技能実習生の過度な借金・失踪防止対策:送り出し機関の選び方セミナー大公開

技能実習生の借金や失踪にはどのような原因があるのか。「送り出し機関の選び方」セミナー内容を大公開。借金や失踪を事前に防ぐためにできる対策とは。送り出し機関を選ぶポイントを詳しく解説しています。

技能実習生の過度な借金・失踪防止対策:送り出し機関の選び方セミナー大公開

目次

  1. 技能実習生の本人負担額はいくらまでであるべきか?
    1. 送り出し国ごとに規定がある
    2. 送り出し機関は利益至上主義ではいけない
    3. 過大な借金は技能実習生の人生を破滅させる
    4. 送り出し機関の手数料は無料にすべきなのか
    5. 技能実習生の本人負担額はいくらまでであるべきか?
    6. 技能実習生が負担する多額の借金の原因
  2. 送り出し機関は監理団体の接待要求・キックバック要求に応じるべきか?
    1. 過度な接待、一切のキックバックは法令違反
    2. コンプライアンス遵守(法令遵守)の流れ
    3. 送り出し機関の真の価値は何か?
  3. 技能実習生はなぜ高い手数料を支払わされてきたのか?
    1. 技能実習生の法外な費用負担の本当の原因
    2. 過度な技能実習生の借金は失踪増大の原因
    3. 技能実習生の失踪が社会問題に。防止する方法はないのか?
    4. 技能実習生に過度な負担をさせない仕組みを作れないか?
  4. 送り出し機関の日本語教育はどうあるべきか
    1. モチベーションが上がる日本語教育
    2. 日本語以外の教育の重要性
    3. 手取り給与計算の教育の重要性
    4. 劣等生にもフォーカスした教育の重要性
    5. 介護技能実習生への日本語教育
  5. 送り出し機関の情報開示はどこまでガラス張りであるべきか?
    1. ガラス張り経営の必要性
    2. タイムリーかつスピードのある対応の必要性
  6. 技能実習候補者には、受け入れ企業の情報をどの程度まで詳しく説明すべきか?
    1. 技能実習生には受け入れ企業の詳細な情報を伝えるべき
    2. 受け入れ企業と技能実習生の信頼関係の構築
    3. 人材獲得競争が激化し、技能実習生が仕事を選ぶ時代に
  7. 送り出し機関の組織作りとチームワークの大切さ
    1. 理念浸透の重要性
    2. 何のために働くか
    3. チームづくりの重要性
  8. 今後の送り出し機関はどうあるべきか?
    1. まず法令遵守が必要
    2. コロナ禍におけるオンライン面接の質向上
    3. 送り出し機関としてDX化の推進
    4. 面接候補者の日本語力のレベルアップ
    5. 要望に対する柔軟な対応
    6. 送り出し機関は大小ではない
    7. 失踪問題の解決
  9. まとめ ~送り出し機関を見分ける方法~
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大澤 夕子 ミャンマー・ユニティ 事業責任者

大学卒業後、2001年に株式会社スリーイーホールディングスに入社。入社3年後、香港にて現地子会社を立ち上げ、貿易等のビジネスに従事する。
2011年にはじめてミャンマーを訪問し、当時のミャンマー人の素晴らしい人柄と勤勉な国民性に惹かれ、2012年からミャンマーで事業を展開。のち2013年5月ミャンマーに「ミャンマー・ユニティ」を設立し、事業責任者に就任。ミャンマーの発展と日本への貢献のため、様々なビジネスやサービスの展開に尽力。現在はミャンマー・ユニティはじめ、スリーイーグループの海外事業全般を統括している。

本日は「送り出し機関の選び方」というテーマでお話しさせていただきます。

今回、送り出し機関の選び方としてお話をさせていただく内容は、私の主観もかなり入っております
また、決してミャンマー・ユニティが良くて他の送り出し機関が悪いということではありませんので、ひとつの意見として聞いていただければと思います。
それでは早速始めさせていただきます。

技能実習生の本人負担額はいくらまでであるべきか?

