技能実習3年終了後|特定技能?技能実習3号?どちらにすべきか制度の違いを解説
技能実習3年終了後、特定技能に移行と、技能実習3号に移行どちらがいいのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。この記事ではそれぞれの在留資格のメリットデメリットを比較し、違いを丁寧に説明し、詳しく解説します。
世界一の少子高齢化がさらに進行する日本。
労働人口(生産年齢人口)も劇的に減少しており、これからの日本は労働力不足に悩まされることが確実です。
対策として、日本政府は2019年4月より特定技能制度が発足させ、人手不足の14業種に対して在留資格「特定技能」での外国人労働者の雇用を認めました。
ところが新型コロナウイルスの蔓延もあり、外国人の入国制限(いわゆる水際対策)が長く続けられ、特定技能外国人の新規入国は止まっています。
結果、技能実習からの在留資格変更による特定技能労働者がほとんどとなっているのが現状です。
技能実習とは国際貢献を目的とした、技能移転の制度です。
途上国から技能実習生を受け入れて、途上国の発展に寄与するために、日本で高度な技能を学んで(実習して)技術を祖国に持ち帰っていただこうという制度です。
しかし、特定技能制度の創設により、技能実習生が3年で帰国せずに特定技能労働者としてさらに日本で働き続けることが可能となり、技能実習の国際貢献という側面はさらに形骸化してきたと言っても言い過ぎではないでしょう。
今回は、3年で帰国しないで国内に在留する技能実習生が増える中、4年目以降の在留資格変更は特定技能にするべきか、それとも技能実習3号にするべきか、以下で徹底解説してまいります。
目次
- 技能実習3号のメリット・デメリット
- 技能実習生がたった3年で帰国するのは大変もったいないこと
- 当初3年を超えて受け入れるにはこれしかなかったこと
- 優良要件を失う可能性があること
- 職務の自由度が少ないこと
- (監理団体は)管理費収入が確実に得られること
- 転職されないこと
- 特定技能のメリット・デメリット
- 外国人にとって自由度が高く、外国人に人気があること
- 職務に制限が少なく、企業側の自由度も上がること
- 企業の管理費コストが下がること
- (監理団体は)収入が減ること
- (監理団体は)他の仲介会社に仕事を奪われてしまう可能性があること
- 転職されてしまう可能性があること
- 技能実習3号と特定技能の比較表
- まとめ
技能実習3号のメリット・デメリット
技能実習3号のメリット~その1
技能実習生が3年で帰国するのは大変もったいない
2017年11月、技能実習法(正式名:外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)の制定により、技能実習3号が新しく創設されました。
技能実習3号が創設された理由は、ズバリ「技能実習生がたった3年で帰国するのは大変もったいないから」です。
せっかく3年間も徹底して教育し、結果、技術や経験を習得した技能実習生が3年で帰国しなければならない。
代わりとして新しく雇用する技能実習生には、また振り出しからいろいろと教えなければならない。
これは受入企業にとっては、かなり深刻な問題でした。
技能実習生が3年で帰国するのはもったいない!!という声が大きかったことから技能実習3号が設けられたと言っても過言ではないと思います。
当初3年を超えて受け入れるにはこれしかなかったこと
技能実習3号の制度は、優良な監理団体が仲介し、優良な実習実施者(つまり受入れ企業)が技能実習生を引き続き受け入れたいのであれば、技能試験や優良とされるポイントなどとても高いハードルの条件を満たしたした監理団体と実習実施者にだけ技能実習3号を許すという制度です。
制定当初は、技能実習生に4年以上働いてもらうためにはこの技能実習3号しか制度がありませんでした。また優良認定されるポイントもそんなに厳しくありませんでした。
技能実習3号のデメリット
優良要件を失う可能性があること
