技能実習生の賃金|最低賃金で雇用できるのか?
技能実習生受入れ時の賃金を詳細に解説します。技能実習生に支払うコスト、監理団体へのコスト、受け入れるために具体的にどんな必要なコストがあるか、外国人から見た最低賃金の見え方、等を解説します。
技能実習生の時給を最低賃金に設定することはできます。技能実習生は労働者ではありませんが、実習実施者と雇用契約を結びます。よって、労働基準法が順守されていれば問題ございません。当たり前ですが法定労働時間を超過した場合や、時間外労働については割増賃金を支払わなくてはいけません。また、社会保険・年金等の支払いも通常の社員と同様に労働条件に応じて必要になりますので、ご注意ください。
本記事では、実際に技能実習生を受け入れる場合には、技能実習生に支払う金額に加えて、受け入れるためのコストが発生しますので、それらについて説明いたします。
目次
技能実習生に支払うコスト
技能実習生に対しては、時給換算したときに最低時給以上の支払いが必要です。
最低賃金の額は各都道府県によって決められた金額、もしくは産業ごとに定められた金額のどちらか高い方の支払いが必要になります。
※万一最低時給以下で労働契約を行ったとしても、最低賃金法が優先されるため、必ず最低時給を支払うことになります。
実例で言えば、最低賃金または最低賃金に少し上乗せした賃金を設定していることがほとんどです。
しかし、建設、介護など人材募集が難しい不人気職種においては、最低賃金で募集しても応募者が集まらない傾向がありますので、賃金設定については監理団体に相談することをおすすめします。
(参考) 地域別最低賃金の全国一覧
都道府県 | 最低賃金時間額 | 発効年月日 |
---|---|---|
北海道 | ||
北海道 | 861円 | 令和元.10.03 |
東北 | ||
青森県 | 793円 | 令和2.10.03 |
岩手県 | 793円 | 令和2.10.03 |
宮城県 | 825円 | 令和2.10.01 |
秋田県 | 792円 | 令和2.10.01 |
山形県 | 793円 | 令和2.10.03 |
福島県 | 800円 | 令和2.10.02 |
関東 | ||
茨城県 | 851円 | 令和2.10.01 |
栃木県 | 854円 | 令和2.10.01 |
群馬県 | 837円 | 令和2.10.03 |
埼玉県 | 928円 | 令和2.10.01 |
千葉県 | 925円 | 令和2.10.01 |
東京都 | 1,013円 | 令和元.10.01 |
神奈川県 | 1,012円 | 令和2.10.01 |
北陸 | ||
富山県 | 849円 | 令和2.10.01 |
石川県 | 833円 | 令和2.10.07 |
福井県 | 830円 | 令和2.10.02 |
甲信越 | ||
新潟県 | 831円 | 令和2.10.01 |
山梨県 | 838円 | 令和2.10.09 |
長野県 | 849円 | 令和2.10.01 |
東海 | ||
岐阜県 | 852円 | 令和2.10.01 |
静岡県 | 885円 | 令和元.10.04 |
愛知県 | 927円 | 令和2.10.01 |
三重県 | 874円 | 令和2.10.01 |
関西 | ||
滋賀県 | 868円 | 令和2.10.01 |
京都府 | 909円 | 令和元.10.01 |
大阪府 | 964円 | 令和元.10.01 |
兵庫県 | 900円 | 令和2.10.01 |
奈良県 | 838円 | 令和2.10.01 |
和歌山県 | 831円 | 令和2.10.01 |
中四国 | ||
鳥取県 | 792円 | 令和2.10.02 |
島根県 | 792円 | 令和2.10.01 |
岡山県 | 834円 | 令和2.10.03 |
広島県 | 871円 | 令和元.10.01 |
山口県 | 829円 | 令和元.10.05 |
徳島県 | 796円 | 令和2.10.04 |
香川県 | 820円 | 令和2.10.01 |
愛媛県 | 793円 | 令和2.10.03 |
高知県 | 792円 | 令和2.10.03 |
九州 | ||
福岡県 | 842円 | 令和2.10.01 |
佐賀県 | 792円 | 令和2.10.02 |
長崎県 | 793円 | 令和2.10.03 |
熊本県 | 793円 | 令和2.10.01 |
大分県 | 792円 | 令和2.10.01 |
宮崎県 | 793円 | 令和2.10.03 |
鹿児島県 | 793円 | 令和2.10.03 |
沖縄 | ||
沖縄県 | 792円 | 令和2.10.03 |
- 法定労働時間を超過分、いわゆる残業代について支払いが必要です。
月給を時給換算したときに0.25倍以上の金額を割り増して支払う必要がある。 - 休日労働、深夜労働に対する割増賃金の支払いが必要です。
上記同様に0.25倍以上の金額を割り増して支払う必要がある。 - 社会保険各種および年金については、労働条件に応じて加入の必要がある。
※但し2021年10月より下記の最低賃金に変わります。(厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会の小委員会が2021年7月決14日に決定)
受け入れるために必要なコスト
団体監理型で技能実習生を受け入れるためには、監理団体に入会し、送り出し機関とやりとりをしながら進めて行きます。このため次の費用が技能実習生に支払うものとは別に必要になります。例として1人を受け入れた場合の相場観を記載します。