送り出し国ごとに規定がある

まず、技能実習生の本人負担額については、それぞれの国においてその国独自の規定がございます。

ミャンマー上限2800ドル
ベトナム上限3600ドル

ミャンマーの場合は本人負担額の上限は2800ドル、ベトナムの場合は3600ドルなど、技能実習生本人が我々のような送り出し機関に払う金額の上限規定が送り出し国ごとにございます。当然ですが、どこの送り出し機関もその国ごとの規定に従っていくべきだと思います。付け加えますと、ミャンマーの場合はその2800ドルの中に含めなくてはいけないもの、含めなくてもよいものがございます。(つまり、教育費用とか手続き費用などと言う別の名目をつけて、上限金額以上の額を徴収している送り出し機関があります)
そういったところも踏まえて、やはり国ごとの規定を従うべきだと思いますし、各国の労働省などが規定をなるべく詳細に示して、技能実習生の負担が妥当なのか、その国が決めるガイドラインを送り出し機関がしっかり守っていくべきだと考えております。

送り出し機関は利益至上主義ではいけない

ただ、どこの送り出し機関さんもそうですが、ボランティアではありませんので会社として利益を出していくことももちろん必要です。
しかし、利益を出すことを一番にしてはいけないと思います。技能実習生が負担する金額がどのように来日後の技能実習生の生活や人生に影響していくのかを真剣に考えて、どこの送り出し機関さんも運営をしていくべきではないかと思っております。

過大な借金は技能実習生の人生を破滅させる

例えば「技能実習生が失踪してしまう」「技能実習生が借金の返済ができなくなってしまった」などの不幸な出来事がありますと、技能実習生本人の人生そのものが崩壊してしまいます。
技能実習生は何か目的を持って日本に来るわけで、おそらく大体の人がしっかりお金を稼げること、それなりに日本で日本語や技術を身につけられるという理由で日本に来ると思います。
技能実習生本人が何のために日本に来るのか、その人生計画はしっかりできているか、そういったところも送り出し機関としてサポートしていくべきではないかと思います。
送り出し機関が利益を求め過ぎるあまり、技能実習生の負担の部分が本人の人生にどのように影響するかをあまり考えないで進めてしまうと、本来の技能実習制度のあり方とかけ離れてきてしまうと思います。

送り出し機関の手数料は無料にすべきなのか

送り出し機関はその国から決められた規定よりも手数料を安くするべきではないか、という声や、無料にすれば良いのではないかなど、そういった声もたまにありますが、逆に無料や安くすれば良いというわけでもないと思っています。

例えば、技能実習生に負担をかけるのは可哀想なので、受け入れ企業様(実習実施者様)から「この技能実習生の支払う手数料を負担したい、支援したい」というお話もあります。

そのような非常にありがたいお話でも、私達の場合は一つ一つ個別に対応させていただいております。

もし企業様がミャンマーの規定の2800ドル全額を払っていただくと、デメリットも発生します。それは「技能実習生が頑張らなくなってしまう」という部分です。
受け入れ企業様が技能実習生の負担分を肩代わりしていただくことに対してはありがたい気持ちはあるのですが、手数料が技能実習生自身の負担ではないために、「必ず日本に行けるのだから勉強しなくていいや」「何か困ったときは受け入れ企業が助けてくれるから大丈夫」などという甘えた考えが出てくることもあります。ですから、送り出し機関の手数料を安くすれば良いというわけでもないと思います。

その国の規定に従うべきですけれども、その中でも各送り出し機関さんが何らかのガイドラインを設けて運営をしていき、人のご厚意を無駄にするようなことがないようにしていくのも重要と思います。

技能実習生の本人負担額はいくらまでであるべきか?

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各国で技能実習生の本人負担額の上限金額は違いますし、各国の経済状況、それぞれの技能実習生の家族の状況にもよります。

ミャンマーの場合はほとんどの人が、本人負担額の半額ぐらいの金額は何とか家族で集めて、残りは誰かから借りる形が多いと思います。(ミャンマーは金融制度が発達しておらず、高利貸しから多額の借金をすることがほぼできないので、幸いなことに個人間の貸し借りが主流です)

技能実習生の本人負担額(背負う借金)はいくらまでであるべきかですが、私の考えとしては、やはり日本に行ってから3~4か月、長くても6か月ぐらいで(6ヶ月分の手取り給料から生活費などを引いて)返済できるような金額でないと、3年間日本に来て苦労して働く意味がないと思います。

100~150万円以上の借金をして来日する技能実習生がいるという報道もありますが、その場合は恐らく1年間以上、ひどい場合では2年以上借金返済のために働かなくてはいけなくなります。

借金の返済のために働く期間が1年以上になってしまう場合、本当に3年間日本に来て働く意味はあるのでしょうか。それでも残りの期間で貯金ができればそれでいいのでしょうか。疑問に思うところです。

もちろん借金しないで日本に来られる人はそれが一番いいと思いますが、だいたい3~4か月、長くても6ヶ月ぐらいで返済できないと日本にわざわざ来る意味がないのではないと思います。

技能実習生が負担する多額の借金の原因

技能実習生の法外な借金の金額、送り出し機関に払う膨大な金額に関して、ニュースではベトナムの例がよく報道されていると思いますが、ベトナムの送り出し機関がすべて悪いわけではなく、やはりその需要と供給のバランスに原因があると思います。

一時期中国の送り出し機関さんからの技能実習生がなかなか集まらないということで、一気に技能実習送り出し国の波がベトナムに向かった時期があります。このときに需要と供給のバランスが崩れてしまったのだと思います。

ベトナムの送り出し機関としては、てんてこ舞いになるほど技能実習生の依頼が日本から舞い込み、きっとどんな状態でもどんどん人を送ることができるし、日本側も必要なのだからと、正常な判断ができなくなってしまったことが原因と思われます。

需要があまりにも供給を上回ったために、バランスが崩れてしまい、悪いことをしてもよい、儲けるなら何でも有りになってしまったのではないかなと個人的には思っております。

送り出し機関は監理団体の接待要求・キックバック要求に応じるべきか?

