技能実習でのポスト・ベトナムはミャンマーしかありえない理由は?
技能実習生のポスト・ベトナムは?日本で働く人材としてミャンマー人が適している理由や、失踪トラブルを防ぐ仕組み、また今後の外国人材活用の動向など、リフト株式会社より弊社最高顧問 北中 彰 が取材を受けました内容をご紹介いたします。
目次
2020年1月「リフト株式会社」より、ミャンマーの送り出し機関代表として、弊社最高顧問 北中 彰 が取材を受けました。
今回の取材記者の方は、技能実習生送り出し国トップのベトナムに対する問題や不満の声をよく耳にするそう。
そのような折、ミャンマー・ユニティのミャンマー人材送り出し事業に注目をしてくださり、この度の取材依頼をいただきました。
こちらのページではその取材内容をご紹介いたします。
取材内容を動画でご覧になりたい方は、以下の関連リンクよりご覧ください。
【取材動画】技能実習におけるポスト・ベトナムはミャンマーでしかない理由とは
現在、技能実習生送り出し国トップのベトナムにおいて、様々な理由で良い人材の確保が困難になりつつあります。この現状を踏まえ、ポスト・ベトナムとして注目を浴びている「ミャンマー」について徹底解説いたします。
なぜ、ミャンマー人なのか?
まず、なぜ日本で働く人材としてミャンマー人が適しているのでしょうか?
大きく4つの理由があります。
① 日本で働くことへの強いモチベーション
まず1つ目の理由は、ミャンマー人には日本に行きたいという、ものすごく強い動機があるということです。
なぜ、ミャンマー人は日本に行きたいと思うのでしょうか?
大きく2つの理由があります。
1つ目の理由はミャンマーには仕事が無いことです。
ミャンマーは、2011年まで軍事政権の支配により鎖国状態でした。そのため、経済発展が遅れ、ミャンマーは依然として農業国です。
ですから、どんなに優秀な方でも就職先がないという状況です。
日本に行けば仕事があるということが、一つ目の理由ですね。
もう一つの理由は、日本で稼げる年収がミャンマーの20〜30倍であることです。
最大都市のヤンゴンは都会化し、給料も上がってきていますが、そこに住んでいる人は大きく見積もっても全人口の10%ほどです。ミャンマーの全人口は約6000万人弱ですので、残りの90%、約5400万人弱の人々が地方に住んでいます。地方はとても田舎で、例えるなら無人島のような状況です。インフラの整備もまだまだ進んでいません。
この田舎で働く約5400万人の人々は、月給が非常に安く、働いても月給7000~8000円しかもらえない状況なのです。
月給が7000~8000円ですか?!
驚くのはそれだけではありません。
標準的な家族構成が、両親と子供6人の計8人家族で、その家庭の中で働いている人が平均して約2人という状況なんです。
つまり、月給7000円×2名で合計月給14000円を、8人家族で分け合って暮らしています。
その月給は、ミャンマーの物価でも生活は苦しいものなのでしょうか?
