

「EPA介護福祉士(候補者)」

経済活動の連携協定であるEPAにより、インドネシア/フィリピン/ベトナム3カ国から介護職員を受け入れようという制度です。日本語能力はN3~N5でよいのですが、母国で介護や看護の学習経験・資格が必要です。

【問題点】 受け入れ機関への要件が厳しく(常勤介護職員の4割以上が介護福祉士有資格者であること、適切な研修体制を確保すること等)、中小の介護事業者にとっては、ハードルが高いようです。

在留資格「介護」

在留資格「介護」は平成29年度に創設された比較的新しい制度で、介護福祉士の国家資格を持つ外国人が介護施設などとの契約に基づいて業務に従事する際にこの資格が与えられます。通例はまず「留学」の在留資格で入国して介護福祉士養成学校で2年以上学び、国家試験に合格したのちに「介護」の在留資格に切り替えて従事することになります。

【問題点】 直接海外から留学で介護福祉士養成の専門学校に入る場合は、N2以上の日本語能力を取得していることが求められます。まずは日本語学校に留学し日本語を学んだ後、専門学校に通うというのが標準的なコースになると考えられます。その場合、学費だけでも3年間(日本語学校1年・専門学校2年)で、200万円以上かかり、経済的負担が大きすぎるので、現状では数が少ないです。

技能実習「介護」

日本で各種技能を学び、母国で役立ててもらうための制度です。入国時、日本語能力N4が必須で、1~2年ごとの介護関連の試験を受けてパスすれば最長で5年の雇用が認められます。協同組合や商工会などの監理団体を通じて、技能実習生を受け入れています。平成29年に技能実習に介護が追加されてから、この制度を使って、外国人人材を採用しよう考える事業者が大幅に増加しています。

【問題点】技能実習制度そのものが、我が国の人手不足を補うためのものではなく、あくまでも研修であるというところに大きな矛盾があります。介護に関しては、今のところ目立った問題は起きていませんが、他の業種においては、職場放棄し失踪したケースや、窃盗などのニュースをにぎわすような実習生の犯罪が頻発しています。背景には、低賃金、長時間労働といった実習生を追い詰める問題があると推測されています。技能実習生制度そのものを見直す時期が来ているという識者の声も数多くあります。

特定技能「介護」

介護の仕事に関連する外国人雇用制度のなかで、最も新しいのがこの在留資格「特定技能1号」をもつ外国人の雇用です。2019年4月から始まりました。
特定技能1号とは、日本語能力や介護に関するテストを受験し、必要な水準を満たしていることが確認されれば最大5年間の就労が可能です。
雇用する際は、認定を受けた登録支援機関のフォローを受ける事もできます。 技能実習のように教育を目的としたものではありませんし、「EPA」や在留資格「介護」のように国家資格の取得・所持を要件としたり、就学・研修期間を設けたりはしていません。介護現場の人材不足を補うために即戦力となる人材を求める制度です。また、この制度は働く側にとっても、メリットが大きいです。労働契約で、日本人と同等、もしくはそれ以上の報酬額を設定、労働時間・有給休暇などについて適切な契約内容にしなければいけないとなっています。同じ業種であれば、転職も認められています。

しかし、現状進捗が遅れているのも事実です。介護は5年間で6万人受け入れ予定ですが、初年度はわずか56人と大きく出遅れています。2020年末時点でも939人にとどまっており、目標と大きく乖離している現状です。実際、介護分野で働いている人はEPAからの切替えがほとんどです。コロナウイルス感染症の影響も大きく受けていますが、受け入れ側と求職者のマッチングがうまくいっていない部分が大きいです。

これらの要素が解消された時、制度的には圧倒的に制限が少なく、さらに費用負担も少ない特定技能が介護業界では一気に広まっていくと思われます。

特定技能介護外国人の受け入れ要件

特定技能介護が受け入れられる対象施設

特定技能介護は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、特定介護福祉施設、グループホーム、通所介護事業所(デイサービス)などの介護の業務を行う事業所での受け入れが可能です。但し、訪問系サービスでは特定技能外国人の受け入れはできません。

雇用形態は直接雇用のみ

特定技能介護として雇用できるのは直接雇用のみです。
派遣社員や短期勤務、アルバイトとして雇用することはできません。
また、フルタイムでの雇用が条件なのも注意が必要です。