では次のテーマは、送り出し機関が接待やキックバックの要求に応じるべきかについてです。

過度な接待、一切のキックバックは法令違反

送り出し機関が監理団体や受け入れ企業に対して過度な接待をすること、またキックバック(現金で賄賂的なものを提供すること)は、日本においては技能実習の法令で明確に禁止されています。

以前はこのルールが明確ではなく、過度な接待やキックバックが横行していましたし、我々も当然の如く監理団体などから接待やキックバックを要求されました。我々はすべて断っていましたが、「だったら他の送り出しにするよ」と言われてしまい、とても悲しい思いをしました。
しかし、外国人技能実習機構はある時点から監理団体の取締りを厳格化し、現在は明確に法令違反となっています。 送り出し国によっては接待とキックバックについて明確なルールがない国もあり、また罰則が甘いため未だに接待やキックバックが撲滅されていません。

では「接待」と「お客様への歓迎(食事など)」はどう違うのでしょうか? 例えば、受け入れ企業様や監理団体様がはるばる日本からミャンマーに面接や視察、技能実習生への激励などで来ていただいたときに、到着された日に歓迎・懇親という意味でいっしょに夕食をさせていただくのは過度な接待でしょうか?また面接日や視察の日にランチや夕食を普通のレストランでご一緒させていただくのは過度な接待でしょうか?

我々は、お客様を歓迎するおもてなしの気持ちで食事をいっしょにさせていただくことは問題ないと考えています。問題なのはそれ以上の過度な接待です。夜の女性が接客するお店や、食事を超えた宴会は過度な接待に該当すると思います。

過度な接待と普通の歓迎・おもてなしの違いを、送り出し機関さんは節度をもって使い分ける必要があると思います。

コンプライアンス遵守(法令遵守)の流れ

最近は、技能実習機構の取締りもあり、監理団体様や受け入れ企業様が過度な接待をあからさまに要求したり、キックバックを要求するということはほとんどなくなりました。

前述の通り、以前はこの点がかなり乱れていましたが、最近は逆に、例えばミャンマーに到着したときの夕食等においても「全部折半にさせてください」とのお話があったり、受け入れ企業様がミャンマーに何かの用事で来ていただいたときも「お構いなく、私は自分で食事しますので」といった形で、すごく気を遣っていただくようになりました。
昨今はコンプライアンスの遵守が叫ばれていますので、会社の方針で接待を受けることを一切禁止している会社様も多くなり、正常化が進んできたと思います。

送り出し機関の真の価値は何か?

昨今は送り出し機関だけではなく、監理団体様・受け入れ企業様も「あるべき姿」を考えて行動されています。私達としてはできる限り監理団体様や受け入れ企業様と同じ方向を向いて、送り出し機関として正しい姿を追求していきたいと思っております。

本来、監理団体様が送り出し機関を評価するポイントは、キックバックや接待をするかどうかではないと思います。

評価いただくべきポイントは、技能実習生にどういう教育をしているか、技能実習生が日本に行ってからどういう指導ができるかなどだと思います。ミャンマーに限らず、送り出し機関に対して、監理団体様や受け入れ企業様がメールや電話で問い合わせをしたときに、どれだけ早く送り出し機関がレスポンスするか、どれだけ法令遵守して正しい送り出しをするかなどが本来の評価のポイントだと思います。最近は監理団体様の評価ポイントも大多数がそのようになってきたと思っておりますし、それが正しい姿ではないかと思います。

技能実習生はなぜ高い手数料を支払わされてきたのか

技能実習生がなぜ高い手数料を支払わされてきたのかという話題に戻りますが、例えば手数料の上限はミャンマーで2800ドル、ベトナムは3600ドルですが、送り出し国ごとに別名目で上乗せしてよい費用があるようです。

ミャンマーの場合、送り出し機関が得る上限の2800ドルには下記費用を含めなければいけないというルールです。ミャンマー・ユニティは厳格に法令を遵守しますので2800ドル以外は一切徴収しません。

