外国人介護職|採用のコツと成功事例は?

外国人介護職員の受入れには現在4つの在留資格があります。この記事ではそれぞれの在留資格で受け入れた場合の成功事例、失敗事例、現状の動き、採用のコツをお伝えいたします。

外国人介護職|採用のコツと成功事例は?

目次

  1. 成功事例、失敗事例
    1. 一番多い技能実習生
    2. EPAの例
    3. 外国人介護職受入れの目的の明確化が必要
  2. 外国人介護職受入れが可能な4つの在留資格
    1. EPA(経済連携協定)に 基づく外国人介護福祉士候補者
    2. 在留資格「介護」
    3. 技能実習
    4. 特定技能1号「介護」
  3. 採用のコツ
    1. 自社の採用の目的をよく検討する
    2. 自社のキャパシティーの検討
    3. 受入れ調整機関の決定
    4. 就労希望者との面接
  4. まとめ

成功事例、失敗事例

外国人介護職の受け入れには、4つの方法がありますが、EPA外国人介護福祉士候補者以外は、まだ制度が始まったばかりです。新型コロナウイルスの影響で入国が遅れている外国人介護士も多く、5年10年と就労し、施設のかなめとなって働いてくれている人材は、まだこれからです。

一番多い技能実習生

外国人介護士の人数で最も多いのは技能実習生です。外国人介護士受入れが可能な4つの在留資格のうち、技能実習は一番ハードルが低く現実的なシステムです。
他の在留資格と比べてハードルが低い理由は、以下の通りです。

・介護施設の費用負担が少ない
・日本語要件が日本語能力試験(JLPT)N4でよい
・日本語能力試験(JLPT)以外の試験合格要件がない
・送り出し国が限られていない

結果として2020年3月時点で8,967人の介護技能実習生が日本に在留しています。技能実習生を採用した多くの介護事業者が順調に運用しており、ほとんどが成功事例と言えます。

EPAの例

EPAで来日し介護福祉士を取得、あるいは特定介護に切り替えて、継続して就労している人たち、こういった人たちはまさしく成功事例でしょう。
しかし、EPA人材の中には介護福祉士を取得しても帰国する人もいます。なぜでしょうか。実は、職場への不満のためといった受け入れ側との関係の問題ではなく、自国でいい仕事につける目途が立ったということが多いのです。
例えば、インドネシアでは看護大学を卒業し、日本語もできるようになった彼らは、まさしくエリートです。帰国後、通訳や外国人を対象にした病院で働くこともできます。このように国や地域によりますが、近年経済発展を遂げ、女性の活躍の場が広がったところでは、帰国の道を選ぶという選択も出てきています。 こういったケースは、はたして失敗事例でしょうか。もちろん、彼らの養成や職場での定着に税金も投入されたことや、事業所の教育に費やした時間や努力も鑑みれば、せっかく介護福祉士のレベルまで育てた上での帰国には、問題がないとは言えません。しかし、4年間職場に貢献し、日本側での育成によりキャリアアップして、母国へ帰ったのです。一口に失敗事例とは言えないのではないでしょうか。

外国人介護職受入れの目的の明確化が必要

まずは、自社の外国人材を受け入れる目的を認識する必要があります。ただ単に、人手不足を解消したいというだけでは、採用の時どんな制度を選べばいいか、どんな育成をしていけばいいかも、場当たり的であいまいになってしまいます。
一定期間一生懸命働いてくれたらいいのか、いずれは介護福祉士を取得して施設の中核をなす人材になってほしいのか、事前に事業所の現状と将来を見据えて考えておくことが大切です。
事業所によっては、毎年新しい実習生が入ってくるシステムを構築し、最長3年で帰国しても、成功していると言える場合もあります。また、3年就労の後、介護福祉士取得まで育成した介護士が、より条件の良い職場に転職されたら、失敗と言わざるを得ない場合もあると思います。