苦しいです。
多くの若者が、ギリギリの生活を強いられ、夢も希望も持てずに、暗澹と生活されています。
ミャンマーはそんな状況だったんですね。
そんな中で、7000円の給料だった一家の働き手が日本に行くとどうなるかというと、給与額が20倍〜30倍になるんです。
もし日本で10年働いたら、ミャンマーの200年分から300年分の収入が得られるという状況です。
日本行きを決意するだけで、宝くじが当たるみたいなものなんですよ。
日本に行くだけで宝くじが当たるのと同じというのは、衝撃的です。
現在ミャンマーには、日本に働きに行ける適齢期の方が約2000万人います。
この状況下で、ミャンマー・ユニティのような政府認定の信頼ある送り出し機関が、日本で働くことを丁寧に説明をすれば、半分の約1000万人は日本行きを希望すると踏んでいます。
そのくらい、今のミャンマー人にとっては日本へ行くことに対してメリットがあります。
② ミャンマー人の国民性
日本で働く人材としてミャンマー人が適している1つ目の理由として、まずミャンマー人にとって日本で働くメリットがあるということについては理解いたしました。
次に、2つ目の理由を教えてください。
日本で働く人材としてミャンマー人が適している2つ目の理由は、ミャンマー人の国民性が日本にとても合っているということです。
ミャンマーは国民の9割が上座部仏教の敬虔な信者です。日本の念仏を唱えるだけで救われるという大乗仏教とは異なり、ミャンマー人はみんなお寺に修行に行きます。
そんな彼らが信じているのが、「現世で徳を積み上げれば来世で報われる。」という考え方です。
ですから彼らは、少ない給料からお寺に寄付をします。現世でたくさん徳を積まなくてはならないのに、ましてや悪いことをしている場合ではないので、犯罪が少なく日本並みに治安が安定しています。ミャンマーでは、夜に女性が一人歩きしていても全く問題がありません。
発展途上国で治安が安定している国は中々ないですよね。
そうなんです。私が体験した象徴的な出来事をご紹介します。
昔、ベトナムのホーチミンで、当時買えば10万円するiPhone6+を持って、私は歩きスマホをしていました。しばらくすると、背後から「ブーン」と音が聞こえて、バイクに乗った青年から一瞬のうちにスマホを引ったくられてしまったんです。
ベトナムだけでなくアジアの発展途上国では、iPhoneは憧れの的なのでみんな狙っているみたいです。途上国ではどこに行っても、iPhoneを置いて3秒目を離すと無くなるとさえ言われているほどです。
ベトナムでは、実際に10万円分を一瞬のうちに取られてしまったのですね。
それが、ミャンマーでは全く状況が違いました。
ミャンマーで新たに買い替えたiPhone7+を、ホテルのレストランで2回忘れたことがあったのですが、2回ともホテルのスタッフが部屋まで届けに来てくれました。
ミャンマー人のホテル従業員にとって、iPhone7+は年収以上の価値があるものです。
見知らぬ日本人が忘れたものをそのまま持ち去ってしまえば、それだけで年収以上の額を稼ぐことができるにもかかわらず、徳を積むために、盗まないどころか部屋まで届けてくれたんですね。
確かに、他の新興国と比較して全く状況が異なりますね。
全く異なります。
一緒に働いている技能実習生などの外国人に対して、この人何か悪いことをするんじゃないかと思いながら働くのと、信頼感を持って働くのではだいぶ結果が違いますよね。
実際、北中様は100名以上のミャンマー人スタッフと働いてらっしゃいますが、働きやすさは実感としていかがですか?
とても働きやすいですよ。みんなニコニコしててね。
人前で勝手な主張をすることは、徳が低いと言う考えもあるため、非常に控えめで、自己主張も少ない方が多いです。
外国人を雇ってみたら自己主張があまりにも強くて、雇い主の方が困ってしまうことがよくあるのですが、ミャンマーの方は日本人よりもおとなしいくらいです。
日本人と国民性が合うということですね。
一緒に働きやすいだけではなくて、1番驚いたのが、介護職種を志望される方の多さです。
ご存知の通り、介護職種は日本でも不人気な仕事ですが、実は、アジア各国でも人気がありません。
不人気な理由は、ただ仕事がきついだけではなくて、技能実習生として日本に来日するために、介護職種のみN4レベルの日本語力が必要になるという難点があるからです。
特定技能も介護職種のみ、3つの試験に合格する必要がありますしね。
そうです。要するに、技能実習などでの介護職種は「試験があって、来日するための勉強期間が長い」ということが、不人気の理由です。