しかし、特定技能制度が創設された後、優良と認定されるポイント制度が改悪され(とても厳しくなり)、技能実習3号のメリットは激減してしまいました。
むやみに技能実習3号を受け入れると、逆にせっかく得ていたポイントを失ってしまうことになりかねないのです。
監理団体のリスク
むやみに技能実習3号を受け入れると、監理団体は優良要件を剥奪され、一般監理事業から特定監理事業に格下げの憂き目にあいかねません。
監理団体事業において、一般監理事業なのか特定監理事業なのかは、生死をわけると言っていいほど重要なことです。
一般監理事業は優良監理団体とも呼ばれ、信用度が高い。
一方で特定監理事業は優良ではないので、信用度が低いわけです。
むやみに技能実習3号を受け入れると、優良要件を剥奪され、一般監理事業から特定監理事業に格下げされる可能性が高くなるので、正直言って、技能実習3号の受入れはおすすめできません。
実習実施者(受け入れ企業)のリスク
実習実施者についてもほぼ同様です。
せっかく優良な実習実施者に認定され、技能実習3号の受け入れをやっていたとしても、優良要件が厳しくなったため、今後は優良資格を失う可能性があります。
技能実習3号受け入れをしている実習実施者が優良資格を剥奪されると後は悲惨です。
技能実習生は他の優良実習実施者に移籍をしてもらわなければなりません。
働き手を失った企業はもっと困ることでしょう。
職務の自由度が少ないこと
技能実習3号は、外国人技能実習機構によって認められた技能実習計画に基づき、法令を遵守して行う必要があり、外国人に任せる職務や作業がかなり限定されています。
これに違反した場合は、とても重い罰を受けることになります。
外国人技能実習機構により違反の事実が公表され、技能実習が禁止されることもあります。
また監理団体許可が取り消される原因にもなります。
ですから、とても厳格な職務の管理(実習の管理)が必要になります。
技能実習3号はとても自由度が低いと言えます。
技能実習3号のメリット~その2
(監理団体は)管理費収入が確実に得られること
しかしながら、現在においても監理団体にとって技能実習3号のメリットもあります。
まず、監理団体が管理費収入が確実に得られることです。
特定技能においては監理団体が対応する義務も少なくなることから、管理費収入が減ってしまう傾向があり、収入の多寡という面においては、技能実習3号のメリットになります。
転職されないこと
もうひとつ、技能実習3号のメリットがあります。
それは転職されないということです。
これは色々と苦労をする監理団体と実習実施者(受け入れ企業)にとっては、他に代えがたい大きなメリットとなっています。
特定技能のメリット・デメリット
逆に特定技能のメリットもいくつかあります。
特定技能のメリット
外国人にとって自由度が高く、外国人に人気があること
特定技能は原則として転職可能です。
技能実習は、技能実習計画認定を受けた実習実施者でなければ実習できず、原則として転職が認められていません。
どんなに嫌なことがあっても、理不尽なことがあっても、転職の自由がない技能実習制度は、職業選択の自由を定めた日本国憲法違反であるとか、現代の奴隷制度だと批判される理由がここにあります。
職務に制限が少なく、企業側の自由度も上がること
前述のように技能実習3号は、外国人技能実習機構によって認められた技能実習計画に基づき、法令を遵守して行う必要があり、外国人に任せる職務、作業に限りがあります。
一方、特定技能においては、受け入れ企業側の自由度は格段に上がります。
特定技能による就労において、全く制限がないわけではありませんが、外国人に任せられる職務・作業の範囲が劇的に広くなり、ほぼ日本人職員と同様の仕事を任せられるようになります。
法令違反で処罰される可能性も技能実習よりはかなり低いので、企業にとってはとても安心と言えるでしょう。
企業の管理費コストが下がること
特定技能は技能実習に比べて制限が少ないことから、監理団体や登録支援機関に支払うコストも少なくなります。