外国人介護職受入れが可能な4つの在留資格

外国人介護職員の受入れには、下記の4つの方法があります。

EPA(経済連携協定)に 基づく外国人介護福祉士候補者

フィリピン、インドネシア、ベトナムの3か国より、看護系学校の 卒業生または母国政府より介護士に認定されている者を受け入れています。介護福祉士取得後は、永続的な就労が可能です。取得できなかった場合も、一定の条件で「特定技能」に移行可能です。

在留資格「介護」

介護士を養成する専門学校を出るか、今後は技能実習や特定技能から移行した者になります。介護福祉士を持っています。永続的な就労が可能です。また、法人、事業所への要件は特にありません。

技能実習

技能実習生は送出国で同種の業務経験があるか、訓練を受けています。 実務要件等を満たせば、介護福祉士国家 試験受験可能です。技能実習での在留期間は最長5年ですが、 介護福祉士国家資格を取得すれば、在留資格を「介護」に変更し、永続的な就労可能です。 3年目まで修了すれ ば「特定技能」に必要な試験を免除されます。特定技能へ移行することにより、さらに5年就労できます。

【現状】

介護職種の技能実習計画の申請件 数は、令和 2 年 1 月末現在で 10,225 件と なっています。そのうち 8,652 件の認定が 出ておりますが、新型コロナウイルスの影響を受け、 来日が遅れています。

特定技能1号「介護」

介護技能評価試験・ 介護日本語評価試験(国内外で実施)に合格しなければなりません。また、国際交流基金日本語 基礎テストの合格、 またはJLPT(日本語能力試験) N4 以上の取得も求められます。特定技能1号の在留期間は最長5年ですが、介護福祉士国家資格を取得すれば、在留資格を「介護」に変更し、永続的な就労可能です。

【現状】

特定技能制度は平成 31 年 4 月から施行されました。令和 2 年 2 月末までに介護技能評価試験、 介護日本語評価試験の合格者数は、それぞれ 2,382 人、2,411 人となっており、 今後、特定技能 1 号の本格的な受入れが始まる見込みです。
※このほか、日本人配偶者などの「永住者」の在留資格をもつ外国人を受け入れる方法もあります。

採用のコツ

採用への道程を考えてみましょう。

自社の採用の目的をよく検討する

何のために、採用するのかということです。将来の人出不足を予想して、今から徐々に入れていきたいのか、現在すでに業務が回らないような状態で、できるだけ多くの即戦力がほしいのか、体力のある男性職員を増やしたいという場合もあるでしょう。また、一定期間の就労か、永続的な就労者を求めたいのかも考えなければなりません。

自社のキャパシティーの検討

自社が採用に必要な条件を満たしているか、入国後の法令で決まっている研修等に対応ができるのか検討する必要があります。情報収集や相談は、下記の窓口でできます。

制度 相談内容 相談先 電話番号
EPA EPAに基づく外国人介護福祉士候補者に関するあらゆる相談 JICWELS(公益社団法人 国際厚生事業団)受入支援部 03-6206-1138
在留資格「介 護」 介護福祉士を目指す留学生に関するあらゆる相談 公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会介護福祉士を目指す留学生ための相談支援センター 0120-07-8505
技能実習 技能実習生の雇用 OTIT(外国人技能実習機構) コールセンター 03-3453-8000
技能実習 技能実習生の雇用 JITCO(公益財団法人 国際人材 協力機構)実習支援部相談課 03-4306-1160
特定技能 介護分野における特定技 能外国人を初め外国人介 護人材に関するあらゆる 相談 JICWELS(公益社団法人 国際厚生事業団) 外国人介護人材支援部 0120-118-370 (フリーダイヤル)

