技能実習生の転職|原則転職できません
技能実習生は転職ができず、日本国内において自由に実習先を選択することができません。その理由および、転職ができるケースについてここでは説明しています。また、人事として人材が流出しないようにどのような対策ができるかを説明しています。
目次
1.技能実習生は自由に転職ができない理由
技能実習1号および2号では、技能実習法の定めにより、外国人技能実習機構に認可を受けた技能実習計画通りの実習実施者(企業)以外で実習を受けることはできないので、実習を受ける先を自由に変更することができません。
※技能実習2号から3号になる際は、実習先を変更することはできますが、技能実習3号についてはハードルがとても高いので、ほとんどのケースでは技能実習2号(3年)までで終了しています。
2.在留資格「技能実習」、実習先の選択について
2-1在留資格「技能実習」について
外国人技能実習制度は、日本が先進国としての役割をはたしつつ、国際社会との調和のある発展を図っていくために、国が導入した制度です。発展途上国の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としています。
入管法では、外国人技能実習は在留資格「技能実習」として日本での経済活動ができるようになっており、誰が技能実習生を受け入れるかで大きく分けて2種類の在留資格「技能実習」があります。
①企業受け入れ型
企業等が海外の現地法人の職員を直接受け入れて技能実習を実施する形態。
②監理団体受け入れ型
監理団体が技能実習生を受け入れ、監理団体に登録した企業において技能実習を実施する形態。
①であれば在留資格は入国一年目が技能実習1号のイ、入国2~3年目は技能実習2号のイ、入国4~5年目は技能実習3号のイとなっています。
②も同様に技能実習1・2・3号のロとなります。
①の場合は、通常1か月の座学期間(入国後研修)があり、②の場合は、雇用関係に基づかない座学研修を行うのであればその期間、企業などとの雇用契約はできませんので、技能実習をさせることはできません。入国後研修終了後から技能実習をすることになります。その後は、日本に入国して1年経過後に技能評価試験を受け、合格すれば、2号に変更することが可能になり、日本での技能実習が追加で2年継続可能になります。さらに2年後に3号に合格することができれば、プラス2年間日本での技能実習が可能になる仕組みとなっています。
※2号への変更が可能な職種、3号への変更が可能な職種については、職種により違いがありますのでご注意ください。
2-2転職が可能なタイミング
前述の通り、技能実習1号および2号では、外国人技能実習機構に認可を受けた技能実習計画通りの実習実施者(企業)以外で実習を受けることはできませんので、自由に転職ができません。
しかしながら、技能実習2号から3号へ移行する際は、実習生の希望で実習実施者を変更することが可能になっています。つまり、転職をすることが可能となっています。
3.人事としてできること
技能実習生の受け入れを行い、3年後、および5年後(技能実習終了時に特定技能への変更ができれば最長で日本で10年間働くことが可能)も外国人に働いてもらうには、当たり前ですが、外国人に企業の魅力を感じていただく必要があります。そのためには、外国人が日本で働くメリットの何を重要視しているかを理解しておく必要があります。また、デメリットをどのようなことに感じやすいのか理解しておく必要があります。
次にまとめました。
3-1外国人が日本で働く、メリットに感じやすいこと
①日本で高度かつ精密な技能を習得できること
外国人が日々仕事を行うことで技能を習得できるよう会社として仕組を用意しておくことが必要です。単純に任せたい業務を任せるだけでは、外国人が成長を実感することは難しいのが現状です。行う業務がなぜ重要なのか、日々の業務でどのような成長があったのかを実習を担当する社員からフィードバックを行い、外国人のモチベーションが維持される仕組みの検討が必要です。
②自国の家族に送金し、家庭を支えることができること
日本円を送金することで、自国で稼ぐよりも多くの金額を家庭に送金することができる点を魅力に感じている発展途上国の方は多いです。
アジアの送り出し国によって経済発展状況はさまざまですが、例えばアジア最貧国のミャンマーでは、地方都市での通常の仕事ですと月給が6,000円程度しかもらえない場合が多いので、日本で働くと収入が30倍程度になり、日本で働く魅力は圧倒的です。
しかし、外国人が満足する金額をしっかりと支払えているかについては確認の必要があります。
同業他社や同業他社と比べて明らかな見劣りがあり、自社にそれでも魅力を感じてもらえる魅力がない場合は、不満を解消する手立てが必要です。
社宅の提供やその他手当について日本は充実している傾向にあり、そこをメリットに感じておられる外国人は多いですが、日本人社員の待遇と差がある場合は不満の原因となりますので、注意が必要です。
3-2外国人が日本で働く、デメリットに感じやすいこと
①コミュニケーションがとりづらい
日本語は漢字・カタカナ・ひらがなと学習するものが他言語と比較して多く、十分に理解できないまま日本に来た実習生もいます。また、日本人独自の「阿吽の呼吸」のように、相手の表情、細かな言い回しから相手の真意や意図を組んだコミュニケーションは当然にできません。わかりやすくシンプルかつ必要十分な言葉で外国人にはコミュニケーションを行う必要があります。
②異文化・風習の理解が足りない企業がある
外国人は生まれた国・地域で育っており、当然に日本の文化・風習とは違った価値観を持っています。外国人の文化・風習をしっかり理解し、認めたうえでコミュニケーションをとるようにする必要があります。
※人事が十分注意していても、配属部署で文化・風習が否定され、トラブルとなるケースもあるので注意が必要です。
③プライベートを充実できるか不安
外国人がプライベートと仕事をしっかり両立できるよう配慮がされている必要があります。違反企業の中には実質170時間以上の残業を月にさせていたケースもあり、言語道断です。残業時間を抑制し、プライベードが充実できることをPRすればそれだけで外国人に安心で選んでもらいやすくなります。
★まとめ
技能実習生として働く場合、技能実習生は原則として転職することはできません。
企業としては、技能実習生が日本で働き続ける限り、3年間は自社に在籍してもらえる安心感はありますが、自社に魅力がなければ失踪や途中帰国の可能性が出てきます。また送り出し機関からも良い人材の紹介は少なくなるかもしれません。
企業としてできることは、絶えず、自社に魅力を感じ、イキイキと外国人が活躍できる環境をどれほど用意でき、それを実際に外国人に感じてもらえるかです。そのためには、外国人が育った文化・風習を考慮して対応する必要があります。
これが実現できれば、様々な価値観が理解され、多様性に富んだ企業となるため、外国人だけでなく日本人にも魅力ある組織となります。
日本は今後少子高齢化、労働人口の減少が加速しますので、外国人に働いてもらうことは避けては通れなくなります。外国人をどれだけ活用し活躍してもらえるかが、これからの企業の存続を大きく左右することになります。
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