  1. 日本に渡航する前に行う健康診断費(1回当たり女性約60米ドル/男性約55米ドル、健康診断は2回受診)
  2. パスポート申請費(1名当たり約20米ドル。パスポートを保有していない生徒のみ)
  3. 日本大使館でのビザ申請費(1名当たり約25米ドル
  4. スマートカード申請費(1名当たり約6米ドル)
  5. PCR検査(1名当たり約120米ドル。場合により半額本人負担)
  6. 授業料及びテキスト代金(1名当たり約35米ドル)

ミャンマー以外の国においても、それぞれの国で色々な規定があと思いますし、規定があいまいな場合も多いと思われます。例えば授業料とか何々料とかそういったものをどんどん加算していって、結局送り出し機関の意のままに膨大な金額を技能実習生に負担させることがまかり通ってしまっているのだと思います。

技能実習生の法外な費用負担の本当の原因

ではなぜ技能実習生は法外な高い手数料を支払わされてきたのでしょうか?その本当の原因は何でしょうか?

それは、送り出し機関が監理団体などからのキックバックや過度な接待の要求があること、また過度な要求がなくても、送り出し機関自らがもっとオーダーを取るために、監理団体や受け入れ企業に対して接待やキックバックを提案する場合もあります。

そのような費用が発生することで、技能実習生からさらに徴収をしないと送り出し事業の利益が出なくなってしまう、または赤字になってしまう。だから技能実習生に過大な負担を背負わさなければならないというところがあります。

つまり、送り出し機関自身から過度な接待やキックバックの提案をすること自体が、結局は送り出し機関を苦しめることになるのです。そして結果、結局は技能実習生の負担が増えてしまうということに繋がって悪循環に陥ってしまっています。

過度な技能実習生の借金は失踪増大の原因は?

技能実習生に過度な借金を背負わせる送り出し機関は、技能実習生がその借金をどれぐらいの期間で返済できると考えているのでしょうか?技能実習生の法外な費用負担という歪んだ構造に対する自制心はないのでしょうか?技能実習生という一人の人生に対して、どこまで真剣に考えているのでしょうか?

高い手数料を払い、過度な借金を背負って日本に行く技能実習生に対して、実際とは程遠い収入が日本で得られると虚偽の説明をし、1ヶ月で10万円も借金返済できると信じて来日した技能実習生もいます。
しかし現実に手取り給与から生活費を差し引いて1ヶ月10万円残すというのはかなり難しいことです。1ヶ月で10万円返せると信じて来日したが、実際は6万円しか返せない。
仮に虚偽の説明ではなかったとしても、天候や景気などの理由で、実際は想定していた収入と違うということもありますし、会社での仕事が思っていたよりも大変で休みを取るなど技能実習生にもいろいろな事情が発生します。

そういう時に限って、同国人の悪いブローカーからの甘い誘いが来るのです。悪徳ブローカーでないとしても、自分の知っている友達や知り合いがもっと良い生活をしている、その子が羨ましいと思ったりすると、途端に仕事場から逃げ出したくなるのです。今の自分の状況と、ブローカーや知り合いの情報を比較して、他人の芝生が青く見えてしまうわけです。
もちろん、技能実習生が高い手数料を払いすぎているから失踪するといったケースもありますが、それ以外の原因で失踪するケースもあるのです。

技能実習生の失踪が社会問題に。防止する方法はないのか?

昨今技能実習生の失踪が社会問題化しています。技能実習生失踪の一番の原因は背負わされた膨大な借金です。失踪率が高くなると、送り出し機関のみならず、監理団体も受け入れ企業も様々な罰を受けます。やはり、送り出し機関が受け取る手数料は妥当な金額でなければなりません。

我々含めて送り出し機関は、今一度正しい送り出し事業をやっていくこと、初心に帰って何が技能実習生のためになるかを考える必要があると考えます。

技能実習生に過度な負担をさせない仕組みを作れないか?

技能実習生に過度な負担をさせないための仕組みを作れないかというご質問もいただいておりますが、先ほど申し上げましたように技能実習生の負担がゼロであれば、またそれはそれで問題も起きてしまいますので、その国の人々の生活や収入、手数料の規定などを踏まえて、各国の送り出し機関さんがどういうところが妥当なのか判断されて、運営をしていくべきと思います。

送り出し機関の日本語教育はどうあるべきか

日本人講師による、ネイティブな日本語の発音・表現方法を学ぶ生きた日本語の習得
日本の文化・風習を学び、日本での生活に必要なマナーを習得日本での生活に対応する準備

モチベーションが上がる日本語教育

日本に行く技能実習生は、日本に日本語を勉強しに行くのが目的ではありません。日本に実習に(働きに)行くわけですので、やはり大事なのはコミュニケーション能力・会話能力だと我々は考えております。

