外国人介護職|離職を防止し定着してもらう方法とは?離職理由は?
せっかく良い外国人人材を確保したのに転職されてしまった、介護職の人材に定着してもらうにはどうしたらいいのかという悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事では離職理由と離職率を参考にしながら、介護人材定着のポイント、方法について詳しく解説しています。
目次
1.介護職の離職率と理由
外国人介護職に限定した離職率や離職理由については、まだデータがありません。
介護職全体の調査結果は、下記のようになっています。
離職率15.4%(平成30年10月〜令和元年9月まで)
離職理由
1位 職場の人間関係 23.9%
2位 結婚・出産・妊娠・育児のため 20.5%、
3位 職場の理念や運営のあり方に不満があった 18.6%
離職率15.4%に関しては、平成30年度の国内労働者全体の離職率は14.6%ですので、特別高いわけではありません。
介護業界はすでに人手が足りないことから、どうしても長時間の勤務になってしまったり、体力的な負担が大きかったりするので、
「すぐに辞めてしまう人が多い」という印象が先行している面があるかもしれません。
離職理由は、1位と3位が人間関係や理念・運営のあり方で、合計すると半数近いです。事情は様々でしょうが、共通していえることは、
個々の職場が働きにくい環境だったということです。責任者や管理者が公平であり、平等な態度ですべての勤務者に臨むという姿勢なら、
風通しの良い環境が生まれます。
介護業界は、年齢も、10代から70代まで幅広く、未経験者からベテラン、正社員、パート、派遣等立場も、資格も異なるさまざまな人が働いています。
こういった中で、
不公平、不公正感ほど勤務者の労働意欲をそぐものはありません。待遇面はもちろん、ポジションの決め方、シフトや仕事の内容に至るまで公正かつ公平で、
特定の人に負担がかかっていないか、常にチェック配慮があれば、性格の合わない人がいたとしても、離職まで至らなかったのではないでしょうか。
公平、平等な職場環境は、外国人介護職にとっても、大切なことです。
2位の結婚・出産・育児のためという理由から、産休・育休休暇が取りづらい職場であったことがうかがえます。
そういった職場では、急な休みやシフト変更も申し出にくいことが多く、仕事と家庭の両立が難しいでしょう。
背景には、慢性的な人手不足という問題が横たわっていますので、外国人材の受け入れ制度を導入し、緩和しないことには根本的な解決には至らないと考えられます。
2.転職可能な在留資格
では、人出不足の解消の鍵となる外国人介護士に、定着してもらい人出不足を解消して行くにはどうしたらいいのでしょうか。その前に、そもそも彼らは、在留資格認定許可の身元引受先である、事業所を離職することが可能なのでしょうか。 日本で、外国人人材を介護士とし雇用するには、下記の4つの方法があります。
- EPA(経済協力協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用
- 日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」を持つ外国人の雇用
- 技能実習制度を活用した外国人(技能実習生)の雇用
- 在留資格「特定技能1号」を持つ外国人の雇用
この中で、同じ業界なら転職が可能なのは、②の在留資格介護を持つ介護士と④の特定技能の介護士です。 ①のEPAと③の技能実習制度を活用した介護士の場合は、離職すれば在留許可を失いますから、帰国しなければなりません。 続いて、転職可能な上記の介護士に定着してもらう方法を考えていきたいと思います。
3.在留資格介護の外国人介護士
在留資格介護を持つ外国人は、専門学校を出ているか、実務経験が3年以上で、介護福祉士を取得した人たちです。 すでに、住まい等生活の基盤もしっかりしており、日本語も日本の生活にもある程度不自由していないはずです。 また、仕事の面でも知識や技術があり、専門職として判断、思考できる力を持っています。 異国の地でここまでの力を養ったということを評価すべきだと思います。 彼らを日本人介護福祉士と同等に待遇することは、もちろんですが、今後外国人材が増えることも見据えて、リーダー候補生としての育成をおすすめします。 育成によって能力やポジションが上がったら、それに応じた報酬を与えることも大切です。 また、定期的な面談やミーティングなどにより、常によいコミュニケーションを取っていくとともに、 彼らが直面している問題や不安をサポートしていく姿勢も必要です。