特定技能外国人の受け入れを自社で直接行う場合(外部の登録支援機関を使わない場合)は更にコストが下がります。
しかし、特定技能にも支援体制の整備の義務はあります。
特定技能のデメリット
(監理団体は)収入が減ること
監理団体は技能実習3号にくらべて特定技能では収入が減ってしまいます。
理由は前述のとおりです。
(監理団体は)他の仲介会社に仕事を奪われてしまう可能性があること
技能実習3号は基本的には技能実習1号、2号の継続案件として、同じ企業、同じ監理団体で実施されることがほとんどです。
つまり技能実習3号に移行する場合は、監理団体は監理の仕事を維持できることになります。
しかし、特定技能に移行する場合はそうではありません。
特定技能の場合、外国人は就職先として他の企業を選ぶことができます。
また受け入れ企業も他の登録支援機関を選ぶことができます。また企業は自前で特定技能外国人を受け入れる(登録支援機関を使わない)こともできます。
ですから、技能実習2号から特定技能への移行は、監理団体にとっては仕事を失う可能性があるわけです。
転職されてしまう可能性があること
前述の通り、技能実習は原則として転職ができません。
特定技能は原則として転職ができます。
全く転職が自由自在というわけではありませんが、転職される可能性があるわけです。
さまざまな苦労をし、手間をかけ、費用もかけた受け入れ企業にとって、従業員の転職はあまりにも耐え難いことであり、これを強烈なデメリットと捉える企業も少なくありません。
技能実習3号と特定技能の比較表
一般職種の比較表
技能実習2号から上位資格へ移行する際の比較 | ||
---|---|---|
技能実習3号 | 特定技能 | |
在留期間 | 2年(資格変更の場合一時帰国の期間を除いて2年) | 5年 |
帰国期間 | 1ヶ月以上 | 帰国の規定なし |
脱退一時金 (年金) |
2号修了して退職し3号で再入国する場合
→帰国し3年分の申請 、3号修了後帰国し2年分の申請 資格変更の場合は、3号修了して帰国後に5年分申請 |
帰国したタイミングで申請。帰国前に転出すること。 遡って申請できるのが5年前までなので還付手続きのタイミングに注意が必要。 |
手続きにかかる時間 | 機構申請後約1~2ヶ月、入管申請後約1ヶ月 | 入管申請後約1~3ヶ月
建設職種の場合、国土交通省の許可も必要な為、6か月前の申請が好ましい |
技能水準 | 無し | 2号満了していれば免除 |
日本語要件、水準 | なし | 2号満了していれば免除 |
支援する団体 | 監理団体 | 登録支援機関 |
人数枠 | 常勤職員人数による | 建設職種の場合、常勤人数によって受入人数異なる |
家族帯同 | 不可 | 不可 |
転籍・転職 | 原則不可
※実習実施者の倒産、やむ負えない場合や2号から3号への移行時は転籍可能 |
同一の業務区分内、または試験によりその技能の水準の共通性が確認されている業務区分において転職可能。 |
入国・帰国費用 | 実習実施者負担 | 入国費用のみ実習実施者負担 |
宿舎 | 1名当たり4.5㎡。宿舎の用意、敷金礼金等は実習実施者負担 | 7.5㎡ 実習生から引き続き住む場合4.5㎡で可
技能実習時の宿泊施設から引越したい場合、特定技能外国人に費用負担させてもいい |
給与 | 同程度の職務経験のある日本人職員と同等の給与 | 同程度の職務経験のある日本人職員と同等の給与 |
毎月かかる費用 | 監理団体監理費:30,000円/人/月 ※3名受入の場合 送り出し管理費: |
登録支援機関支援費:25,000円/人/月 |
その他費用 | 実習生総合保険2年分 15,940円
随時2級または上級試験受験料 入管への手続き費用 |
特定技能外国人総合保険 任意
入管への手続き費用 初期費用 50,000円/人 出入国在留管理庁申請料他 100,000円/人 建設職種の場合JACに支払う費用 |
その他必要な手続等 | 3号修了時に随時2級・上級試験の受検 | 3時間以上の特定技能外国人への各種説明 |
