技能実習生は奴隷なのか?|技能実習制度の現状は?
外国人技能実習生が「奴隷」という語句で呼ばれているのはどうなのでしょうか?近年、技能実習制度の廃止を求める声も挙がっています。技能実習制度は適切に運用されているか、現状の実態、厳しい実態を生む複数の原因や問題、それに対して失踪リスクなどのトラブルリスクをできるだけ下げるため企業ができることについて解説します。
技能実習生の受け入れは、日本が国際貢献活動の一環として行っているものであり、本来は発展途上国の方々に日本の技術をお伝えし、母国の経済発展に役に立てていただくことを目的に行っているものです。しかしながら、すべての技能実習生が適切な実習を受けられているわけではないのが現状です。本記事では、厚生労働省の資料をもとにその実態について詳しく解説します。
この記事を読んでわかること
-技能実習生の現状。
-失踪などのリスクの少ない技能実習生はどうやって受け入れたらいいか。
-実習実施者として何に気をつけたらよいのか。
目次
1.技能実習生の実態
厚生労働省の資料によると、令和元年10月末時点での技能実習で日本に滞在する外国人の数は約38.4万人で、ベトナム・フィリピン・インドネシアなどの東南アジアからの来日が主です。(ベトナムが約19.3万人、フィリピンが3.5 万人、インドネシアが3.2万人)
しかし、毎年約2%の方が実習実施者(技能実習生の受け入れ企業)から失踪しているのが現状です。主に賃金等の不払いなどによる実習実施者側の不正な取り扱いと、日本に来るまでに支払った費用の回収などによる実習生側の経済的な事情が失踪の原因となっています。
実例としては、労働基準監督署に出入国管理機関から技能実習生の労働関係書類の記入不備が起こっていると通報があり、調べたところ、次の実態が認められた例があります。
・実際に労働者時間に対する賃金ではなく、月平均所定労働時間分の賃金を支払っていた。
・時間外労働協定の締結なしに時間外労働を行わせており、最長で1ヵ月74時間58分の時間外労働をさせていた。
・週40時間を超える労働時間に対して割増賃金を支払っていなかった。
実習実施者が技能実習生へ日本の技術を伝える目的を忘れ、誤って安い賃金で働いてくれる労働者と認識して取り扱っているとしか思えないものであり、奴隷として取り扱っているに等しいものです。技能実習制度が奴隷制度と言われる原因でもあります。
技能実習生側の理由としては、日本に来るまでに悪質な送り出し機関に対して多額支払いを要求され、重い借金を背負わされて来日している場合があり、とくにベトナム人実習生において社会問題化しています。
送り出し機関の甘い言葉に乗せられて多額の借金をして来日したが、聞いていた日本での収入と実際の収入には大きな差があり、とても借金が返せない。
そんなところにブローカーからの甘い誘惑があると、高収入だと騙されて実習先から失踪し、結果的に犯罪組織に入り違法なことに手を染めてしまう。
そのような例が相次いでいます。
(参照)
厚生労働省資料「外国人技能実習制度の現状、課題等について」
2.厳しい実態を生む温床は何か
技能実習生が不適切な扱いを受ける温床は主に3つです。
① 実習実施者が技能実習生を労働者と誤認しているケース
② 技能実習の送り出しで不正な利益を得ようとする悪質な送り出し機関が介在したケース
③ 日本語が理解できず、ストレスから逃げ出すケース
① 実習実施者が技能実習生を労働者と誤認しているケース
技能実習生は基本的に最初に技実習を受けた先で3年間働く方が多いです。実習を受ける先を変更することは、特別な場合を除きできませんので、ほぼ必ず3年間は働くのが実態です。(1年で帰国される方もいらっしゃいますが、稀です。) 技能実習生によっては、多額の借金を支払って日本にきた方もいらっしゃいます。これは、送り出し機関もしくは、送り出し機関が利用したブローカーに多額の金額を支払っているケースです。主には各国における低所得者層に対し、ブローカーが「日本で働けば円が得られ、現地通貨に変換すれば多額の金額を稼ぐことができる。」「手続きに約100万円かかるが、日本に行けばすぐ支払うことができる。」などと甘い言葉をかけ、希望者を募っていることが多いです。 日本人としては感じることは少ないですが、日本語はひらがな・カタカナ・漢字があり、習得が難しい言語です。技能実習生は送り出し機関である程度教育を受けてから日本に来られますが、日本語が流ちょうに話せる方はもちろん、コミュニケーションがスムーズにとれる方はあまりおられません。家族と離れて日本に来られ、コミュニケーションがとれず孤立し、ストレスを抱えて現実逃避から失踪される方もおられます。 企業としては、失踪リスクなどのトラブルリスクをできるだけ下げ、よい技能実習生に適切な実習機会を提供することでwin-winな関係になることを目指しましょう。そのためには、相手の国の文化・風習を理解し、どのようなコミュニケーションをとればお互いにストレスなく働くことができるのか、日本語がなかなか流暢に話せない中でどのようにすればスムーズに仕事がまわるのかなどをしっかり配属予定先の組織長と人事が話し合っておくことが必要です。