合計で約50万から120万円かかります。
※団体監理型以外に企業単独型があります。海外に事業所をもち、在留資格認定申請、入国前の研修手配・研修などを自社ですべて行う企業単独型もあります。その場合は、自社で行う人件費が本コストに該当します。
①監理団体へ支払う入会費・年会費
監理団体にもいろいろあり、選ぶ監理団体により入会費・年会費に差はあります。
一般的には、入会費が1万から10万円、年会費が0円から15万円となっており、入会費は初年度のみ必要になる場合がほとんどです。
※JITCO(公益財団法人 国際研修協力機構)が必要な場合
監理団体によっては、JITCOへの加入を必須としているものがあります。その場合、入会費として10万から30万円が必要になりますが、技能実習計画作成、およびビザ申請についてフォローいただくことができます。
②監理団体へ支払う監理費
・組合監理費 | 約3万から5万円 |
・送り出し管理費 | 約5千編から1万円 |
③技能実習生を受け入れるまでにかかる費用
- 技能実習生を選ぶため、現地を訪問される場合はその費用。
コロナの影響もあり、WEB面接にしている監理団体もあります。監理団体を選ぶ際に確認しておきましょう。 - 在留資格申請 0円から4万円
- 技能実習生総合保険 約3万円
- 渡航前の健康診断費用 0円から約1万円
- 入国前研修費 約2万から4万円
- 渡航費 約10万円
- 入国後研修費 約10万円
- 研修手当 約6万円
- 受け入れ時の健康診断費用 約1万円
技能実習生から見た最低賃金の見え方
技能実習生への給与は最低賃金額を参考にしながら決定している実習実施者の方は多いですが、技能実習生から見たらどう見えるか検討が必要です。最低賃金の金額が隣接県と大きく差があり、低いほうの県は注意が必要です。技能実習生から見ると対して距離が離れておらず、もらえる金額が高いほうを選択してしまう傾向にあります。
確かに、「給与が安くても地方では生活費にかかる金額が違うから大丈夫」とお考えになられる方もいらっしゃると思いますが、生活費がどれほどの開きがあるかまで情報を入手でき、考慮して実習実施先を志望される技能実習生の方は全員ではありません。日本での手取り収入がブローカーにいわれるがまま月30万ほどもらえると信じて渡航される方もいらっしゃるほどであり、情報感度はそこまで高くないと考えたほうが無難です。
人事ができること
最終的に人材受け入れまでのコストを考えるときには、企業内でかかったコストと外部に支払ったコストの合計になります。技能実習生の受け入れの場合は外部に支払ったコストが初年度大きくかかることにかかります。その後、3年間実習をつづけることができれば、その分トータルのコストは低くできます。条件を満たせば、技能実習3号が認められ、さらに追加で2年間技能実習の延長が認められますし、特定技能に在留資格を変更すれば、同じ外国人材をさらに5年間継続して受け入れることもできます。よって、イニシャルコストの問題は、就業期間を長くすることによりある程度引き下げることが可能になります。
ですから技能実習の段階から自社に対する技能実習生のロイヤルティを高めておくことが大切です。
技能実習生が気持ちよく働けるよう、母国の文化風習を回りが理解し、日本語が堪能でなくともストレスを感じずにコミュニケーションが取れる仕組みを築いておけば、技能実習3年修了後も、継続して働いていただくことができ、コストも抑えられるはずです。
さいごに
人材を受け入れる際は、いかに最低限のコストでよい人材を受け入れるか、その後も最低限のコストでよく働いてもらうかについてついつい考えてしまいがちです。
このため、技能実習生を受け入れる理由として、次をメリットにあげられる企業様は多いです。
・ほぼ3年間企業で実習を行えるので、3年離職しないので安心できる。
・最低賃金に近い金額でも人材を受け入れることができるので魅力である。
特段問題がないように思えますが、この考え方には大きな落とし穴があります。
万一、劣悪な環境で実習を行ってしまうと、技能実習生の失踪を招くことがあります。
また、外国人技能実習機構からの摘発を受け、企業価値を落とすことに直結します。
企業の社会的責任が求められる傾向は強くなっており、特に技能実習生については、海外からは奴隷のように扱われているとして様々なメディアで議論もされ、人権団体からも指摘を受けているほどです。
ついつい、上記のようなメリットに目を向けてしまいますが、より長期的な目線で考えるべきです。法令遵守の上で技能実習をおこなうことで、国際貢献を行い、技能実習生に支持されることで得られる次のメリットもかなり大きいはずです。
・CSRとして、世の中に多様性を受け入れていることをPRできる。
・立場の弱い方にしっかり向き合うことで、人材に対して大切に扱っていることをPRできる。
・技能実習3年修了後も、継続して働いてもらえる。
・クリーンな会社であることが広がれば、有能な技能実習生をより呼び込める。
逆に万一、残業代などの不払いやその他の法令違反があると、大きなリーガルリスクおよびレピュテーションリスクにつながります。
最後までお読みいただきありがとうございました。技能実習生の受け入れおよび定着について本記事がお役に立てれば幸いです。
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