【介護】技能実習と特定技能1号の違いーメリット・デメリット
介護職種の技能実習と特定技能1号において制度の違いとメリットとデメリットを徹底解説。両者の特徴を比較しながら、ケース別でどちらの在留資格を選ぶのがよいかや、おすすめなどをご案内いたします。これから外国人の雇用を検討している事業者様は必見の内容です。
目次
介護職種において技能実習と特定技能1号とはどちらがよいか
技能実習と特定技能1号はどちらがよいかとよく聞かれます。
結論から申し上げますと、技能実習の方が導入メリットが高いと考えられますが、ケースバイケースでその判断は分かれるようです。
なぜなら、介護事業者様の個別の事情により、『技能実習』と『特定技能1号』のメリット・デメリットの感じ方が異なるためです。
ここではその介護職種における、それぞれの在留資格の違い(どちらがよいか?、メリット・デメリット)について、下記の関連ページをもとに解説します。
【介護職種】技能実習と特定技能1号の比較
介護職種における技能実習と特定技能1号を各項目で比較した表です。
技能実習のメリット(特定技能のデメリット)
転職ができないので雇用が安定する
まず、技能実習のメリット1つ目は「転職がない」ということです。
技能実習は、日本政府(外国人技能実習機構)が、特定の事業者(事業所)において、特定の技術を習得する目的で外国人に日本在留を許可するというスタイルです。
ですから、仕事の種類(作業)も就業場所も自由に変えることができません。
つまり、転職という概念がないのです。
事業者様の一番の悩みは、離職率が高いことです。
採用しても、採用しても、辞められてしまう。その繰り返しに困り果てている事業者は少なくありません。
事業者様の声を聞くと、離職率が30%、35%というお話もよく聞きます。
そうなると、事業者様の人事部は、年中採用活動に忙殺されます。
そのような状況の中、「転職」という概念がない技能実習は、事業者様にとっては大きなメリットを感じるようです。
対して特定技能においては、原則として転職は許されています。(特定技能を受け入れることを許可されている事業所に転職可能です)
多大な費用・手間・時間を費やして外国から招き入れた外国人に、一瞬のうちに転職されてしまうとしたら、それは事業者様にとっては「絶対に避けたいこと(デメリット)」と映ることが多いようです。
つまり、転職があるかないか、という観点で言えば、特定技能よりも技能実習に軍配が上がります。
面接候補者が集まりやすい
2つ目のメリットは「面接を受けたい候補者が多い」ということです。
介護職種の特定技能は「日本語評価試験(JLPT N4以上もしくはJFT-Basic合格)」「介護日本語評価試験」「技能評価試験」3つの試験に合格しなければ日本に行くことが出来ません。これが日本で働きたいと思っている外国人の前に立ちはだかるハードルとなるため、面接候補者が集まりにくいというデメリットがあります。
特定技能1号 入国までの流れ
特定技能1号 の申し込みから入国、配属までの流れになります。「特定技能資格保有の場合」と「日本語資格のみの場合」に分けて解説しています。また、日本・ミャンマーそれぞれの対応についても記載してありますのでご覧ください。
対して、介護技能実習生は日本語能力試験(NAT-Test)4級に合格すれば日本に行けます。3つの試験に合格しなければならない特定技能よりも、ミャンマー人にとっては日本に行くためのハードルが低く魅力が高いと言えます。
在留期間が長く、最大で合計10年働ける
3つ目のメリットは「合計10年日本で働ける」ということです。
技能実習は最長5年です。
しかし、技能実習2号まで(実習期間3年)実施していれば、無試験で特定技能1号に移行することができます。
特定技能1号では5年働くことができるため、技能実習を3年実施した後、特定技能1号へ在留資格を変更すれば、技能実習期間と合わせて合計8年働くことができます。
また、技能実習3号まで(実習期間5年)実施した後、特定技能1号へ在留資格を変更すれば、最大で合計10年働くことができます。
一方、特定技能については、現状介護職種は特定技能2号への移行対象ではないため、1号期間のみの雇用となり、最長でも5年の雇用期間となります。
これが、5年以上の長期雇用を希望している事業者にとっては、デメリットと感じる部分となります。
1人の外国人介護士をできるだけ長い期間雇用したい事業者様は、まず技能実習での受け入れを行い、特定技能1号へ在留資格を変更することで長期雇用が可能となります。
