外国人介護職|受け入れの現状と課題
2025年問題を目前に介護職の重要性が高まる中、日本の介護業界はすでに深刻な人手不足に陥っています。そのような状況の中、対策として進んでいるのが外国人労働者の採用です。本記事では日本の介護職にて外国人を受け入れている現状と課題について紹介します。
目次
2025年問題を目前に介護職の重要性が高まる中、日本の介護業界はすでに深刻な人手不足に陥っています。 そのため多くの事業所や施設の介護スタッフが、サービスの質の低下や安全確保不足、労働環境の悪化による離職率の増加など様々な問題に悩まされています。 それだけではなくサービスを受ける側の高齢者が、希望している介護を受けることができない「介護難民」も増加しているのが現状です。 そのような状況の中、対策として進んでいるのが外国人労働者の採用です。本記事では日本での外国人介護士を受け入れている現状と課題について紹介します。
1.介護職において外国人労働者を雇用する方法
外国人労働者を介護職にて雇用するために、日本には4つの制度(在留資格)があります。
- 在留資格『介護』
- EPA(経済連携協定)
- 技能実習『介護』
- 特定技能『介護』
それぞれ介護という目的は同じですが、目的や働き方が異なるためしっかりと理解しておく必要があります。下記にて4つの制度をメリットやデメリットと合わせて説明していきます。
1-1在留資格「介護」
外国人が介護福祉士養成学校に留学して介護について学び、介護福祉士の資格を取得後に在留資格「介護」としてその外国人を雇用するという方法です。 在留資格「介護」のメリットは、介護福祉士の資格を所持しているため採用後すぐに介護スタッフとして配置ができ、本人が希望する限り永続的に働くことができるということです。 また介護福祉士養成学校に通学しているときから週28時間までならばアルバイトとして勤務(いわゆる資格外活動)することも可能となっています。又、介護職員として取り掛かれる業務などに制限がないため、 介護業界の幅広い分野での活躍を期待できます。
デメリットとしては、日本語能力に関し条件は設定されていますが、養成学校によって基準が異なることから日本語能力が低い外国人も入学しているなど個人差があり、卒業後もコミュニケーションが難しい場合があります。 そして事業所に外国人介護福祉士を受け入れる際は受け入れの調整をする専門機関がないため、事業者が自ら養成学校と連携し採用活動を行う必要があります。
1-2EPA(経済連携協定)
EPAは現在日本はフィリピン、インドネシア、ベトナムの3か国から経済活動の連携強化をはかるために外国人を受け入れており、介護業界では受け入れた外国人が介護福祉資格の取得を目指すことを目的とし「介護福祉候補生」として入国します。 そのため決して就労を目的としているわけではありません。介護や看護について勉強した外国人材が、日本語教育を受けて、技能研修として日本で働きます。 メリットとしては日本に滞在できる期間が4年間と定められており、その間に国家試験に合格することができれば上記で説明した在留資格「介護」を取得することができるため、本人が希望すれば永続的に日本で働くことができます。 さらに介護福祉士の資格を取得できなかった場合には特定技能への切り替えも可能となっています。 デメリットとしては入国するための対象者への条件が厳しい、毎年各国からの受け入れ人数の制限設定がある、事業者は候補生に選ばれないと採用することができない、受け入れる事業者が負担する費用が高いなどといった点が挙げられています。 また日本語能力の低さにより現場でスタッフや利用者とのコミュニケーションがうまくとれず、業務に支障をきたす恐れがあります。
1-3技能実習「介護」
技能実習制度とは一定の期間外国人を日本の介護現場に受け入れ、実際に働きながら技能や技術を修得し、その学びを母国の経済発展に役立てるということを目的としている制度です。 技能実習のメリットは、転職がないため一定の年数は人材確保ができることです。また技能実習生として入国するためには介護経験、または介護に関する一定時間の講習を受けていることが条件で定められているため、即戦力としても期待ができます。 デメリットとしては、あくまでも「技能移転」が目的とされている制度であるということから通常3年、最長でも5年と期間が定められており、実習終了後継続して雇用することはできないということ、夜勤などを行う際に必ず指導者がつかなくてはならないということ、 日常会話は問題なく可能ですが専門的な会話をするには不十分さが見受けられるということなどが挙げられます。