日本は2055年まで人口が減り続け、将来80万人の介護職員が不足すると言われています。現在でさえ、約20万人の介護職員が不足しており、業界では技能実習や特定技能などの外国人材の受け入れを促進しようという機運が高まっています。
しかし、アジア各国でも介護職種は人気がなく、頭を抱えている状況でした。
それがミャンマーは違うんです。「大変な仕事、人の役に立つ仕事をすれば、徳を積むことができる」という感覚のため、自ら介護職種を望む方が多いんです。
それは初めて知りました!その国民性は日本人も見習わなければいけませんね。
③ 日本語習得のスピード
次に、日本で働く人材としてミャンマー人が適している3つ目の理由を教えてください。
日本で働く人材としてミャンマー人が適している3つ目の理由は、ミャンマー人の日本語習得スピードです。
日本語とミャンマー語(ビルマ語)は、語順がほぼ同じなため文法が似ています。例えば、日本語の文法(語順)は英語や中国語とは異なりますよね。しかし、ミャンマー語は日本語とほぼ同じ語順なので、勉強をするときに単語を覚えるだけで良いため、日本人が英語を習得するよりも断然難易度が低いです。
また、ミャンマー人は発音が得意という強みがあります。日本語は50音で比較的発音が簡単な言葉です。一方、ミャンマー語は280音あり、日本語と発音が似ている音が結構あります。これが他国の人材と違い日本語力の習得が早い理由です。
確かに、先日ミャンマーとベトナム出身の技能実習生と一緒に働いている方のお話を伺いましたが、ミャンマーの技能実習生の日本語上達の速さに驚かれてました。
それだけ、言語が近いということです。
④ ベトナムの発展
では、日本で働く人材としてミャンマー人が適している4つ目の理由はなんでしょうか。
日本で働く人材としてミャンマー人が適している4つ目の理由は、ベトナムの経済発展です。
現在、技能実習では41万人の外国人が日本で実習に臨んでいますが、その半数がベトナム人です。
ところが、最大の送り出し国ベトナムで著しい経済発展があり、現在では月給3〜4万円もらえるようになってきました。経済的負担をしてまで親元から離れて日本に働きに行く必要性がなくなって来ているのです。
やはり、技能実習生が日本に働きに来る理由は経済的なところが大きいのですか?
技能実習の目的は表面上は技術移転となっていますが、実際、来日する外国人としては、給与が増えるから来ています。
母国で月給4万円も稼げるようになれば、急速に日本に来る人は減っていきます。かつての中国がそうであったように、ベトナムも限界が近づいてくるでしょう。
ベトナムにはその兆候は出ているのですか?
不人気な仕事ほど、求人に対する応募が集まらなくなっていきます。
弊社のお客様の中で、かつてベトナム人を受け入れていた企業の方が揃っておっしゃるのが、「だんだん人材の質が落ちてきた。」ということです。
優れた人はベトナムで良い仕事に就職できるため、わざわざ日本に行く必要がないんです。だから現在ベトナムにおいては、ベトナムで就職できなかった人やどこか問題のある人が日本に行くという流れになっているケースが多いようです。
そんな状況下で、次のベトナムはどこだとなったとき、仏教国の中で最も人口の多い国であり、日本と親和性の高いミャンマーが今注目されているということです。
ミャンマー人技能実習生の失踪などのトラブルを防ぐ仕組みは?
なぜ、ミャンマー人なのか、その理由は納得いたしました。
しかし、技能実習でよくニュースになる技能実習生の失踪などの問題はどのように対策されるのでしょうか?
失踪の原因は大きく二つに帰結します。
1つ目は送り出し機関が金儲け主義に陥り、技能実習生が多額の借金を背負うことです。技能実習生からたくさんお金をとって、騙すように送り出している企業が多く存在します。
例えばベトナムでは、送り出し機関が技能実習生から徴収しても良い手数料の上限が3600USドル(約40万円)と定められています。しかし実際には、技能実習生から70〜100万円取るのが普通です。
前述のように、技能実習生として日本行きを考える人は月給が低いため、そのような大金を持っていません。それだけの大金を技能実習生たちがどのように調達するかというと、みんな高利貸しからお金を借りるわけです。
日本に行く前に、そんなに借金をしてしまうのですね。
「日本に行ったら儲かるから」と言われて借金をするんです。ですが実際は、100万円の借金をしてまで日本に来たのに、想像していたよりお金が残らない。そうなると、悪魔のささやきにフラフラーっとついて行ってしまうんです。
悪魔のささやきとは?