日誌の記入 | 入管に申請する書類の準備(公的機関発行書類含む) | |
実施状況報告書の提出(年に1回) | 各分野の協議会への加入(雇用後4ヶ月以内に) | |
入管へ3ヶ月に1度提出する書類の作成(勤怠・賃金) | ||
変更事項は1ヶ月以内にOTITに届出 | 変更事項は2週間以内に入管に届出 |
介護職種の比較表
技能実習2号から上位資格へ移行する際の比較 | ||
---|---|---|
技能実習3号 | 特定技能1号 | |
在留期間 | 2年(資格変更の場合一時帰国の期間を除いて2年) | 5年 |
帰国期間 | 1ヶ月以上(コロナ禍で帰国できない場合を除く) | 帰国の規定なし |
手続きにかかる時間 | 機構申請後約1~2ヶ月、入管申請後約1ヶ月 | 入管申請後約1~3ヶ月 |
技能水準 | 随時3級の実技試験に合格する必要がある | 技能実習2号を満了していれば免除 |
日本語要件、水準 | 介護の場合N3合格 | 2号満了していれば免除 |
支援する団体 | 監理団体 | 登録支援機関 |
人数枠 | 常勤介護職員の総数に応じた人数 | 常勤介護職員の総数を超えない人数 |
家族帯同 | 不可 | 不可 |
転籍・転職 | 原則不可 ※実習実施者の倒産、やむ負えない場合や2号から3号への移行時は転籍可能 |
同一の業務区分内、または試験によりその技能の水準の共通性が確認されている業務区分において転職可能。 |
入国・帰国費用 | 実習実施者負担 | 入国費用のみ実習実施者負担 |
宿舎 | 1名当たり4.5㎡。宿舎の用意、敷金礼金等は実習実施者負担 | 7.5㎡ 実習生から引き続き住む場合4.5㎡で可
技能実習時の宿泊施設から引越したい場合、特定技能外国人に費用負担させてもいい |
給与 | 同程度の職務経験のある日本人職員と同等の給与 | 同程度の職務経験のある日本人職員と同等の給与 |
その他必要な手続等 | 技能実習3号修了時に随時2級・上級試験の受検 | 3時間以上の特定技能外国人への各種説明 |
日誌の記入 | 入管に申請する書類の準備(公的機関発行書類含む) | |
実施状況報告書の提出(年に1回) | 各分野の協議会への加入(雇用後4ヶ月以内に) | |
3ヶ月に1度の監査 | 入管へ3ヶ月に1度提出する書類の作成(勤怠・賃金) | |
変更事項は1ヶ月以内にOTITに届出 | 変更事項は2週間以内に入管に届出 | |
脱退一時金(年金) | 技能実習2号を修了して退職し3号で再入国する場合
→帰国し3年分の申請 、3号修了後帰国し2年分の申請 資格変更の場合は、3号修了して帰国後に5年分申請 |
帰国したタイミングで申請。帰国前に転出すること。
遡って申請できるのが5年前までなので還付手続きのタイミングに注意が必要。 |
毎月かかる費用 | 監理団体監理費:40,000円/人/月※3名受入の場合
送り出し管理費: |
登録支援機関支援費:25,000円/人/月 |
その他費用 | 実習生総合保険2年分 15,940円
上級試験受験料 入管への手続き費用 |
特定技能外国人総合保険 任意 入管への手続き費用 初期費用 50,000円/人 出入国在留管理庁申請料他 100,000円/人 |
この記事のまとめ
いかがでしたでしょうか?
在留資格「特定技能」が創設され、企業と外国人の選択肢は格段に上がりました。
しかし在留資格の制度はとても情報が多く、難解なものであり、技能実習3年終了後に特定技能で受け入れるべきか、技能実習3号にするべきかについては、ひとことで言い表せない複雑さがありますので、今回それぞれの特徴を徹底的に解説いたしました。
監理団体の皆様も、受け入れ企業の皆様も、特定技能、技能実習3号それぞれのメリットとデメリットをよくご理解の上、状況に応じた適切な受け入れのご判断、ご相談いただければ、このコラムを精魂込めて書き上げた甲斐が、私にもございます。
ご精読まことにありがとうございました!
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