もちろん読み書きすること、漢字を勉強すること、漢字を理解することも重要ですけれども、それよりもコミュニケーションがとれることが一番重要だと思います。

特に日本の現場の方とか工場や会社、地域によってその話し方や方言がいろいろです。そういった人たちと、うまく会話のキャッチボールができるように会話教育に力を入れてやっていくべきではないかと思います。

我々送り出し機関が技能実習生に教える場合ですが、本人の日本語力がどれだけ伸びていくか、これは本人たちの頑張り次第ではありますが、モチベーション・やる気の出る授業を行うことが一番技能実習生の日本語力が伸びると思っております。

つまり少しでも本人たちのやる気が出る授業、興味が沸く授業、そしてワクワクするような授業をどういうふうに工夫してやっていくかが大切だと思います。つまらない授業だと出席しているだけで、興味がわかず吸収できないと思いますので、我々も含め、送り出し機関さんはモチベーションアップする、やる気が出る授業をどうやって工夫していくかっていうところが今後の課題だと思います。

日本語以外の教育の重要性

日本語以外の教育も大変重要だと思います。
例えば掃除の仕方、ゴミの出し方、働くために何が必要か、時間を守ることや報・連・相など色々あると思います。国によっても事情が異なるとは思いますが、ミャンマーの場合は学校で性教育等を受けておりませんので、性教育についても重要と考え、我々も授業に取り入れております。
日本語力はとても重要です。しかし我々が日本語だけできればいいとは考えておりません。日本語以外にもとても大切なものがたくさんありますので、各送り出し機関様が工夫をしてもっともっと技能実習生のことを考えて、教えていくべきかと思います。

手取り給与計算の教育の重要性

給料の計算は重要です。
ミャンマーでは一般的に給与控除という習慣がありません。給与支給額を全額本人が受け取り、税金などは本人が納付するというシステムが未だに多数派です。一方、日本では税金を含めて、色々と給与支給額から控除されるものがあり、ミャンマーの事情とかなり異なりますので、できる限りの情報を与えて理解させています。日本に行ってから「給与が減らされた」とか「話が違う」、「騙された」などと思われないよう、問題発生を未然に防ぐことが重要だと思います。

劣等生にもフォーカスした教育の重要性

技能実習生も人間ですので優等生もいるし、劣等生もいます。できない子も決してサボっているわけではありません。頑張っていないわけでもありせん。そのような個人個人の能力、多様性に対してフォーカスできる環境、学校作りっていうのも大切だと思います。
できる子に関してはもっともっとできるようにするべきだと思います。我々の場合は各クラスに担任の先生がおりまして、そのクラスに15~18名ほどの生徒がいるのですが、やはり中にできる子もできない子もいます。その中で、できない子については個別に宿題を出すなどしております。

できる子に関してはもっと伸びるように、何か新たな課題を出すなど工夫して、褒めつつ、でも「頑張って欲しい」という気持ちも伝えつつ、「やらなきゃいけないよ」っていう危機感も伝えながら、個人にフォーカスしていく環境があるといいと思います。

介護技能実習生への日本語教育

介護技能実習生は日本の技能実習法の規定で日本語能力試験(JLPT)N4の取得が必須ですので、どうしてもN4を取得するまでは「試験に合格するための授業」になってしまいます。こちらは避けられないと思っております。
しかし、介護職の日本語教育はコミュニケーション力を高めるがとても大切です。ですから、N4を合格した後は利用者様・介護施設の同僚との会話能力をどれだけ高められるか、そういった授業をどうやって展開できるか、そこが重要になってくると考えております。

将来日本に行ってからN2を取得し、介護福祉士を目指したい技能実習生はたくさんいます。また介護福祉士が目指せる能力とモチベーションがある技能実習生もたくさんいます。彼女たちに対して、ミャンマーにいる間に自分の素晴らしい可能性に気づいていただけるような教育をしていくことが今後重要になってくると考えております。

送り出し機関の情報開示はどこまでガラス張りであるべきか?

ガラス張り経営の必要性

私の意見ですけれども、やはり透明性がある運営と管理方法をお客様に示すべきだと思います。情報もできる限り開示すべきだと思います。

送り出し機関が必要以上に内情を隠したり、透明性がない運営をしておりますと、いつかそれが大きな問題となって返ってくると思います。
送り出し機関としての理念を持ち、しっかり透明性ある運営をすることで、問題も早期に解決できると思いますし、送り出し機関の原因で受け入れ企業様や監理団体様に迷惑をかけることも避けられると思います。
ましては技能実習生が後からとんでもない問題を起こすようなことがないようにするためにも、やはり透明性のある運営と管理を徹底し、できる限りの情報を開示していくべきだと考えております。
私達は特に技能実習生の生活態度や教育に問題があった等のよくない情報こそ、早く開示し、偽りの報告をせずに、悪い出来事も真実のまま報告しています。そして発生した問題に対する対処を重要視し、誠意をもって対応することが大切だと考えています。