悪い集団が、SNSで高給を宣伝して、技能実習生を失踪に導いているんです。
ベトナム語など母国語で書いてあるので、日本人には中々わからないんですが、借金で苦しんでいる技能実習生が高給になびいてしまい失踪に繋がっています。
問題はこの後です。
一度失踪すると違法滞在状態になるため、本人が表に出ることができない状態になります。そうすると生きていくために悪の手先となってしまうのです。窃盗団に入ったり、自分がされたのと同様に他の技能実習生の失踪を手引きしたりする集団になります。
日本へ来るために多額の借金をしたことで、不幸の連鎖が生じてしまっているのですね。。。
結局、我々は、実習生自体から多額のお金を取ること自体が諸悪の根源だと考えています。
2019年の技能実習生失踪者が9000人ですが、そのうち5800人がベトナム人です。それが物語っていますよね。ベトナムは技能実習生からお金を取りすぎているんです。
昨今、ベトナム政府が悪い送り出し機関の取り締まりを始めましたが、依然として改善の進みは鈍い状態です。
そもそも送り出し機関がそれほど技能実習生からお金を徴収してしまう理由は何なんですか?金儲けのため以外に何か理由があるのですか?
自社の金儲け以外に多額の金額をとる理由は大きく2つです。
1つ目は、現地のブローカーに支払うため。
2つ目は、送り出し機関から日本の監理団体への接待費用、バックリベート費用のためです。
悪質なブローカーと監理団体が存在しているのですね。
そうです。
人材の募集に苦労している送り出し機関は、そういった悪質なブローカーを使います。候補者を1人見つけるたびに、ブローカーに数十万円を支払っています。
また、監理団体と送り出しの関係についてですが、要はズブズブの関係になっているところがあるということです。実際、弊社が監理団体へ営業活動をしていても、送り出し機関から接待を受けているために、なかなかベトナムからミャンマーに変えられないという監理団体があります。
ブローカーや監理団体に対する費用を捻出するために、技能実習生からお金を取っているとはひどい構造ですね。
ミャンマー・ユニティでは絶対にしません。
悪質ブローカーも使いませんし、契約が取れないのなら、それでいいと割り切って、誠実な監理団体さんだけとビジネスをするようにしています。
他の多くの人材送り出し機関が人材の獲得に苦しむ中、ミャンマー・ユニティさんがブローカーを使う必要がないのはなぜですか?
それは「評判」です。
ミャンマーの労働大臣から表彰を受けているように、我々は正しいことを当たり前に、誠実にやってきましたので、ミャンマー人の間で良い評判が出回っています。
きちっとしているし、ちゃんと日本に行けるという口コミで結構な人材が集まります。
ミャンマー・ユニティさんは誠実にやってきた結果、ブローカーを使わなくとも自然と人材が集まるようになったのですね。
それが大きな要因です。
もう1つは日本語ブームがあげられます。現在ミャンマー全土に日本語学習のブームがあって、なんとなく日本語を勉強している方がいます。
仕事もないし、友達も日本語を勉強しているから、私も勉強しようという雰囲気ですね。そういった人たちに対し、日本語学校の校長先生から、日本語を目的なしに学ぶのではなく最終的に日本で働くことを目標にすると良いと、オススメしてもらうような働きかけを行っています。
ですから、我々は悪質ブローカーを一切使わずに人材の募集ができているのです。
では、失踪原因の2つ目は何でしょうか?
