農業で外国人を雇用するには?方法、メリット、注意点

農業で外国人を雇用するには?在留資格の種類、受け入れ方法、受け入れ可能な業務、日本で働くことができる期間、働くための要件、農業における外国人を雇用することのメリット・注意点

農業で外国人を雇用するには?方法、メリット、注意点

目次

  1. はじめに
  2. 農業における採用が可能な外国人(技能実習)
    1. 受け入れ方法
    2. 受け入れ可能な業務
  3. 農業における採用が可能な外国人(特定技能)
    1. 受け入れ方法
    2. 受け入れ可能な業務
    3. 日本で働くことができる期間
    4. 外国人が働くための要件
  4. 農業における採用が可能な外国人(特定活動)
    1. 外国人が働くための要件
    2. 日本で働くことができる期間
  5. 農業における外国人を雇用することのメリット
    1. 農業の人材不足の改善
    2. 若いかつ真面目
  6. 外国人を雇用する際の注意点
    1. 日本で就労できる在留資格を持っているか
    2. 国籍や人種による差別をしていないか
    3. 外国人が働くための環境づくりを行っているか
  7. おわりに

はじめに

近年、国内の農業従事者は減少し続けており、その深刻な問題を解消する存在として外国人労働者が注目されています。
今回は、農業分野において、受け入れが可能な外国人はどういった人なのか、その際の注意点、また外国人を雇用することのメリットもご紹介します。
農業分野において、雇用することができるのは下記の在留資格を持つ外国人です。

  1. 技能実習
  2. 特定技能
  3. 特定活動

上記以外にも、「定住者」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4つの身分で在留資格を取得した外国人は就労制限なく働くことができます。
また、資格外活動許可を取得することでも働くことは可能です。

農業における採用が可能な外国人(技能実習)

技能実習制度は、開発途上国の経済発展や産業振興の担い手となる外国人材を育成する制度です。開発途上国からの人材を技能実習生として一定期間受け入れて、実際に業務を経験することで技術や技能・知識を習得してもらいます。
そして母国にそれらを持ち帰り経済発展に役立ててもらうことを目的としています。

受け入れ方法

技能実習生を希望する農業法人や農業者などは、法務大臣と厚生労働大臣の許可を得た監理団体を通して受け入れることができます。
その際に実習実施者は技能実習計画を作成して、外国人技能実習機構から認定を受ける必要があります。
外国人の入国後は労働基準法に基づいた雇用関係を締結して、基本は3年間、優良な農業法人や農業者と認められれば最大5年間の技能実習が可能になります。
技能と日本語の最低水準は特に設けられてはいないので、企業側は雇用前に確認をして必要に応じて研修などを実施しましょう。

受け入れ可能な業務

受け入れ可能な業務は、下記の二つになります。

  1. 耕種農業のうち施設園芸、畑作・野菜、果樹
  2. 畜産農業のうち養豚、養鶏、酪農
  3. ※農作業以外に、農畜産物を使用した製造、加工の作業の実習も可能です。

農業における採用が可能な外国人(特定技能)

特定技能とは、2019年に創設された在留資格です。国内の人手不足の解消を目的として新設されました。一定の専門性や技能を持つ18歳以上の外国人が対象で、農業の他に介護や建設など全14の分野での受け入れが認められています。

受け入れ方法

受け入れの方法は、下記の二つになります。

  1. 農業法人や農家が直接外国人を雇用する
  2. 派遣事業者が受け入れ機関となり外国人を派遣してもらう

受け入れ可能な業務

受け入れ可能な業務は、下記の二つになります。

  1. 耕種農業全般の業務(栽培管理、農産物の出荷・選別など)※栽培管理の業務が必ず含まれている必要があります。
  2. 畜産農業全般の業務(飼養管理、畜産物の集出荷・選別など)※飼養管理の業務が必ず含まれている必要があります。

また、加工や運搬、販売、除雪作業などでも、同じ現場で作業をしている日本人労働者が働いていれば、付随的に携わることは認められています。
耕種農業全般の業務に従事している外国人が畜産農業全般の業務を行うことはできないので注意が必要です。逆も然りです。

日本で働くことができる期間

特定技能の在留資格で働くことができる期間は通算5年で、それ以上働くことは原則不可になっています。
通算なので、5年間継続して働く形でも、農閑期に本国に帰国して農繁期に再入国するという形を繰り返すことも認められています。
また、在留期間が通算で5年未満であれば、最初の雇用主との契約期間が終了した後に別の農業法人や農家と雇用契約を締結して働くことも可能です。

外国人が働くための要件

農業分野で働くためには、下記の二つの要件をクリアしないといけません。

  1. 技能水準全国農業会議所が作成している農業技能測定試験に合格すること、あるいは、農業技能実習2号を修了することが必要です。
  2. 日本語能力水準国際交流基金日本語基礎テストか日本語能力試験N4のいずれかの試験に合格しなくてはいけません。
    これらに合格することで、ある程度の日本語を理解することができることの証明となります。