タイムリーかつスピードのある対応の必要性

よくお客様から言われるのは、スピードを持ってタイムリーに対応してほしいという要望です。どこの送り出し機関さんも日本語ができる窓口の方がいて、その方たちがボスに聞いて対応したりと、色々とやっていると思います。
それぞれの送り出し機関が、顧客対応に関するルールや仕組みを作って、どのようにスピードを持ってタイムリーに回答していくか。こちらも情報開示とともに必要なところだと考えます。

技能実習候補者には、受け入れ企業の情報をどの程度まで詳しく説明すべきか?

技能実習生には受け入れ企業の詳細な情報を伝えるべき

技能実習候補者には受け入れ企業の情報をどの程度まで詳しく説明すべきかをお話します。送り出し機関の立場からの私の意見ですが、できるだけ受け入れ企業の詳細な情報を伝えるべきだと思います。

これにはいくつか理由がありますが、まずミスマッチ防止し、それによる失踪を防止するためです。求人をいただいたときはすごくいい会社に見え、写真では寮もすごく綺麗だった。でも実際に行ってみたら、寮はすごくボロボロだったなどということが現実にがよく起こります。

人間の心理として「こんなはずじゃなかった」と一度でも思ってしまうと、信頼関係は崩れてしまい、そこから失踪に繋がることがあります。失踪という事実自体も問題ですが、その失踪したことによって技能実習生の人生が破滅してまったり、人生計画が崩れてしまうことが最も良くないことです。こうしたミスマッチを防ぐためにも、技能実習生にはできるだけ受け入れ企業の詳細な情報を伝えるべきだと思います。

受け入れ企業と技能実習生の信頼関係の構築

また、受け入れ企業様と技能実習生の間の信頼関係を築いていただきたいと思っております。信頼関係は1日で築けるものではございません。一番初めに企業様にしっかりと企業と仕事に関する情報をいただき、技能実習生に丁寧に説明し理解してもらうことが肝心だと思います。

そしてその後「この企業で働きたい」「この企業の面接で選んでいただいた。だから僕は頑張って勉強して絶対日本に行って頑張るんだ」と技能実習生に思ってもらうのです。このような信頼関係を築くためにも、企業様は自社の良いところも悪いところも技能実習生に全部説明してほしいと思います。例えば寮から会社までなり遠いとか、そのような良くない情報こそ、正直に伝えていただきたいです。

もちろん職場が近い方が実際には便利ですが、「寮が遠くてもうちの会社はこんないいところがありますよ」というよい部分のアピールも重要です。しかし包み隠すことなく寮や現場などについて現状のありのままを説明いただくのが一番だと考えております。

技能実習生に対して、企業様にその企業様のアピールポイントも含めて、プレゼンのような形で企業様情報を詳しく紹介いただき、技能実習生の心を掴んでいただいて、技能実習生がよりモチベーション高く勉強して頑張れるような良い関係が築けるとベストだと思っております。

人材獲得競争が激化し、技能実習生が仕事を選ぶ時代に

あとは、以前と比べて技能実習生が仕事を選ぶ時代になってきていると感じております。技能実習生が日本を選ばずに、韓国とか台湾とか他の国に行くという選択肢もあります。
まず日本に行きたいと思ってもらうことが必要ですが、幸いミャンマー人技能実習生は自分がやりたい職種に過度にこだわったり、地方は絶対いやだと考える人は多くありません。他国では「都会じゃないといやだ」と考える人が多いようですが、そのような方はミャンマーにあまりいないとは思います。

しかし、ミャンマー人技能実習生においても、自分がやりたい職種・やりたくない職種を強く持っている人もいます。アジア最貧国のミャンマーであってもそうですから、他のアジアの国々においては、すでに技能実習生が仕事を選ぶ時代に入ってきていると認識をしております。

最終的には技能実習生がやる気を持って勉強し、モチベーションを高く保ち、どれだけ頑張れるかということころが鍵になってくると思います。ありのままの企業様の情報を詳細にいただいて、アピールポイント等も技能実習生にプレゼンしていただければうまくいくのではないかと考えております。

送り出し機関の組織作りとチームワークの大切さ

理念浸透の重要性

送り出し機関さんもいろいろあると思いますが、スタッフ全員が同じ理念や気持ちで仕事をしているかという点はすごく重要ではないかと思います。

以前は私もそこまで深く考えておりませんでした。とりあえず各スタッフが仕事の中で自分たちの役割責任を果たしていただくことが重要だと思っておりました。しかし最近になって、やはりスタッフの皆さんが同じ理念、同じ気持ちで誇りを持って仕事をしているかどうか、ここがその送り出し機関各社のカラーに繋がると思います。