・(重要)政府認定の送り出し機関か。 もちろん、技能実習生は奴隷ではありません。ただ、一部の問題のある実習実施者が劣悪な労働条件、もしくは不適切なコミュニケーションしかできない環境で技能実習生を受け入れることから、奴隷のような扱いとなっている方がいらっしゃるのは事実です。一部の海外のメディアでは人権侵害として指摘もされています。 外国人技能実習生受け入れの際のトラブルや問題を例に挙げ、送り出し機関ミャンマー・ユニティが行っている防止策を説明しています。失踪や近隣トラブル、起こり得る事故などについて送り出し機関ができる教育と受け入れ企業ができる教育をご紹介しています。
このため、一部の実習実施者が都合の良い労働者として悪用しようとし、劣悪な環境で受け入れて実習を行ってしまっています
② 悪質な送り出し機関が介在したケース
特にベトナムでは営利を目的とする送り出し機関が乱立しており、普通の一般人もブローカーとして稼ぐ方も多い一大ビジネスとなっています。
ベトナムの送り出し機関は、本来は3,600米ドルしか本人から徴収してはならないのに、実際は安くても70万円、高いところでは150万円も本人に支払わせています。
このような多額のお金を用意できる人は少ないので、結局高利貸しに多額の借金をして来日することになります。
送り出し機関の甘い言葉に乗せられて多額の借金をして来日したが、聞いていた日本での収入と実際の収入には大きな差があり、とても借金が返せない。
そんなところにブローカーからの甘い誘惑が来ます。
ブローカーは倍の収入が得られるなどの甘い言葉で技能実習生に失踪を手引します。
そんなうまい話はあるわけがありませんが、借金苦に困っている技能実習生はまんまと騙されて実習先から失踪し、結果的に犯罪組織に入り違法なことに手を染めてしまう。
そのような例が相次いでおり、ベトナムから来た方の人数・失踪率が高い原因となっています。③ 日本語が理解できず、ストレスから逃げ出すケース
3.企業が技能実習生にできること
もちろん、実習が所定の時間を超えたのであれば残業代として賃金を支払う必要があります。労働基準法はしっかりと順守いたしましょう。
また、せっかく受け入れても日本に来るまでに支払った借金を理由に失踪されても困ります。送り出し機関の選定時には次のポイントを確認することをおすすめします。
・技能実習生から高額なお金を支払わせていないか。
・採用すると監理団体や企業にキャッシュバックするような制度がないか。
・現地担当者の日本語能力が高いか。日本での就労経験があり、日本のビジネスマナーに理解があるか。
・トラブルとなった際に相談できる部署があるか。トラブル時に相談できる日本駐在部署はあるか。
・当該送り出し機関とトラブルになっている企業がないか。
・当該送り出し機関が送り出した技能実習生とトラブルになっている企業がないか。4.まとめ
技能実習生は労働者ではありませんが、労働契約を締結して実習を受けていただいているのであり、労働基準法が適応されます。適切な実習条件を企業としては整えておかねばなりません。
また、多額の借金を背負って日本に来られた方を受け入れることは、企業にとって失踪などのデメリットがあり、実習生にとってもデメリットとなっています。不適切な運営を行っている送り出し機関を選ばないようにし、リスクを回避してください。
これにより、失踪などのリスクの低い実習生を確保できますし、何より、不幸な技能実習生の数を減らすことができます。技能実習生を多く受け入れている企業の一部ではCSRの一環として取り組んでおられるところもございます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。技能実習生とwin-winな関係を結ぶお役に立てれば幸いです。外国人技能実習生受け入れの問題とトラブル防止策3選
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