つまり、働ける年数で考えますと、特定技能よりも技能実習に軍配が上がります。
特定技能1号のメリット(技能実習のデメリット)
人員配置基準に配属後すぐに算入できる
次に、特定技能1号のメリットを解説していきます。
1つ目のメリットは、「事業所に配属後すぐに人員配置基準に加えることができる」ということです。
一方で、技能実習で外国人を雇用した場合は、実習生を事業所に配属してから、6ヶ月間は人員配置基準に算入できないことがデメリットとなります。
度重なる介護報酬の削減や人材不足などにより、経営状態が悪化している事業者様もあるようです。
そのような中で、外国人を雇っても、国から介護士として認めてもらえない(人員配置基準にカウントできない)ということは、つまり、もうひとり介護士を雇わなければならなくなるということです。
日本政府が技能実習において、6ヶ月間人員配置基準に含めないという判断をした理由は、EPA(経済連携協定)と同様な人員配置基準にしないと、EPA制度を利用する人たちから苦情が来るからと言われています。
この日本政府の判断は事業者にとってはとてもつらいものですが、すぐには覆すことはできません。
ですから、外国人介護士を配属後すぐに人員配置基準に入れたい、とおっしゃる事業者様は、特定技能を選ぶことになります。
つまり、人員配置基準の観点からは、特定技能に軍配が上がるということになります。
新設から3年間未満でも導入できる
2つ目のメリットは、「新設の事業所でも外国人の雇用が可能」ということが挙げられます。
一方で、技能実習においては、施設開所後3年間は実習生の受け入れができないデメリットがあります。
特に事業展開を積極的に実施している事業者様においては、新設事業所で外国人介護士を受け入れることができないのは、とても困ることのようです。
なぜなら、新設事業所こそが一番人手を集めるのに苦労するからです。
ですから、新設事業所をお持ちの事業者様において、外国人の雇用をする場合は、特定技能を選ぶケースが多くなると思われます。
つまり、新設事業所で外国人介護士を導入できるかどうかにおいては、特定技能に軍配が上がるということになります。
初年度から常勤介護職員数まで採用できる
3つ目のメリットは、「外国人介護士の雇用における受け入れ人数枠が大きい(雇用できる人数が多い)」というところです。
介護職種の技能実習生の人数枠
介護職種における技能実習生の人数枠を分かりやすく表にしました。介護団体監理型と企業単独型のそれぞれの場合で実際の人数枠を想定できます。
技能実習においては、初年度は例えば1事業所の常勤介護職員数が60名の場合は、実習生を6名しか採用することができません。
次年度になれば、最初の6名が技能実習2号に移行するため、技能実習1号の枠が空き、また追加で6名採用できます。
3年目も同様で、二期生の6名が技能実習2号に移行しますので、技能実習1号の枠が空き、さらに追加で6名採用できます。
つまり、常勤介護職員数が60名の事業所においては、3年間で18名まで実習生が雇用できます。
対して、特定技能は初年度から、常勤介護職員の数まで一気に雇用ができます。
1号特定技能外国人の受け入れ人数枠は、事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を超えないこととされます。
「日本人等」については、次に掲げる外国人材はそれに含まれます。
- 介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士
- 在留資格「介護」により在留する者
- 永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格により在留する者
つまり「日本人等」の中には、技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生は含まれません。
介護業界では、深刻な人材不足に悩んでおられる事業者様がとても多い状態です。
いくら待っても人材が来ない。
いくら費用をかけても人材が採用できない。
よい人材が採用できない。
入社してもすぐに辞めてしまう・・・
人材獲得に関する悩みは尽きないようです。
技能実習においては、受け入れ人数枠の制限が大きいので、外国人を採用したとしても、それでも職員が足りないという状況はすぐには解決できない場合があります。
したがって、人材不足に困っている事業者様は、常勤介護職員数まで一気に外国人を雇用できる特定技能を選ぶことになります。
