特定技能外国人の受入れ・所属機関になるためには?基準は?
特定技能外国人の受入れ機関(所属機関)になるには何をすればよいかポイント・適切な基準(外国人と結ぶ雇用契約・外国人を支援する体制)・支援計画について解説しています。
日本で深刻化する人材不足。
この問題を解決するため、2019年4月に特定技能制度が開始されました。
2021年3月末時点、日本に在留する特定技能1号外国人は計22,567人。政府は2019年度から5年間で34万5,150人を在留上限としており、上限に対する現在の充足率は6.5%です。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、当初の政府想定と比べ進捗は芳しくありません。
また事業者の皆さまは、申請や審査の煩雑さを危惧していらっしゃるかもしれません。
そこで本記事では、特定技能制度をより身近なものとするため、制度を活用するにあたり知っておきたい情報をまとめました。
目次
特定技能制度の対象となる産業分野
前提として、特定技能制度は全ての事業者が利用できるわけではありません。
制度の対象は、以下の14分野を取扱う事業者に限られます。
また、制度を活用する事業者は各産業分野の協議会への入会が必須です。
分野によって入会期限は異なります。申請前に入会が必要な分野、逆に雇用後4カ月以内に入会すればよい分野などです。協議会は、制度の周知や法令順守の啓発、採用事例の情報提供やセミナーの開催などを行っています。有益な情報を受け取るためにも、事前に協議会へ入会することをおすすめします。協議会ごとウェブサイト上に入会窓口があるので、まずは当該協議会へ入会しましょう。入会については下記の記事を確認してください。
全業種|特定技能「協議会」の費用、加入方法、加入義務
「特定技能の協議会って何?加入が必須?」など気になる方も多いのではないでしょうか。特定技能外国人を雇用した場合、「協議会」への加入が必要です。この記事では、加入に必要な費用と加入方法を中心に解説していきます。
受入れ機関(所属機関)に求められる4つの基準
受入れ機関とは、特定技能外国人を雇用する事業者を指します。特定技能所属機関とも称されます。受入れ機関(所属機関)は次の4点を満たす必要があります。
●受入れ機関(所属機関)が外国人を受け入れるための基準
- 外国人と結ぶ雇用契約が適切
- 機関自体が適切
- 外国人を支援する体制があり
- 外国人を支援する計画が適切
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
雇用契約が適切
当然ですが、雇用条件に不当な内容がある場合は問題です。特に外国人雇用には注意が必要です。雇用契約を締結する際に気を付ける点は次の通りです。
- 日本人と同等以上の給与を支払うこと
- 日本人と同等の労働時間であること
- 福利厚生などの待遇に差別的な取扱いをしないこと
- 一時帰国を希望した場合、休暇取得を許可すること
- 契約終了の際は帰国費用を代弁すること(外国人が負担できない場合)
- 外国人の健康や生活状況を把握すること など
注目する点は、外国人・日本人間の待遇に差を設けないことです。特定技能外国人の方々は即戦力です。技能実習2号の修了者、または技能試験を通過した方が対象です。そのためすぐに働けるだけのスキルがあります。安易に「日本人より手軽に、低賃金で雇用できる」という考えは誤りです。あくまで日本人を採用する場合と、本質的には変わらない点を押さえておきましょう。
- 1年以内に外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
- 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
- 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないことなど)に該当しないこと
- 保証金の徴収や違約金契約を締結していないこと
- 支援に要する費用を外国人に負担させないこと など
要点は、法令を遵守し、外国人が安心して働き続けることができる事業者であるかどうかです。2019年には、技能実習生の失踪者数が年間8,796人に達しました。失踪の要因の多くは、賃金の不払いなど経済的事情であると公表されています。このため、受入れ機関は失踪者を発生させた過去や、発生させる要因がないことを求められます。
受入れ機関(所属機関)自体が適切
それでは事業者は、外国人の受入れ前にどのような準備をすればいいでしょうか。事業者が受入れ機関として妥当と判断される要件は、主に次の通りです。
外国人を支援する体制