4.特定技能介護の外国人介護士
特定技能介護の外国人介護士というのは、下記の試験に合格した人たちです。
- 介護技能評価試験
- 介護日本語評価試験
- 日本語能力試験N4レベル、または国際交流基金日本語基礎テストA2レベル
技能実習2号の修了者、EPA介護福祉士候補者、介護福祉士養成課程を修了者は、試験の免除が認められます。 2021年3月末時点では、介護分野における特定技能外国人は1705人です。内訳は1590人が試験ルート、115人がEPA候補者ルートです。
EPA候補者から、特定技能介護に在留資格を変更した介護士に関しては、 4年間の実務経験と、介護福祉士国家試験で5割以上の得点が求められますので、在留資格介護の外国人介護福祉士の方同様、 即戦力として、知識も経験も十分積んであると考えられます。また、今後増えるであろう技能実習介護から特定技能に切り替える介護士も同じように考えて差し支えないでしょう。 彼らに定着してもらうには、在留資格介護の方たち同様、リーダーとしての育成、能力に応じたポジションや報酬、 それに定期的な面談やミーティングなどによる密なコミュニケーションが大切です。
試験ルートの介護士に関しては、状況が異なります。技能実習3年修了の人材と介護技能が同等であるとされ、 就労と同時に配置基準に算定できますし、報酬も、同じ業務をしている日本人労働者と同等額以上を支払うことが法で定められていますから、事業所は即戦力と考えがちです。 しかし、試験に実技はありません。介護技能評価試験いうのも、実技試験ではなく、文章問題です。介助技術がなくても合格可能です。 国によっては、技能実習生介護の送り出し機関が、特定技能介護の斡旋を行っていますから、技能実習生来日時程度の技能や知識はあるかもしれません。 しかし、介護施設での実務経験は問わないので、おそらく介護の必要な老人をケアするのは初めてでしょう。 日本語力についていえば、日本語能力試験N4レベルというのは、ゆっくりわかりやすい日本語を使えばわかるレベルです。 日常会話に不自由しないレベルまで行ってはいません。お年寄りとのコミュニケーションが円滑に行える日本語力はないと思われます。 業務指示や記録の読み書きもスムーズに行えるまで、時間を要するでしょう。
とは言え、彼らは介護士になる強い意志を持ち、基礎的な介護の知識や技能は学んでいるのですから、 現場で育成することにより、有用な人材に育っていくことは間違えありません。 受け入れ側には、日本の生活や施設への順応をサポートしていくことが求められます。 そのためには、技能実習生の受け入れ時のように、日本人職員が一体となって介護にあたることと、 介護技術や日本語の習得の機会の提供をすることが必要になります。初めから、高い専門性を要求せず、 段階を追って育成して行くことや、初めは通訳を交えることも視野に入れ、コミュニケーションを密にすることが定着につながると思います。
5.まとめ
介護業界は、もはや外国人人材の活用なくして、慢性的な人材不足を解消できません。 人材不足が続く限り、労働環境が十分に整わず、離職率が改善しないという悪循環が続きます。 せっかく良い外国人人材を確保しても、転職されてしまっては意味がありません。 現在のネット社会は、どんな地方にいても、ネットワークでつながり、どこの職場が働きやすく給与もいいといった情報が簡単に手に入ります。 同じ国の先輩がいて、生活も安心で働きやすければ、退職や他の事業所や施設への転職を考えることは仕方がないことでしょう。 では、定着してもらうには、どうすればいいのか。介護という大変なことが多い業界ですが、より魅力的な職場になるしかないと思います。 報酬や休日を増やす、キャリアアップを支援する等、具体的な対策とともに、1人1人の生活や人間性が尊重できるように面談やミーティングの場をもうけ、 コミュニケーションを密にすることも大切です。 今、介護はチームでケアにあたるようになってきています。文化や言葉育ってきた背景が全く異なる人たちと理解を深め、 チームワークを育てることができれば、結果的に転職は防げるのではないでしょうか。
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