農業技能実習2号を修了した外国人は、日本語試験と農業技能測定試験は免除となります。

農業における採用が可能な外国人(特定活動)

2018年、政府は「国家戦略特区農業支援外国人受入事業」を開始しました。
これは、国家戦略特別区域内において、農作業や加工の作業現場で即戦力となる外国人材を人材派遣会社が雇用契約によって受け入れるというものです。
この事業で外国人労働者を派遣してもらうには、それぞれの特区ごとに決定された派遣事業者から派遣してもらいます。
派遣先である各農業経営体は、派遣事業者との間で、外国人材の業務内容や派遣期間等について「労働者派遣契約」を結ぶ必要があります。

外国人が働くための要件

  • 年齢:申請日において満18歳以上であること。
  • 実務経験:農作業の実務経験が1年以上であること。
  • 知識・技能:下記のいずれかを満たす必要があります。
    1. 耕種(あるいは畜産)農業の技能実習に2年10ヶ月以上従事していること(技能実習2号修了者)
    2. 農業分野の専門的知見を有する民間団体が実施する耕種農業全般についての試験に合格していること
  • 日本語能力:派遣先の指示内容を的確に理解し、同じ農作業の職場の日本人ともコミュニケーションができる程度の能力が必要です。

日本で働くことができる期間

滞在期間としては、派遣であるため最長で3年間となります。
3年間継続でも、通算で3年働く、のどちらでも問題ありません。

農業における外国人を雇用することのメリット

農業の人材不足の改善

農林水産省の「2020年農林業センサス結果の概要(確定値)」によると、日本の基幹的農業従事者(農業の仕事が主で、主に自営農業に従事した世帯員)は136万3千人で、5年前からおよそ39万人(22.4%)減少しています。
また、65歳以上が占める割合も69.8%と高齢化も進んでいます。
こういった農業分野の人材不足かつ高齢化という深刻な問題を解消するために、注目されているのが外国人労働者です。

若いかつ真面目

日本に働きにきているということは、20代前半から30代前半くらいまでの若者がほとんどです。
また、技能実習生や特定技能生は、すぐ他の仕事を探せる日本人とは違い、その仕事を失って帰国するわけにはいかないので真面目に一生懸命働きます。
その姿に日本人労働者も刺激を受け、職場の雰囲気が良くなったり生産性が向上したりすることも期待できます。

外国人を雇用する際の注意点

外国人を雇用する際の注意点をご説明します。

日本で就労できる在留資格を持っているか

まず第一に、農業で就労できる在留資格を持っていないことには外国人が日本で働くことはできませんので、しっかりと確認しましょう。
農業で就労可能な在留資格を持っていない状態で働くことは不法就労にあたり、受け入れ側がそれを知らなかったとしても在留資格の確認をしていないなどの過失がある場合は処罰の対象となる可能性があります。

国籍や人種による差別をしていないか

外国人の募集をする際に、「アメリカ人のみ募集」などといった国籍や人種を限定的に募集することはできません。
仕事内容に即して、例えば「韓国語が堪能な方を歓迎します」といったような表現を用いて、雇用したい外国人の経験や技術を掲げるようにしましょう。

また、勤務条件に関しても日本人労働者と同様でなくてはいけません
。労働基準法は外国人にも適用され、国籍や人種を理由に給与や労働時間などの勤務条件を決めることは禁止されています。

外国人が働くための環境づくりを行っているか

日本に慣れていない外国人や日本語が十分でない外国人には、さまざまな面でのサポートが必要になります。
住居などの生活面でのサポート、適切な教育や人事管理などの仕事面でのサポート、また外国人が職場で孤立することがないような精神面でのサポートも欠かせません。
密なコミュニケーションを取ることはもちろん、教育係をその外国人と同じ出身国の人にするなどの工夫をして、外国人が働く上で快適な職場環境づくりに努めましょう。

決して異なる国籍、地域、文化、価値観などを否定してはいけません。
また、同様に日本の価値観などを押し付けることもしてはいけません。お互いのそれらを認め合い、対等な関係を築こうと努力すべきです。

おわりに

今回は、農業分野における外国人の雇用に関してご説明しました。
主に受け入れることのできる在留資格は、技能実習、特定技能、特定活動の3つ、及び定住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等です。
それぞれ在留期間や受け入れ要件が異なります。
現在の人材不足の状況を、外国人の雇用によって大きく改善できる可能性がありますが、在留資格の確認や外国人に対する待遇など注意する点も多くあります。
それらをしっかり確認して有効に外国人雇用を活用しましょう。

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