何のために働くか

人間は「お金を儲けたい」「何かを成し遂げたい」など、様々な目標ややりたいことがあると思います。しかし、どんなときに一番心が満たされるかと考えると、誰かのために役に立つことをしたとか、誰かのために何かをして感謝されたとか、そういったときに一番心が満たされるのではないかなと思います。

我々ミャンマー・ユニティの組織のことになりますが、やはり理念の軸はいつも「技能実習生のため」でありたいと思っております。実際に我々の理念は技能実習生のため、企業様のため、そしてスタッフ自身のためといったことを掲げておりますが、日々仕事をしていく中で「果たしてこれは技能実習生のためになるのか、ならないのか」この判断の軸がずれてはいけないと思います。

チームづくりの重要性

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個人個人においてもそうですが、各チームに対しても同様です。各チームも自分のためではなくて、技能実習生のため、チームのため、チームで自分たちが与えられた仕事をきちんと成し遂げるため、そういった考えも重要と思います。

チーム作りはマネージャーの努力によるところも多いと思いますが、やはり会社としてしっかりした土台・理念があってこそ、それを浸透できるマネージャーが現れ、それについていく部下がいて、初めて良い組織ができてくると思います。

なぜ私がこのような話をさせていただいたかというと、弊社ミャンマー・ユニティのことになりますけれども、2013年から送り出しを始めているので、後発企業です。
しかし2019年と2020年に日本への送り出し実績がミャンマーで一番多い送り出し機関になることができました。これはもちろん日本の監理団体様や受け入れ企業様等のご支援等があってのことです。

2019年に初めてミャンマーで一番日本に送り出す実績が多い送り出し機関になった時に、ある人から「ミャンマー・ユニティさんはNo.1になって何が変わりましたか」という質問を受けました。

何が変わったか考えてみました。答えは「我々のスタッフが一番変わった」ことです。スタッフがより誇りを持ってこの仕事を行い、技能実習生のため、企業様のために少しでもお役に立とうという認識を持って、より誇りを持って仕事をしてくれるようになりました。そこが一番変わったと感じております。

ですから我々も含め、送り出し機関として確固たる理念を持って経営し、スタッフが同じ気持ちで向かって仕事をしていくこと、それが送り出し機関の一つの重要なポイントではないかと思いまして、このようなお話をさせていただきました。

今後の送り出し機関はどうあるべきか?

まず法令遵守が必要

悪質な送り出し機関があるとか、手数料を取り過ぎだとか、技能実習制度に対する批判が世間では渦巻いています。ベトナムや他の国にも言えることですが、やはり送り出し機関が透明性を持った運営をして、規定に沿って運営していくことが必須だと思います。
守るべきルールに反していると必ずそれは送り出し機関自身に返ってきます。ですから規定に従うことは絶対に必要だと思います。

コロナ禍におけるオンライン面接の質向上

現在、コロナ禍で監理団体様や受け入れ企業様が現地に面接に来ていただくことがなかなか難しい中、リアル面接に匹敵するオンライン面接をどこまでできるかなど、送り出し機関さんも色々模索されていると思います。

これは本当に重要な課題です。我々もそうですが、面接の前になるべくその技能実習生の自己紹介動画や家族の紹介動画など、技能実習生がアピールしたい部分を録画し、それをテロップをつけたり字幕をつけたりして編集し、事前にYouTubeのリンクとしてお客様にお渡しして、それをお客様に見ていただいた上で面接をしていただくこともしております。

動画による家族紹介などをもっと取り入れて、現地面接に来ていただくよりも優れたオンライン面接を実現すること。企業様がしっかり技能実習生を個人として見て選んでいただけるような環境を作っていく必要と思います。

送り出し機関としてDX化の推進

送り出し機関としてDX化(デジタルトランスフォーメーション)の推進も重要です。
技能実習生の情報をIT化・システム化して、いつでも誰でもどこでも、その情報がすぐに必要なときに必要な方にお渡しできるような仕組み作りも重要だと思います。

また教育をさらにDX化・システム化するのも重要だと思います。ただ、教育についてはシステム化すればそれで終わりではありません。学ぶ本人たちのモチベーションを維持し高めることもとても重要です。これは簡単なことではありませんが、VR教育(バーチャルリアリティ教育)を取り入れることなど、様々な工夫をしていく必要があると思います。

mu_image3 日本経済新聞の記事でミャンマー・ユニティの介護VR教育プロジェクトが取り上げられました

面接候補者の日本語力のレベルアップ

面接時に日本語がまともに話せないのは、一般的な技能実習生の面接においては当たり前かもしれません
しかし監理団体様や受け入れ企業様、特に介護事業者様の要求レベルは「もっと日本語が話せる人が欲しい」というご意見です。