1-4特定技能「介護」
特定技能制度は2019年4月から開始された、就労目的として外国人を受け入れる日本の介護業界の人手不足解消を目的とした制度となります。
そのため、業務内容や人数の制限が少ないことが特徴の1つでもあります。
メリットとしては、受け入れる対象の外国人が入国する際にN4レベルの日本語能力、介護に関する専門的な日本語、介護技術の習得が必要とされているため、即戦力として期待できます。また技能実習制度とは異なり、仕事を覚えれば指導員がつかなくてもひとりで業務実施可能となります。
デメリットとしては技能実習とは違い対象者が幅広く職場を選択でき転職が可能となるため、事業者としては離職というリスクに繋がる可能性があります。
特定技能人材の採用方法としては、主に人材紹介会社から紹介してもらうまたは、求人媒体を活用する方法があります。
2.外国人労働者受け入れの現状
外国人労働者は年々増え続け、2020年10月末時点で約172万人もの方が日本で働いています。人手不足が深刻化している介護分野に関しては、全体を占める割合は少ないものの前年からの増加率が2桁を超え、急速に外国人労働者が増えており、雇用方法としては、技能実習生、留学生の資格外活動(アルバイト)・在留資格「介護」が多くなっています。 しかし人材不足と感じている介護事業所が大半を占める中、外国人労働者の受け入れを行っている施設や事業所はまだまだ少ないのが現実です。さらにこの新型コロナの影響で海外から日本にくることも難しくなっており介護現場での職員採用が難しくなっています。
3.外国人労働者受け入れの問題点と課題
実際に外国人労働者の受け入れを行っている事業所では、「人材の確保ができる」「コミュニケーションの活性化につながる」「現場に活気がでる」など良い評価が出ていますが、まだ受け入れを行っていない事業所からは日本語力の問題、 コミュニケーション不足や習慣の違い、要介護者やその家族による外国人介護の拒否などさまざまな不安が挙げられています。不安に感じているのはこれから日本で労働する外国人も同様です。現に母国へ帰国するケースもあり、こちら側が日本で定着してもらえるような体制を整える必要があります。
4.外国人労働者と共に働くために
私たち日本人と外国人労働者がより良い環境で働くためには、お互いの歩み寄りが必要です。慣れない環境で必死に学び働く外国人労働者に対し、長時間勤務やいじめ、差別、パワハラなど様々な問題が浮き出ているのも現実です。外国人労働者を受け入れることに対し不安に感じる部分は多々ありますが、 人手不足が深刻化している中、外国人労働者は日本にとって今後の強みとなる存在なのです。受け入れを少しでも考えている事業所は、まず外国人労働者を受け入れるための体制や環境を整えることから始めましょう。 「きめ細やかなサービスができない」「コミュニケーションスキルが不足している」という外国人に対する不安があるようですが、それは日本語が不十分ということだけが問題なのでしょうか?正直日本人労働者でもできる方とできない方がいます。 語学や技術に関しては働きながら学ぶことができます。また、習慣の違いなどについては、育った環境が違うのですからあたりまえのことではないでしょうか。文化の違いをお互いに正しく理解し、価値観の押し付けをせずに相手を尊重し合うことが必要です。
5.まとめ
いかがだったでしょうか。今回の記事では介護職での外国人労働者受け入れの現状と課題について解説いたしました。介護業界での外国人労働者の雇用はまだまだ少ないですが、徐々に増えており良い評価も得られています。今後人手不足に悩まされる事業所は今以上に増えることが予想されています。 そのような状況を少しでも良くするため、政府が積極的に進めている「外国人材の活用」についてそれぞれの目的をしっかりと理解し、上手に利用しましょう。質の良い介護サービスを提供するためには、人材とスタッフたちが働きやすい環境が必要です。 様々な制度を利用し、日本人外国人すべての労働者がより良い環境で働くことができるための一歩を踏み出しましょう。
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