受入れ調整機関の決定

技能実習生を受け入れるには、監理団体によるサポートが必要になります。監理団体は玉石混淆であり、信頼できる監理団体を見つけることがとても重要です。
まず、介護技能実習生を受け入れることができる監理団体かどうか確認が必要です。可能なら、優良な監理団体の基準に適合している一般監理事業の監理団体を選ぶことをお勧めします。また、監理団体の代表者から介護分野に参入した理由や経緯を聞き、介護への考え方など納得した上で選びましょう。 尚、基準に適合しているかどうかは、外国人技能実習機構のホームページで確認できます。

特定技能で外国人に就労してもらうには、原則として登録支援機関による支援サポートが必要になります。登録支援機関を選ぶ際にも、代表者から介護分野に参入した理由や経緯を聞き、介護への考え方など納得した上で選びましょう。また登録支援機関によって支援内容が異なりますので、その点の確認も重要になってきます。

就労希望者との面接

受入れ調整機関が決まると、いよいよ就労希望者との面接があります。以前は、熱心な事業所は現地に行き、送り出し機関がどんな方針で、どのような訓練をしているかも面接と合わせて見学していました。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、今後しばらくはオンラインでの面接にならざるを得ないでしょう。
どうして、介護の分野で働きたいのか、また自社を選んだ理由と、今までの経験やスキルをきくこと、こちらへの質問には誠実にこたえること、日本人に面接する際と何ら変わりはありませんが、彼らのモチベーションの高さや、外国で生活していく精神的タフさを見抜くには、定番の質問です。 肝心なことは、必ず相手国の言葉で聞き、回答してもらってください。なぜなら。彼らに、自分の覚悟や希望を伝えるだけの日本語力はまだありません。日本語力を知りたいのなら、趣味や家族に関する質問などソフトな質問に限定したほうがいいです。
また、通訳は受け入れ企業側で用意することが理想です。なぜなら送り出し側が通訳を提供した場合、面接に合格させるために本人が話していることと違う通訳をされる場合が少なくないからです。しかし自社で通訳の手配が難しい場合は信頼できる送り出し機関を選ぶことが重要です。
実際は短い時間の面接で判断するのは難しく、もうすでに訓練を積んでいることも考慮し、紹介された者全員合格ということになりがちですが、明るさ、まじめさ、精神的なタフさをしっかり見るべきだと思います。

★まとめ

働くとは、どういうことでしょうか。
お金を稼ぐために、我慢することでしょうか。それは決して間違いではありません。ですが、そう考えている事業者は外国人介護職員を採用してもうまくいくことはないでしょう。
彼らは自国にいい仕事がなく、日本円での収入が大きな魅力だというだけで、介護の道を選んだのではありません。理由を調べてみると、もともと医療や介護の分野に興味があった人達が多いです。また、祖父母や両親の介護を考えたり、自分の国の将来の介護需要を見越したりして、日本で経験を積みたいと考えた人達もいます。いずれも、日本は介護における先進国だと考えて来日してきます。
単なる一定期間の研修で終わらせるのではなく、介護の技術や能力を高めたい、介護業界全体のシステムを学びたいなど、本人の希望を聞き入れ、事例検討会や発表会などを通して、職場にいる限り向上していけるような体制が望まれます。
また、具体的な成功事例を見ると、就労条件の良さと安心感が自分の職場にはあるから、今後も働きたいという言葉をよく耳にします。安心感というのは、外国人職員がすでに何人か働いていることが大きいようです。就労条件のよさは、給料、休日の取りやすさ、労働時間のことです。非常に厳しい現状があると思いますが、この点を改善しないと永続的な雇用を考えている場合の成功事例は生まれにくいでしょう。
それから、利用者さんや他の職員とのコミュニケーションの問題です。これには日本語能力向上や認知症の理解を深めるなどの育成支援だけでなく、相談できる体制を整えることが大切です。職員の話をよく聞いて、どうしたらいいのか一緒に考える姿勢こそが信頼関係を築き、この職場でずっとやっていこうとういう成功事例につながる道なのではないかと思われます。

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