2つ目の失踪原因は企業側の技能実習生への対応です。
企業が実習生に対して、暴力や暴言を振るったり、きちんと給与を支払わなかったりと、同じ人間として扱わないことが原因です。
技能実習生は転職ができないので、このような酷い企業に入ってしまった実習生は、失踪したいと思ってしまうでしょう。
ただ、このような悪質なケースでなくても、良かれと思って熱心に指導した結果、実習生にとっては厳しすぎる指導で失踪に繋がることもあるので、企業側の配慮が大切です。
ミャンマー・ユニティでは、実習中の方のサポートとして、通訳を日本に駐在させ、実習生が母国語ミャンマー語で相談できる体制を整えました。加えて、ミャンマーでの日本語担任教師ともグループメッセンジャーで連絡が取れるようにしているので、企業に言えない相談などを実習生が一人で抱え込まないように実習期間中もサポートを行うことで、失踪を未然に防ぐ取り組みをしています。
そういった誠実な取り組みが功を奏し、昨年2019年は送り出し人数No.1としてミャンマー政府から表彰を受けられてらっしゃいましたね。
昨年、ミャンマーの労働大臣から呼ばれ、日本に対する送り出しでトップだということで表彰状をいただきました。
我々は正式な送り出し機関として、きちんとルールを守り、ミャンマー人のためになる送り出しをと、正しく誠実に事業運営してきました。これは我々のポリシーです。
世界中に送り出し機関はたくさんありますが、正しくやっていないところがほとんどです。正しくやっている我々が一位となるのは当然だと思っています。
ミャンマーで技能実習生の送り出しが進んでいなかった理由とは?
ここまでお話をお聞きした限り、技能実習生の内訳でベトナムが半数を締め、ミャンマーが20分の1だということが信じられないのですが、なぜミャンマーでは送り出し人数が伸び悩んでいたのでしょうか?
我々は、日本に働きに来る外国人としてミャンマー人が最高の国民だと信じてやってきましたが、実は、昨年の2019年4月まではミャンマー人が日本にくることの障害が2つありました。
ミャンマー人の人材送り出しを阻んでいた障壁とはなんでしょうか?
一つは「難民申請」です。
民主党政権の時に、どんな形で来日しても、難民申請をすればその6ヶ月後に日本で働けるという制度が始まってしまいました。
これを悪用する人が多発したのです。日本に難民申請を請け負うプロも存在していて、50万くらいの費用で難民申請の書類を書く人が出てきました。
「私はミャンマーで政治的に迫害されていました。」と主張し、証拠としてデモに参加しているような構図の写真を自作自演します。これは私の知人の話ですが、約30人くらいを受け入れて、来日まもなく、全員が同時に失踪してしまう事態が起きたそうです。明らかにおかしいですよね。
そんなことが起きていたのですね!
日本政府も難民申請が悪用されていることを問題視していました。
結果、約1年前に偽装難民申請を防止するため、技能実習生は難民申請しても認めないし、失踪したら就労できないという制度になりました。
そもそも、技能実習生はミャンマー国が認めて日本に来ているので、難民のはずがありませんから当然の措置です。
そんな裏スキームがあったんですね。
では、ミャンマー人の人材送り出しを阻んでいたもう一つの要因は何ですか?
もう一つ大きな障壁だったのは、ミャンマー人を受け入れるために、監理団体が日本ミャンマー協会に10万円支払わなければならなかったということです。
監理団体としても、なぜミャンマー人を受け入れるために、謎の10万円を支払う必要があるんだという話で、ミャンマー人の紹介・監理には非常に消極的だったのです。
それはそうですよね。
ただ、世の中から大きな批判があって、2019年4月からは、日本ミャンマー協会が技能実習の審査業務から撤退し、在日ミャンマー大使館が窓口に変わったため、10万円という障壁が無くなりました。
その二つの障壁がなくなったので、「これからはミャンマーだね」と一気に風向きが変わったという経緯があります。
ミャンマー人材の今後の動向とは?
