失踪を出す方が技能検定の不合格より優良要件の減点が少ないのではないか
意見交換会でのご意見・ご要望
現在、当組合では、技能検定「随時3級」の実技試験での(再試験も含む)不合格も頻発しており、こちらは1度の試験で2-3割から半数近くの不合格者が発生することも珍しくありません。基礎級では合格率が75%未満の場合は-20点、随時3級では合格率が50%未満の場合は-40 点ですが、現実的にはこの2項目で合計の配点がプラス40点ほど得られないと「優良要件」の適合は「絶望的」となります。
ちなみに、この合格率には途中帰国や行方不明となった技能実習生は含めませんので、「これまでに失踪が多発しているが、残留した技能実習生のほとんど全員が基礎級・随時3級に合格している」実習実施者は「優良要件」の適合が認められ、「これまで失踪や途中帰国は一人もいないが、随時3級の実技試験は5割程度が不合格だった」実習実施者は「優良要件」の適合が認められないことになります(「途中帰国」は減点なし、「行方不明」は仮に10人発生していても-10点の減点だけで済みます)。つまり、「技能実習生が不合格になるくらいなら、それまでに失踪してくれた方が実習実施者にとって有利だ」ということになります。こうなると制度設計上の瑕疵であると言えるのではないでしょうか。
最後に現場の状況をお伝え致します。前出のとおり、近年の技能実習生の急激な増加や随時3級の義務化に伴い、各地の職能協会は能力をはるかに超えた対応を迫られ、現場の担当職員や検定委員の方々に相当な負担を強いているという実情があります。そうした過度なストレスからか、担当職員・検定委員と実習実施者・監理団体の担当者間でトラブルが発生するケースも散見しており、中には「暴言」と言われても仕方がない言葉を発せられる方もいます。先日も千葉県で、技能実習生や実習実施者の担当者に向かって大声で「オマエラ○○○○!」と罵声を浴びせ、他の実習実施者の担当者と言い争いのトラブルになっている検定委員を目撃したところです。現場では既に「限界」となっているように見受けられます。
職業能力開発促進法に基づく「技能検定」の本来の趣旨は、同法第3条の2第5項に規定されるとおり、「(中略)実務の経験を通じて習得された職業に必要な技能及びこれに関する知識についての評価が適正になされるように行われ(中略)」、つまり「受検する者の技能及び知識に対する適正な評価」です。そのため、一般の日本人の受検者の場合では、仮に不合格となった場合は、その受検者は相当の期間を費やして自らの技能を高めてから、再度受検すれば良いのであって、まさに「何度でもチャレンジできる」検定制度なのです。一方、技能実習生の場合では、技能検定の受検は「人生で2回限りの権利」となり、それに不合格となれば、1年満了での帰国を余儀なくされ、当該技能実習生の「人生計画」を大きく狂わせ、場合によっては失踪及び不法滞在・不法就労を誘発して、結果として「技能実習生を犯罪者たらしめる」ことに繋がるのです。
日本政府からの回答
失踪や強制帰国に関して、特に失踪者が出た場合は困難時届を出していただくと、確認の上、必要に応じて検査もさせていただく形になっています。
また、優良要件の仕組みの中でも大幅に減点(最大でマイナス50点)することになっています。それから失踪者を出した場合の検査で、もし帰責性がある場合には技能実習法令の何らかの違反がある可能性もあります。その場合の一番厳しい処分では、許可取り消し、認定取り消しもあることをご理解いただければと思います。