給料は日本人の同等以上

特定技能介護の外国人への給料は、同じ業務に従事する日本人社員と同等以上を支払うことが条件です。

業務内容は身体介護と支援業務がメイン

特定技能介護が従事できるの大きく分けて、身体介護業務と支援業務がメインです。
身体介護業務の主な業務は入浴、食事、排泄介助などで、支援業務の主な業務はレクリエーションや機能訓練補助などです。
上記に付随する業務に従事することも可能ですが、付随する業務を主な業務と働かせることは禁止です。

受け入れ人数の上限と期間

特定技能の受け入れの人数は日本人等の常勤介護職員の人数以下という決まりがあります。
この日本人等の常勤介護職員には、技能実習生、EPA、介護福祉候補者、留学生は含まれません。

特定技能1号が働ける期間は最大5年間です。
介護分野は特定技能2号は認められていないため、最大5年間になります。

特定技能「介護」の在留資格取得の要件

特定技能外国人が日本で就労するには4つの方法があります。それぞれの特長を紹介します。

試験に合格する

特定技能外国人が日本で就労するためには、試験に合格する方法があります。試験には「介護技能評価試験」と「日本語試験」、 そして「介護日本語評価試験」があり、これら3つの試験に合格すると特定技能1号の在留資格が取得できます。。日本語試験は、 国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験N4以上のどちらかに合格する必要があります。
試験の概要、試験問題や申し込み方法などの詳しい情報についてはこちらの記事【特定技能介護|試験合格が必要。勉強の方法は?】をご確認ください。

介護分野の技能実習2号を修了する

介護分野で技能実習2号を修了すれば、前述の試験なしで特定技能1号の在留資格が得られます。 技能実習2号の修了条件は技能実習を2年10か月以上修了し、所定の試験に合格するか現場管理者の評価が一定以上なされた場合に該当します。

EPA介護福祉士候補者として在留期間満了(4年間)の方

特定技能1号の在留資格はEPA介護福祉士候補者としての在留期間満了した方も得られます。

介護福祉士養成施設を修了する

介護福祉士養成施設を修了した外国人も特定技能1号の在留資格を得られます。

特定技能介護の外国人の受け入れの注意点

特定技能外国人への就労・生活支援が必要

特定技能の外国人を受け入れた場合、外国人が仕事面も生活面においても安定的にかつ円滑に行えるように10項目の支援が求められています。
10項目の支援についてはいくつか人材派遣会社などがサポートしてくれることもあります。
また特定技能外国人を受け入れる際は、出入国管理庁に支援項目に対して計画を記載して、提出し、実施することが求められます。
1.特定技能外国人への事前ガイダンス
2.出入国する際の送迎
3.住居探し支援
4.生活オリエンテーションの実施
5.公的手続等への同行、各種行政手続きについての情報提供と支援
6.日本語習得の支援
7.相談・苦情に対する対応
8.日本人との交流促進支援
9.非自発的離職時の転職支援
10.定期的な面談・行政機関への通報

特定技能介護の協議会の加入

初めて特定技能外国人を雇用する事業所は、受け入れ後4か月以内に「介護分野における特定技能協議会」の加入が必要です。

特定技能1号外国人を雇用する場合の費用相場は?

特定技能外国人への給料は、日本人社員と同等以上を支払うことが条件としてあります。
そのほか、在留資格申請費用や登録支援機関への支援委託料などを合わせると給料以外に年間で30万から50万円ぐらいかかります。

介護業界で外国人を雇用するためのまとめ

介護業界の人手不足は、もう待ったなしの状況まで来ています。少子高齢化は 改善するどころかますます加速しています。そんな中、一筋の光明が外国人人材の活用です。
今までにあった「EPA」は、3か国のみからの受け入れであり、技能実習「介護」は、労働ビザではなく、あくまでも国際貢献のための教育というものでした。
今般の「特定技能」の在留資格創設により、介護分野における相当程度な知識・技能を有する外国人労働者の受け入れができるようになりました。
現在は、コロナウイルス感染症による入国制限や、広報の遅れ、求職者とのマッチングの問題等で、特定技能はまだあまり活用されていませんが、今後はこの制度の利用が一気に広まっていくものと考えられます。
ただ、どのように整った制度ができても、それだけでは、問題は解決しません。受け入れる事業所の人材育成や、快適な労働環境を整えることが求められます。ひいては、介護業界 日本社会全体が、外国人人材にとって、働きやすく、住みやすい環境にならなければならないのではないかと思います。
先進国の多くが 我が国のように少子高齢化の時代を迎え、介護人材の確保をアジアに目を向けていると聞きます。良い人材は、より好条件で住みやすい国に流れてしまうでしょう。日本が選ばれる国になるには、どうすればいいのか考える時代を迎えているのではないでしょうか。

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