我々は甘えてはならないと考えております。面接時にすでにN5を持っていること。できればN4を持っていること。日本入国までに日本語レベルをさらにアップさせ、出国時にはすでにN3を取得している・・・そのような質の高い日本語教育を送り出し機関がどれだけできるかも求められていると思います。

要望に対する柔軟な対応

監理団体様や受け入れ企業様からは様々な要望をいただきます。
本当に技能実習生のためを思って要望いただくことですので、ご要望にどれだけ柔軟に対応できる送り出し機関かもポイントだと思います。

当然監理団体様が間に入りますけども、我々送り出し機関は「技能実習生と受け入れ企業様の信頼関係をどのように構築できか」をお手伝いする役割があります。一方的に受け入れ企業様からの要望に応えるだけではなく、技能実習生から受け入れ企業様に対する様々な質問や、お手紙や「頑張っている姿を見てほしい」などの意見も踏まえて、信頼関係を構築できる架け橋を送り出し機関としてはやっていくべきではないかと思います。

送り出し機関は大小ではない

先ほど申し上げましたように、ミャンマー・ユニティは2019年と2020年においてミャンマーから日本に送り出す一番大きい送り出し機関になりましたが、送り出し機関は大きい小さいは関係ないと思っております。

どれだけ人数を送ったから偉いとか、そういうことではなくて、小さな送り出し機関さんでも、それぞれいろんなことを工夫してやられている送り出し機関さんもあると思います。

法令を遵守し、透明性を持った運営をする中で、それぞれの送り出し機関さんにいいところ、とても素晴らしいところ、工夫されているところがあると思います。一方で改善すべきところもあると思います。規模の大小ではないのです。

我々もミャンマーで一番人数を送り出したからといって、自分たちが一番すごいとは思っておらず、それそれぞれのチームも含めてまだまだ改善すべきところはたくさんあります。引き続き、日々創意工夫をしながら頑張っていかなければならないと思っております。

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失踪問題の解決

あとは、送り出し機関側に失踪の解決方法があるかについてです。
もちろん失踪の原因はいくつかあります。

まずはすでにお話したように、送り出し機関の失踪対策の最大のポイントは過大な金額を技能実習生から徴収しないことです。
さらに、日本でのサポートを充実させることです。送り出し機関自身が技能実習生の心のケアを綿密に行い、心の隙間が生じて悪徳ブローカーに技能実習生がそそのかされることを防ぐことも重要です。何か仕事や会社や職場環境に不満があると、つい心にスキができ、甘い話に乗って、失踪の原因となってしまいます。

もちろん、ブローカーによる計画的かつ悪質な失踪勧誘については、企業様が被害者ということもあります。
やはりブローカーの存在や、羨ましく見える「他の職業」の情報がSNSなどで錯綜する中で、技能実習生たちへのさらなるサポートも必要ですし、手厚い指導も必要だと思います。

技能実習生が失踪しないよう、また失踪して人生を台無しにしてしまわないように、また受け入れ企業様にもご迷惑をかけないように、送り出し機関としてできることを一つずつやっていく必要があると改めて思っております。

まとめ ~送り出し機関を見分ける方法~

送り出し機関の選び方、見分ける方法について、いろいろとお話ししてまいりました。
送り出し機関にもそれぞれ特徴がございます。送り出し国の特徴もございます。今後、特定技能制度が普及し、送り出し機関の使命はさらに多様化していくことと思います。技術・人文知識・国際業務や特定活動など、他の在留資格も増えてまいります。移民制度もいつかスタートすることでしょう。そのような状況の中で、受け入れ企業様・監理団体様、そして人材紹介会社様にとっての選択肢はさらに広がっていくと思われます。

我々も含めて、各送り出し機関さんが自社の強みを生かして、もっと差別化をしていくこと、「誰にも負けないことがあるんです」みたいな抜け出し方もありますし、万全に全てにこなしていく送り出し機関さんもあると思います。またそれぞれ国で、国民性や文化が反映された素晴らしい運営をされているところもあると思います。

そんな中で、我々も含めて各送り出し機関さんがより一層自社の強みをもっと出し、切磋琢磨してより良い人材をいろんな国から日本に送って、日本の受け入れ企業様等の助けになるようにすること。日本の受け入れ企業様が、技能実習生を受け入れてよかった、もうこの人たちがいないと自分たちの企業が成り立たないと感じていただいて、技能実習制度がこれからも長く続く制度になっていければ考えております。

少し長くなりましたけど、私からのお話は以上とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。

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