つまり、採用できる人数枠(受け入れ人数枠が大きいかどうか)においては、特定技能に軍配が上がるということになります。
受け入れ後の制約事項が少ない
4つ目のメリットは、「雇用上の制限が少ない」ということです。
2019年の初め頃から、日本政府(外国人技能実習機構)の技能実習に対する締付けが厳しくなりました。
それまでは事実上許されていたことが、取り締まりが突然強化され、次々に新聞沙汰になるほどになったのです。
具体的には、技能実習計画に基づいた作業を忠実に実施していないと法律違反として、実習取消処分になるようになりました。
また、36協定など、労働基準法に違反すると、これも実習取消処分になるようになりました。
実習取消になると、これはもう悲劇です。
まず、企業は実習生を全員雇えなくなります。つまり人材不足に陥ります。
そして最も悲劇的なのは、実習生の行き場がなくなることです。
実習生が日本に来るためにかけた時間、費用が無駄になってしまうのです。
中には日本に来るために借金を背負った実習生は、その借金が返せなくなってしまいます。
ですから、このような悲劇が起こらないように、監理団体は企業に対して法令遵守をチェックするため、厳しく監査・巡回をしなければなりません。
具体的には、監理団体は毎月、技能実習先の企業を回り、事業者と実習生にヒヤリングを行います。
そして賃金台帳や出勤簿をチェックして労働基準法違反がないかどうかチェックします。
そして国に報告できるよう、記録を残すのです。
対して、特定技能においては、そのような厳しい規制はありません。
仕事内容についても、一度出入国在留管理庁(入管)の審査が通れば、事業所内のどのような作業をしてもほぼ許されます。
毎月の巡回・監査は不要ですし、3ヶ月に1回の国への報告が必要なだけで、技能実習と比べると、制限はとても少ないのです。
つまり、雇用上の制限が少ないという観点においては、技能実習よりも特定技能に軍配が上がるということになります。
前職要件がない
4つ目のメリットは、技能実習生には必要な「前職要件がない」ということです。
前職要件とは、団体監理型技能実習の場合は、日本で従事する業務と同種の業務を母国で経験する必要があるということです。
しかし、海外では日本の「介護」のような職種がない国も多く同種の業務を経験するというのはハードルが高いです。
そのため、前職要件を満たすには下記の教育課程を修了する必要があります。
- 2ヶ月以上320時間以上の訓練
- そのうち1か月以上160時間以上の介護職種に関する課程を満たしている
参考<厚生労働省:技能実習「介護」における固有要件について>
ほとんどの技能実習生は上記の教育課程を修了する必要があるため、受け入れをしたいと考えてから入国までに時間がかかってしまいます。
一方で、前述にもありますが介護職種の「特定技能」では、「日本語評価試験」「介護日本語評価試験」「技能評価試験」3つの試験に合格しなければ日本に行くことが出来ません。取得しなければならないというハードルがありますが、すでに3つの資格を取得している外国人であれば、圧倒的にスムーズに受け入れることができます。
技能実習と特定技能それぞれにメリット・デメリットがあります。次の項目では各在留資格のおすすめポイントをまとめていますので参考にしてみてください。
介護職種での技能実習と特定技能1号の選び方
以上をまとめると、『技能実習』と『特定技能1号』を選ぶ際におさえておくべきポイントは下記のようになります。
★技能実習がおすすめ
- 転職の心配を最小限にとどめ安定的な雇用をしたい場合
- 確実に外国人介護士を受け入れたい場合
(面接候補者が集まりやすいため) - 1人の外国人を長期雇用したい場合(最大10年)
★特定技能1号がおすすめ
- 雇用後すぐに人員配置基準に参入したい場合
- 新設の事業所で外国人を雇用したい場合
- 雇用初年度から最大人数を雇用したい場合
- 法的な制限を最小限にとどめたい場合
- 前職要件がない
介護職種に限定しても、特定技能1号と技能実習のどちらで外国人を雇用するのがよいかは、事業者様の状況によってこれだけ変わってきます。
それぞれのメリット・デメリットをよく理解し、何を重要視するかで判断することが求められます。
ご自身の事業所において、どちらの外国人材を雇用するのがよいか等、ご不明な点がありましたら、ミャンマー・ユニティまでお気軽にお問い合わせください。
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