障壁がなくなり、いよいよ本格始動されるということですが、人材送り出し事業は特定技能制度しかり、外部環境が大きく影響されるビジネスだと思います。
北中様は、今後ミャンマー人材の送り出しはどのように進んでいくとお考えですか?
まず、既存の技能実習制度を活用した人材の送り出しについては、日本側の運用ルールが段々と厳格化されてきているという障壁はありますが、ほぼ無試験だということと、転職ができないという理由で、これからも受け入れは拡大していきます。
一方で特定技能は、日本政府とすると正式な労働者と定め、今後推進していきたいようですが、報道されている通り、様々な障害がり、未だ在留されている方が4000人程度と進んでおりません。
特定技能の障壁には具体的にどのようなことがあるのでしょうか?
大きく日本側の問題と、ミャンマー側の問題に分けて説明します。
まず日本側の問題ですが、それは試験の回数が少なすぎるということです。
ミャンマーでは、宿泊の試験が募集して2分でいっぱいになってしまい、試験を受けたくても受けられない人がいます。
冗談のような話に思われるかもしれませんが、試験の頻度、定員を今の100倍にしないと普及しないです。
なぜ特定技能の試験は少ないのでしょうか?
特定技能を作った国の趣旨と、現場の感情が乖離しているからです。
現状、試験の運営は各業界の試験を監督する協会が行っています。その団体からは、「人手不足」や「試験問題を考えるのが大変」といった声が上がっているのです。
海外での試験は、言葉の通じない外国で試験をしなくてはならないんですから、本当に大変だと思います。
国の趣旨としては人口減の危機感があり、一刻も早く推進しなくてはなりませんが、その実行を現場に丸投げしてしまったがために、適切なモチベートができていない状況だと推察します。
特定技能について日本側の問題には他に何かありますか?
想定していたより、蓋を開けてみたらルールが厳格なものだったことです。
例えば、社会保険料未払いの人は特定技能に変更できないということがあげられます。
日本に在留している留学生はみんな社会保険料を払っていないので、いざ特定技能に変更しようとすると、約40万支払わなくてはいけません。到底、支払うことはできないということになります。
社会保険料の未納で、特定技能が不許可になった事例は私も耳にしました。
他には、留学生の資格外活動28時間の問題があります。
留学生は資格外活動でアルバイトをしている人がほとんどで、その資格外活動は週で28時間までと定められています。しかし、過去にはその28時間を厳しく取り締まっていなかったため、ほとんどの人が週に28時間をオーバーして働いてきたのです。
そんな留学生がいざ特定技能に在留資格を変更しようとすると、申請の時に過去の収入の提出があり、超過労働がバレてしまう。以前は許されていたことが、特定技能の申請になると通らないということになっています。
厳格に在留資格を審査をするのは当然なことですが、蓋を開けてみたら、予想もしないほど壁が大きかったということですね。
なるほど。では、特定技能について外国側の問題には何がありますか?
特に期待の大きかったベトナムの動きが遅いことがあげられます。
その理由は、技能実習と特定技能の公にされている目的が異なることにあります。
どういうことでしょうか?
技能実習に関しては「技能を身につけて、帰国し、母国に貢献する」という目的ですから、母国側も「どうぞ!」と大手を広げて日本へ人材を送り出すことができます。
一方、特定技能に関しては単なる「労働者」なので、日本に人材を送り出して母国にメリットはあるの?という話になります。
母国のために教育を受けてくるならどうぞと言えるけど、ただ働きに行くならちょっと厳しくしなければいけないということです。その他様々なステイクホルダーの思惑が交差して、進捗を妨げているようです。
ミャンマー個別の話ではどうでしょうか?
ミャンマーに関してはもう間も無く始まります。
我々ミャンマー・ユニティも昨年2019年11月、真っ先に特定技能の送り出し許可をとりました。
ミャンマーは特定技能での送り出しに関するルールも定まったのですか?