受入れ機関が整えるべき支援体制とは、どのようなものでしょうか。特に、外国人を初めて採用される事業者ではノウハウがないため管理等に戸惑うかもしれません。支援体制についても基準あり、主なものを挙げていきます。
- 役職員の中から、支援業務を適正に実施できる支援責任者および支援担当者を選任していること
- 外国人が十分に理解可能な言語で支援を実施できる体制を有していること
- 5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
- 支援責任者または支援担当者が、外国人とその監督者に対し定期的な面談を実施することができること など
まず、外国人が得意な言語での対応が必要です。悩みがあったり困りごとがあったりすると、日本人でも日本語で上手く話せないことがあります。同様に外国人にとっても、母国語や得意な言語でしか話せない場合があるでしょう。
しかし英語であればまだしも、ベトナム語やタガログ語が必要となると話は変わります。通訳を用意することも難しくなってくるかもしれません。
そこで、各種支援については登録支援機関に委託することが可能です。支援については一部のみ委託することも可能ですが、全部委託することで支援体制に関する基準は満たしたものとされます。自社でのサポートは難しいと感じる場合、ぜひ登録支援機関の活用を検討してみてください。
外国人を支援する計画
さて、受入れにふさわしい体制が整ったあとは、具体的な支援計画を作成します。制度申請の際、他の申請書類と合わせて計画書の提出が必要です。次の通り記載する点が決められています。
支援計画の主な記載事項
- 支援責任者の氏名および役職など
- 登録支援機関(登録支援機関に委託する場合のみ)
- 次の10項目
- 事前ガイダンス
雇用契約締結後、労働条件や活動内容、入国手続きや保証金徴収の有無などについて対面やテレビ電話で説明します。 - 空港への送迎
出入国時に空港までの送迎を行います。 - 住居確保・生活に必要な契約の補助
連帯保証人になることや、社宅を提供します。また銀行口座開設や携帯電話、ライフラインなどの契約補助も含まれます。 - 生活オリエンテーション
日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応方法等について説明します。 - 公的手続きなどへの同行
住居や社会保障、税などの手続きに同行し、書類の作成を補助します。 - 日本語学習の機会の提供
日本語教室の案内や日本語学習教材の情報提供などを行います。 - 相談・苦情への対応
職場や日常生活での相談・苦情などについて、外国人が理解できる言語で助言をします。 - 日本人との交流促進
自治会での交流や地域の行事への参加補助を行い、日本人との交流を促します。 - 転職支援(人員整理などの場合)
受入れ側の都合により雇用を解除する場合の転職先を探す手伝いや、推薦状の作成、求職期間中の有給休暇の付与や行政手続きについての情報提供をします。 - 定期的な面談・行政機関への通報
支援責任者などが外国人とその監督者に対し、3カ月に1回以上の頻度で面談します。労働基準法違反などがあれば、速やかに行政機関に通報します。
- 事前ガイダンス
上記のように、入国から普段の生活まで全て補助するといっても過言ではありません。
それだけ外国人の採用には注意を払わなければいけないということです。
しかし2-3.でも触れた通り、支援の実施にあたっては登録支援機関に委託が可能です。事業者の状況に応じて、委託も選択肢の一つに含むとよいでしょう。
まとめ
この記事では、特定技能制度の受入れ機関(所属機関)が要求されることについて説明しました。受入れ機関を目指す皆さまに、特に押さえていただきたいポイントを再掲します。
- 給与をはじめとした雇用契約は、日本人と同等またはそれ以上に取扱うこと
- 法令を遵守し、外国人が安心して働ける事業者であること
- 出入国から日常生活に至るまで、サポートする体制と計画をきちんと整えること
- 支援体制および計画に不安がある場合は、登録支援機関に委託できること
外国人がいくら事前に勉強したとしても、異なる文化や言語に戸惑うことは考えられます。その場合に頼ることができるのは、ホストである事業者の皆さんです。制度自体を難しいと感じるかもしれませんが、本記事を通じて少しでも採用イメージが描ければ幸いです。
事業者と外国人の双方にとってより良い制度となるよう願っています。
出典
法務省 出入国在留管理庁「特定技能1号在留外国人数(令和3年3月末現在)」
法務省 出入国在留管理庁『在留資格「特定技能」について』
法務省 出入国在留管理庁「技能実習制度における失踪問題への対応について」
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