日本の危機的状況を救う外国人労働者の確保が難しくなっている!?

日本の危機的状況を救う外国人労働者の確保が難しくなっている!?

危機的状況を救う外国人労働者の確保が難しくなっている

日本に出稼ぎに行く魅力がなくなってきた これまで日本が出稼ぎ国として魅力的な国だったのは確かです。治安の良さや安全面の確保、そしてそれに加えてまともな収入が得られる点が多くの外国人を惹きつけていました。しかし、最近では急激な円安や他国の経済成長という要素が影響して収入面での魅力が減少しています。外国人労働者にとって収入が減少すると、その国への魅力も自然と低下してしまいます。

世界的に優秀な人材確保の競争が激化! さらに世界ではもっと大変なことが起こっています。先進国では高齢化と少子化が進行して、いずれの国も自国の生産労働人口だけでは十分な労働力が得られないため、海外の優秀な人材を確保する必要が出てきています。まさに日本と変わらない状況の中で何が引き起こされているかというと、各国共に、外国人労働者を増やすことが求められていて、世界的な人材争奪戦が起こっています。
かつて日本は高収入を得られる魅力的な国でしたが、2010年に中国が日本のGDPを追い抜き、国の経済力で見ると中国は世界第2位となり日本を抜いています。さらに内閣府が2024年2月15日に発表した内容によると1位アメリカ、2位中国、3位ドイツ、そして4位が日本です。長年にわたって続いたデフレと低成長、そして円安の影響もあり、人口が日本のほぼ3分の2のドイツにも抜かれてしまいました。アジア諸国も経済成長が著しく、ベトナムやフィリピンでは自国での収入水準が向上し、働き口も増えています。
そういった状況の中で、日本で働く必要性が減少しています。また、英語を話せる国の人々は日本語を学ぶコストや労力を考えると、英語圏で高収入を得られる場所での就労を望むのは当たり前のことです。
日本の中では、外国人労働者の受け入れ拡大が議論されてはいても、円安の影響などから外国人労働者がより多くの収入を得ることが難しく、欧米やシンガポールなど給与が高い国に目が向いています。また円安は、日本で得た収入を母国に送金する際に損失が生じることもあって、外国人労働者が日本で働くメリットが減少しています。
日本が外国人労働者を確保しようと思っても、起こっている問題が社会経済の全体に関わるものなので、経済状況の改善や円安対策など、簡単に解決する内容ではありません。外国人労働者を増やしていくには魅力的な労働環境を整備することがとても大切なことになっています。
介護分野など人手不足が深刻化する分野では、欧米との賃金格差が海外人材の選択に影響を与えています。このような状況を踏まえて、日本は外国人労働者をどのように確保していくかを真剣に考える時期が来ていると思います。

日本の優秀な人材が他国に流れている

逆の視点から見ていきます。2023年の外務省の『海外在留邦人数調査統計』によれば、2022年に日本から海外へ行き、そこで永住者となった人数は過去最高の57万4000人を超えました。永住先の上位は、米国をトップに中国、オーストラリア、カナダ、イギリスといった英語圏が中心です(図8)。 海外在留邦人数推移と在留邦人数上位の推移 それだけではなく、雇用の方法もあるようです。欧米は日本のようなメンバーシップ型雇用よりもジョブ型雇用が一般的です。メンバーシップ型雇用では人材に職務を与えるのが基本ですが、人材が持つスキルに焦点を当て職務を充てるのがジョブ型雇用です。
近年は、日本でもジョブ型雇用が増えつつあるものの、賃金に反映されているかといえば微妙なところです。欧米型ジョブ雇用では業務内容や権限などの役割といったグレードで賃金が決まりますが、日本企業ではそうした評価制度よりも、勤務年数や業務内容などの総合評価で賃金が決まる仕組みが残っているため、職務と賃金が連動しないことが多いようです。
国内の優秀な人材が欧米などに流出してしまう背景には、こうした欧米型のジョブ型雇用に魅了されるのはやむを得ないかもしれません。出身国に関係なく活躍でき、さらに日本国内で働くよりも賃金アップも可能だとしたら、誰もが憧れるはずです。2023年10月17日に放送された報道番組「堀潤モーニングFLAG」では、工場勤務をしていた青年がワーキングホリデー制度を利用してオーストラリアで働き、手取り月収が約25万円から約80万円に増加したという話が紹介されました。このような例からも、高度なスキルを持つ優秀な人材であれば、日本での働き方に疑問を持つ可能性が示唆されています。業務内容は金属の部品加工だそうです。いわゆる高学歴でなくても、これだけの収入アップが見込めるのですから、高度なスキルを持つ優秀な人材なら、なおさら日本で働くことに意味を見出せなくなっているかもしれません。
日本人でさえ海外に魅力を見出しているのですから、もとから英語でのコミュニケーションに問題のないフィリピン人をはじめとした国の人材は日本を選ばずに英語圏に行くのは当然かもしれません。昔からの古い考え方である、「日本だったら選ばれるだろう」という安易な考えは、もはや楽観視以外の何物でもありません。

ミャンマー人にとって日本は有益性の高い円高国

さらに、日本の労働環境や生活面において、外国人労働者からの不満の声が高まっています。 労働環境では実力や成果に応じた報酬が少なく、年功序列が基本的な報酬体系として採用されている企業が多いことが問題です。さらに、定められた就労時間を超えて残業が多く、職務範囲を示すジョブディスクリプション(担当する職務内容を詳しく記載した文書のこと)が明確にされていないことも不満の一因です。 生活面では、外国語が通じないことが大きな課題です。日本ではほとんどの場所で英語を含む外国語が使えなくて、日本語が必須です。この言語の壁は、生活だけでなく職場でも同様で、外国人労働者にとって大きな障壁となっています。 これらの要因が重なると、賃金の低い日本での労働や生活をしたいと期待する外国人労働者が果たしてどのくらいいるでしょうか。しかし、このような状況下でも日本に高い関心を示している国があります。それがミャンマーです。 ミャンマー人にとって日本は、馴染みやすい文化や言語を持つ国であることは、第1章で触れた通りですが、その他にも来日するメリットが数多くあります。他国では日本は円安国とされていますが、ミャンマーにとってはまだまだ円高国であるという点が挙げられます。これは、ミャンマーの国内事情に関連しています。 政変が起きたミャンマーでは、貨幣価値が対米ドルで1/3にまで暴落した影響で、超円安の日本であっても、国内の数十倍稼げる状況にあります。しかもその貨幣価値の暴落は、今もまだ続いていて、優秀な若者ほど日本で働き口を探したいという気持ちに変わりはありません。

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