ミャンマーの送り出しに関する独自ルールはほとんど決まっています。あとは詰めるだけという状況です。
ただ、この独自ルールに難点が2つあります。
1つ目が本人から送り出し機関が徴収できる金額の上限が1500ドルになるということです。
これはもちろん本人にとってはいいんですが、送り出し機関としては収入源が減り、教育の質など、事業の存続が難しくなるため、その分受け入れ企業に負担してもらうことになります。フィリピンは本人負担額が0円なので、それと比較するとミャンマーはまだ良いのですが。どうしても受け入れ企業の負担額が大きくなってしまうのが難点です。
ミャンマーの特定技能送り出しの独自ルールについて、もう1つの難点はなんでしょうか?
2つ目は、試験に受かる前に面接をすることが禁止されたことです。
特定技能は介護が3つ、介護以外は2つ試験に受からないといけませんが、ミャンマーではこれらに受かった方しか企業面接を受けることができません。そうすると面接がなかなか実施できないんです。現在、ミャンマー・ユニティには2つの試験に受かった人材は一人もいません。
なぜなら、特定技能の試験に受からせるためにはかなり長い期間の教育が必要です。技能実習生の場合には、まず企業と面接をして、行き先が決まってから本格的な教育を受けるので、勉強するモチベーションを高く保てるのですが、特定技能の場合には行き先が分からない状態で、試験に合格するために日本語と業種別評価試験の勉強をしないといけないため、モチベーションを維持するハードルが大きすぎると思います。
報われるか分からない勉強を続けるのには、かなりの精神力が必要ですよね。
ミャンマー政府はなんと特定技能人材を減らす政策をとってしまったのかと、非常に私は嘆いております。
かといって、それに対応しないわけにはいけません。
先ほども言いましたが、ミャンマーは非常に人材が豊富で、日本で働くには最適な国民性で、日本企業から求める声が日に日に高まっているので、リーディング企業の我々が特定技能を諦めたというわけにはいきません。
そこで現在、特定技能として日本にいける人材を数十万人作っていこうということにチャレンジしています。
ただ、すぐにはできません。日本語試験に合格して、技能試験にも合格しなければなりませんので、今年は申し訳ないんですが、試験に受かる人を養成する期間として世間の方にはお待ちいただいて、2021年からは特定技能で2万人を送り出す予定です。
ミャンマーは非常に期待されていますし、我々もミャンマーの人材送り出しを引っ張っていく存在として、期待に応えていきたいと思っています。
特定技能に関する現状を教えていただき、ありがとうございます。
--- 特定技能として日本にいける人材を育成していくチャレンジとは!?詳細は以下の関連リンクよりご覧ください。
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では実際に、外国人を雇用するための心構えについてご教示ください。
外国人全般的な話とミャンマー人特有の話をします。
まず、外国人全般を雇用する際に言える話についてですが、残念ながら日本人には、単一民族日本人だということで、差別的な考え方を持っている人がたくさんいます。日本人以外のアジアの方々を、上から目線で「雇ってやっている。」と考える人たちがまだまだ存在するのです。これが、日本における外国人雇用の最大の障害です。
やはり、外国人を雇う時には、日本人と同じ人間として、いやそれ以上に、一緒に働く仲間・家族のように大事に扱っていただきたいと思います。これが絶対的に必要です。
まず外国人に対する認識を変革する必要があるのですね。
日本はこれから激しい人口減時代になっていきます。
政府の試算では、80年後の2100年に人口が5000万人を割るという話です。いかに外国の方と共生していくかが課題になっていくのに、「差別している場合か!」という話です。
今後はますますダイバーシティ、つまりは人間の多様性を認めていく時代になっていきます。女性の雇用、高齢者の雇用、障害者の雇用だけではなく、外国人の雇用についても日本企業が必ず乗り越えなくてはならない壁だと考えます。
ですから、まずは自社で雇用した外国の方を本当に大事にしていただきたいと思います。
日本企業は人口減に対して、もっと危機感を持って対応していかなければなりませんね。
では、ミャンマー人を雇用する上での留意点はありますか?
東南アジアの方々は皆そうですが、ミャンマーは特に、叱られた経験がある人があまりいません。
日本人は日本人のことしかわからないので、日本が常識的だと感じていると思いますが、逆に日本はアジアの中でもちょっと変わった国だと思った方がいいですね。
日本はアジアの中でちょっと変わった国なんですか!?
そうです。
今はだいぶなくなりましたが、昔は体罰が当然のようにありましたよね。スパルタ教育が当たり前で、人に厳しいことを言うのが当たり前でした。「厳しく育てるのは本人のため」という文化だから、叱るのも当然だという考え方です。
それがアジア人の大多数は、叱ったり厳しく叱責したりする文化は、全くといっていいほどありませんし、人の体に触れるということも皆さん避けてます。
もちろん実習生が日本に行くにあたって、「日本では叱られますよ、厳しく指導されますよ。」ということは伝えますが、体を触るのは厳禁、ましては暴力・暴言も厳禁ということで接していただければと思います。
ミャンマー進出を後押しした、ノスタルジーと悔恨
ここまでのお話をお聞きし、凄まじい熱量で事業に取り組んでおられることが、ひしひしと伝わって参りました。
最後に、なぜそこまでミャンマーに対する愛情を持って、事業に取り組むことができているのか、その理由を教えてください!
ミャンマーという地との出会いは、2011年にミャンマーが民主化された直後のことでした。
もともと、これからの日本の発展を考えて行く上で、海外進出は不可欠だと考えていました。どの国に進出するか検討を重ねていましたが、初めてミャンマーを視察した際に、「あっこれはいい国だ。」と心から感じました。
仏教国で皆さん優しくて犯罪が全然ない、そんなミャンマーが醸し出す雰囲気が1970年代の日本のようで、一種のノスタルジーを感じたのです。
北中様の幼少期の原風景に似たものがミャンマーにはあったんですね。
私は三重県出身で現在59歳です。
子供の頃、私の祖父や祖母は、毎日仏壇にお祈りして念仏を唱える非常に信心深い人たちでした。
当時視察で見たミャンマー人はみんなお寺でお祈りをしていて、心優しくて素朴で、私が暮らしていた昔の日本の田舎みたいな感じがしたのです。
最初からミャンマーに親しみを感じられていたのですね。
では、ミャンマーで人材ビジネスを始められて心境に変化はありましたか?
私は三男坊で一人で生計を立てていかなくてはならなかったため、大学から上京し、強い独立心を持ってこれまで生きてきました。
今、ミャンマーの人々は自分の手で自分の人生を切り拓いていくために、日本に働きに行きます。その姿が、大都会で一旗揚げようと上京した昔の自分を見ているようで、非常に胸が熱くなります。
そんな彼らの強い思いを後押しするようなことがしたい、というのが現在の私の原動力になっています。
北中様の行動力は、そのような熱い思いに支えられていたんですね。
もう一つ、私の心に刻まれている非常に悔しい体験も原動力になっています。
それは、30年前に視察で訪れた上海の発展を見抜くことができなかったことです。
当時の上海は人口こそ多いものの、非常に汚い街で、人々の顔も暗く、私は、可能性を何も感じずに帰ってきました。しかし今や世界最大の都市になっています。なぜ、あの時私は上海の発展を見抜けなかったのかと、強い後悔をずっと持っていました。
ミャンマーという土地と巡り合い、発展が約束されているときに、30年前と同じ轍を踏まず、その成長をもっとも近いところで見届けたいと思っています。
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介護技能実習生も慰労金の対象になる?
新型コロナウイルス感染症対策における慰労金は介護技能実習生にも給付されるの?給付対象や条件、申請方法などを教えます。実習生も慰労金給付の趣旨をきちんと理解することが大切です。
介護 2020年09月28日